第22話 長続きしない店
アンタは行きつけの店ってのはあるか?
俺は酒豪に見えるという見た目に反してアルコールが一切飲めないから、居酒屋だったりバーなんかの行きつけってのはないんだけど、行きつけのカレー屋ってのがあって、そこにかれこれ十年以上通い続けている。多い時には週五で食べに行ったり一日に三回食べに行ったりしてたこともあった。おかげでいつものっていうだけで注文の品が出てくるくらいには顔なじみになっていた。
今こんな状況になって食べに行けてないんだけど、もしその店がなくなったらどうしようと思うことがままある。俺の友人に飲食店で働いてる人がいるが、その友人曰く今じゃ週一回だけしか仕事していないって話してくれた。最低限だけど補償があるってことだからとりあえずはなんとかなるということだったが、早くこの自体が収束することを祈っている。
さて、今回はそんなお店に関するお話。例えばの話だが、ある土地に店が出来た。その店の立地はものすごくいいところにあり、周囲にはいくつものお店が並んでいる。周囲のどの店も盛況だ。なのにその新しく出来た店は長続きしない。それなりにお客さんの姿もあったのはず。それでも潰れてしまう。
人気の立地なためまた新しい店が出来る。しかしその店も長続きせずなくなってしまう。その次もまたそしてその次も。そんなどんな店もすぐに潰れてしまう不思議な場所があると思う。同じ並びにある店は繁盛しているのに、どうしてその土地に出来る店だけが長続きしないのか。
これに関しては色んな理由が考えられる。単にそこに来るお客さんのニーズに合わなかった。もしくは経営の仕方に問題があった。まぁほかにも理由はあるかもしれない。
しかし、そのいずれとも違う理由だとしたら……?
これは俺の友人から聞いた話だ。その友人はお酒が好きで、色んなバーだったり居酒屋に詳しい人だった。新しい店が出来れば一人で出向いてそこで友人を作ってしまうくらい人当たりのいいというか、人見知りしない人だった。
そんな友人にも行きつけの店ってのがいくつかあった。ただそのうちの一つがすぐになくなってしまうそんな場所にあった。そこに建っている店も別に繁盛してないわけじゃないらしい。むしろいついっても人がいて賑わっているそんな店だったそうだ。それがあるとき閉店していた。お気入りにの店だったからなくなったことにショックを受けていたという。しかしやはり人気の立地だったせいもあり、その店がなくなってもすぐに新しい店が開店していた。次の店も同じくバーだった。
友人は前の店のことが気になっていたものの、その新しく出来た店に行ってみたという。前の店とは違った雰囲気の店だったが、すぐに気に入ってその店にちょくちょく顔を出すようになり、すぐに店員とも仲良くなった。
しかしまたしばらくするとその店が閉店していた。そしてまた新しい店が開店した。次はバーではなく小洒落た創作イタリアンの店だった。もちろんその店にも顔を出してまた仲良くなった。しかしその店もすぐに潰れてしまった。
さすがにこんなことが立て続けに起きて、気味悪さを感じていた友人はその店の近くにあるバーの顔なじみの店員にそれとなく聞いてみたらしい。しかしその店員もなんであんないい立地にある店が立て続けになくなるのかさっぱりわからないと言われてしまった。
そんなある日、友人は別のバーを開拓しようと初めて入った店であの閉店していたバーで働いていた店員と再会した。その元店員はそのバーでバーテンとして働いていて、元気そうにしていた。元店員もかつての常連客であった友人を覚えていたらしく、再会を喜んでいた。そこで友人はその元店員に前に勤めていたバーについて聞いてみることにした。
なんであんなに繁盛していたのに急に店を閉めてしまったのか。もしかしてなにか経営に問題でもあったのかと。しかし帰ってきた答えは全然予想もしていないものだった。
というのも、あの店というより、あの場所ではなにかおかしなことが頻発して起きていたという。それはたいてい店が終了した深夜だったり、開店前の一人でいる時間帯によく起きていた。最初は物音がするだけだったのが、片付けたはずのグラスが移動していたり、勝手に割れたり、妙な人影を見たりと様々な現象が起きていたらしい。
最初は気のせいだと思っていたその元店員だったが、それらを体験しているのが自分一人だけじゃなく、他のスタッフも体験していた。そんなことが度々起こるようになり、気味悪く思ったスタッフが一人辞め、二人辞めと続いていったせいで、最終的に店を閉めざる負えなくなったというのが顛末だった。
じゃあもしかしてそのあとに出来たバーやイタ飯屋がなくなったのも? そう尋ねると多分そうじゃないかと思うとのこと。
実際のところそれ以外にも理由はあったのかもしれないが、少なくともあの場所はなにかあったんだろうということでその場は終わった。
それから何年かしてその立地にに関する噂話を耳にすることがあり、聞いた話では何十年も前にその場所で火災があってそこにあったスナックが全焼してしまい、そこで働いていた人の何人かが逃げ遅れて亡くなってしまう事件があったという。その火災も放火かもしれないし、事故だったのかもしれないが、真相は未だに分かっていない。ただそこで不幸な事件または事故があったのは確かで、それ以来その場所に店を開いても長続きしないことが度々あったとのこと。
忌み地とでもいうべきか、その場所は今でも存在しているが、ここ数年は更地のままだ。もしかしたら噂話のせいで買い手が見つからないのか、それともそこに店を建ててほしくない何者かがいるのか、それはわからない。
もしかしたらアンタの住む街にあるそんな場所も何かしらのいわくがあるのかもしれないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます