第13話 不可思議な出来事
俺の通っていた学校ってのはちょっと変わった造りをしていて、下から見ると普通の造りなんだが、上から見ると三角の形をしているんだ。厳密にはちゃんとした三角とはいいがたいかもしれないが、霊感のある友人曰く、その形のせいでよからぬモノが留まりやすいのだとか。
元々、学校というのはいろんな人の情や思いが集まる場所でそれに惹かれるようにしてまた彼らもやってくるのだという。特に若い命がたくさん集まる場所はそれだけで生気に満ち溢れているため余計にそうなりやすいそうだ。
こんな話を散々書いてきて言うのもなんだけど、俺には霊感がない。いや、霊感がないと思いたいのだと思う。せいぜいあったとしても視えないだけで、あーなんかいるなーくらいは感じるから実はあるのかもしれない。認めたくないが。
そんなわけで俺は自分の住んでいたアパートだけじゃなく、学校でもおかしな体験はそれなりにしてきた。特に通っていた高校が一番ひどかった。それが前述した変わった造りの学校の話だ。小学校でも中学校でもおかしな目には遭ってるんだが、それはまたの機会に話そうと思う。
前に部室で体験した話をしたと思うが、それが俺の通っていた高校での話。この高校ってのも前に住んでいたアパート並みに変わったことが多かった。その中から一つお話しよう。
俺が所属していた部活というのは吹奏楽部で、俺の見た目からは判断がつかないとよく言われる。まぁ見た目だけ見ると、柔道やってそうか、ラグビーやってそうとか言われる要はそんな見た目をしていたからだ。ちなみにパートはサックスだ。余計似合わないと言われる。それこそ余計なお世話だ。
吹奏楽部の活動ってのは所属していた人たちならわかるかもしれないが、それぞれがそれぞれのパートごとに分かれて練習するんだけど、俺たちは学校の教室なんかを借りて練習していた。一応、散らばって練習するんだけど、パートによっては集まって一緒に練習したりすることもあった。例えば木管と金管だけで練習したり、高音、中音、低音で別れたりとかだ。そんなわけで各教室には自由に行き来出来たわけで、そうなると練習に飽きたメンバーがたまに悪ふざけしに教室を行き来することもあった。……俺もその一人だったが。
あるパートが空き教室で練習していると、突然教室の引き戸が開いた。そこにいた全員が引き戸の方を見たが、きっと誰かの悪ふざけ(特に俺とか)だと思ったらしい。
その中の一人が引き戸の方へ行くと誰もいない。だからこそ余計に悪ふざけだと思ったらしい。引き戸を閉めて、もう一度練習を再開する。するとまた引き戸がガラッ! と勢いよく開いた。
さすがに二回目となると練習の邪魔になるから注意しようと思ったらしく、その中のパートリーダーが引き戸に行くとやっぱり誰もいない。そこで初めてこれが誰かの悪ふざけではなく、ナニカの悪ふざけだと気づいたそうだ。それ以降は引き戸が自然と開くことはなかったが、その日はそんなことがあったせいであまり練習にならなかったという。
そんな話を聞いた後日、俺は吹奏楽部の中で学校の見回りをする役を担っていたんだけど、俺が所属していた吹奏楽部はそれなりに熱心なところで、休み関係なくテスト期間以外は毎日部活動をしていて、夏休みや冬休みなどの連休だったり、大会が近くなると学校に泊まり込み合宿をしたりすることもあった。
そんな部だったため、普段の練習もそれなりに遅くなることもしばしばあった。季節が暖かい時期なら七時頃でもまだ明るいけど。寒い時期になるとすぐに暗くなるから、俺が担当していたこの仕事は誰もやりたがらなかった。俺だってやりたくなかった。理由は怖いから。
見回りの役割は使用した教室の電気が消えてるか、教室の鍵が閉まってるか、元の状態にしてあるか、忘れ物はないかなどの確認が主な役割だ。これの何が嫌かというと、学校の廊下の電気は行きは順番に点けることが出来るが、帰りは順番に消していかないといけないことだった。つまり、戻るときは背後が真っ暗になるんだ。それが怖くて誰もやりたがらない。ましてや、この学校は何か“いる”と言われてるそんな場所だ。そりゃ当然の話だろう。一つ一つ教室の中を確認して鍵を閉める。順番に見回っていると例の教室の前に着いた。あの話を思い出し身震いした。
教室の中に入り元の状態に戻っていることを確認する。確認ヨシ!
教室を出て鍵を閉める。一番奥の教室まで確認してまた例の教室の前まで戻ってきたとき、中で人影のようなものが見えた。気のせいだと思ったが、気になったのでまた教室の中を確認することにした。
鍵が……何故か開いていた。
もしかして本当に誰かいるのか、そう思って中を確認したが、真っ暗な部屋の中に誰もいるはずはなかった。あ、きっと鍵閉め忘れたんだ。そう思いもう一度鍵を閉める。
……なんか嫌な気配がするな。
そう思ったが、それ以上そこに留まるのも嫌だったからさっさと戻ることにした。
翌日、顧問に呼び出された俺はこんなことを言われた。
「お前昨日教室の確認したよな?」と。俺は素直に「確認しました」と答える。すると返ってきた言葉は「ある教室だけ鍵開いてたんだよ。他は全部閉まってるのに、不思議な話だよな」とのこと。俺はそれ以上聞かず、もっとちゃんと確認しますとだけ言ってその場を後にした。
それ以降は鍵が勝手に開いてることはなかったが、やっぱりこの学校には何か“いる”そう思った出来事だった。
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