第11話 遊園地

 遊園地の話をしよう。


 遊園地って楽しい場所だよな。子供にとっては夢のような場所で、大人にとっては恋人または家族と過ごす思い出を作る場所だろう。いろんな人が笑顔になる場所と言い換えてもいいと思う。


 しかしそんな夢のような場所でもいつか終わりはくる。夢から覚めた場所ってのはそれはもうなんていうか寂しい。祭りのあとのような寂寥感ってのがあるよな。ちょうど世間が大変な時期だから遊園地なんかの人の集まる場所に行くってことも難しいが、沈静化したらまた楽しい場所として俺たちを迎えてくれると信じて止まない。


 さて、そんな遊園地だけど、世の中にはいろんな遊園地があると思う。パッと浮かぶのは俺と生まれ年が同じ夢の国か、もしくはいろんな作品が集まった大阪にあるワンダーランドだろう。他にも日本一怖いお化け屋敷がある遊園地や、日本最古の遊園地もある。ちなみに日本の遊園地の数というのは約135ヶ所らしいが、最盛期の3分の2に激減しているそうだ。


 ちなみに日本の47都道府県なのでそれでも一県辺り約2.8ヶ所の遊園地がある計算になるが、あくまで数字上の話で実際には一県に一件あるぐらいで、都心部などに集中しているのが現状だ。


 さらに遊園地で使用される遊具の大型化や、新しい技術が生まれることにより、更なる発展を遂げる一方で、目新しさを求める来園者はさらに力のある遊園地へと行く。結果、昔ながらの遊園地というのは新しい遊具を導入することも出来ず、集客も出来ないため、経営難に陥り、令和のこの時代になって閉園してしまう遊園地というのはさらに増えていくだろう。


 と、真面目な話をしてしまったが、こんな話をしたとおり、遊園地というのは夢を見せてくれるだけではない裏側がちゃーんとあるという事を知ってもらいたかった。


 ところでネット検索で『遊園地』『廃墟』と入力すると、潰れてしまった遊園地の画像を見ることが出来る。夢の残骸とでも呼ぶべきか、忘れ去られてしまった遊具たちが雨ざらしになっていて、どことなく怖さとともに、確かにそこには夢があったんだということを感じさせてくれる。それがより一層怖いんだがな。


 もちろん俺の地元にも遊園地はあった。あったということはもちろんとうの昔になくなってしまったというわけだ。俺も小学一年生くらいの頃に、遠足で訪れたことがあったが、そこの遊園地のお化け屋敷の看板が何よりも怖すぎてずっと泣いてた記憶がある。きっと今となっちゃ何が怖かったのかなんて分かりはしないが、こんな俺にも子供らしい一面があったんだと思う。


 いつものように前置きが長くなったが、本題に入ろう。


 今回お話するのはもうなくなってしまった遊園地で肝試しをした人たちの話。遊園地で働く人たちってのは、来園されるお客さんを笑顔にするためあれやこれやと手を尽くしてくれる。きっとそれは遊園地が閉園した後でもそうなのかもしれない。



 ある男性が友人数人と肝試しを行うことになった。その日集まったメンバーはその男性を含めて八人。男四人、女四人のグループだったそうだ。彼らはずいぶん前に閉園してしまったとある遊園地にやってきた。そこには夜な夜な閉園した遊園地で働く従業員の霊が出るという噂があり、八人はそれを確かめるついでに肝試しをしようという話になった。


 その遊園地には遊園地が出来る以前からひとつの祠があり、遊園地を建設する際にその祠を移動させる案も出たそうだが、地域住民の反対もあってその祠を遊園地の一部として建設されることになった。とはいえ、遊園地に祠があるというのも見た目的に良くないということで、極力人目につかないように遊園地は建設された。しかし、遊園地が閉園してしまった今では祠を訪れる人もおらず、朽ちるに任せていた。


 彼らはその祠にお札を用意して、園の入口からその祠を目指し、また園の中を通って帰ってくるというルートで肝試しをすることになった。全員で四組に分かれて、最初の組がお札を祠に設置する。お札は全部で三枚あり、次の組が祠まで行って取りに行く。というのを残りの三組が行う。


「じゃあ行ってくるわ」


 くじ引きで決まった最初の組は男同士ということもあって、残念がっていたが、いざ肝試しが始まるとなると、やっぱり怖かったのかぎゃあぎゃあ騒ぎながら先へ進んでいった。彼らが出発してから十五分ほど経ってから携帯に連絡が入った。祠についてお札を置いてきたから次の組に出発するようにとのことだった。それを聞いて第二組が出発する。それからしばらくして第三組も出発した。十五分間隔で出発してるため、三組目が出発する頃には最初に出発した一組目が戻ってくるはずだったが、どういうわけか戻ってこない。それから十五分が経過して最後の二人が出発するかどうか話していると、どこからか「おーい」と声がした。最初の一組目が戻ってきたんだと思ってると、戻ってきたのは二番目に出発した二人だった。


 二人は彼らの様子を見て「あれ? 最初に出発した二人見なかった?」と尋ねるが、二組目の彼らは三組目のやつらとはすれ違ったが、それ以外には誰とも会ってないという。念の為に祠まで行ったのかどうか確かめると、二人の手には確かに一組目が用意したお札があった。それからまたしばらくして、「あれ、まだ出発してなかったの?」と女二人で出発した三組目も戻ってきた。もちろん彼女たちの手にも祠に置いてあったお札があった。なのに二人も同じく一組目の二人を見てないという。


 さすがにヤバイんじゃない……? という空気になり、全員で二人を探しに行くことになった。祠まで行く途中周囲を見回したが、どこにも二人の姿はなく、最初はどこかに隠れて全員を驚かそうと企んでるんじゃないかと思っていたが、やっぱりどこにもいない。そうしているうちに六人は祠に着いてしまった。そしてそこで見たものに驚愕した。


 そこにあるはずのお札がなくなっていた。


 風で飛ばされたんじゃないか? そう言う声もあったが、ここに来るまで風は全く吹いてない。それに飛ばないようにお札には石が置かれていて、ちょっとやそっとでは飛ばされないようになっていた。なのに、祠には石だけが残されていた。


 なんなんだよ……。そう思うと途端に、背筋が寒くなった。


 森がザワザワと騒いでいた。誰かが戻ろうぜと言った。それに従うように六人は入口へと戻った。すると、遊園地の入口に見つからなかった二人がいた。


「おいお前らどこ行ってたんだよ」


 二人のうちの一人が苛立ったように言う。その言葉に二人を探してた一同からも不満の声が上がる。すると、一組目の二人は祠についてすぐに戻ってきたと言う。時間にして三十分くらいだったというが、ここまででもう二時間は過ぎていた。


 二人に今まであったことを話すと、もう帰ろうということになり、八人はその場を後にした。


 それからしばらくして、男の家のFAXにこんなものが届いた。


『先日はご来園いただきありがとうございます。お客様のお忘れ物がございましたのでご連絡いたしました。ご都合のよろしいときに取りに来ていただけると幸いです。スタッフ一同、またのご来園お待ちしております』と。


 そしてそのFAXには彼らが失くしたはずのお札の写真が一緒に載っていたという。

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