第84話回り回ってどうしてこうなった




「コールギアボックス! 923、巨神之機怪腕クロノススナッチャー!! フ■ム名物、致命の、一発ゥゥゥ!!!」






 ナルニィエスの土魔法で動けなくなった化石骨の胸部にキヤが巨大な鉄の腕を召喚、装着し、魔石のある胸部に突っ込んで魔石の化石を抉り出す。動力源を失った化石骨は一気に支えを失い、元の化石が地面にバラバラと転がった。










この巨神之機怪腕クロノススナッチャーは元はギルバに作ったものをキヤが戯れに自分でも使えるように一部機能をパージしたりしてカスタムし、設計図をギアボックスに記録していたものだ。巨大な機械の腕は男のロマンなのだ。背面パーツに補助アームと一緒についているものでも、自分の腕に付けるタイプもよい。巨神之機怪腕クロノススナッチャーは後者だ。華奢な女の子が武骨で巨大な機械の腕を使っているとなおよし。閑話休題




 崩れて無力化された化石骨を確認しナルニィエスは土魔法を解除した。キヤは巨神怪腕ごと魔石の化石をギアボックスに収納した。






「エラいことになったな……」




「まさか魔石の化石があんな効果を発揮するなんてね……化石になっていたとはいえ魔石は魔石だ、魔力は枯れていなかったんだろう」






 推論しつつもナルニィエスは転がった化石を拾っていく。キヤはと言えば騒動を起こしてしまいそれが後ろめたいのか少々落ち込んでいた。落ち込みつつもギアボックスを開いて化石を拾っては収納していく。






「なんかすいません、軽率な行動しちゃって……」




「何を言ってるんだ? 前例のないことだし大して被害も出てないし大丈夫だよ、そう落ち込むことはない。むしろ前例を作ったからこそ、この後に生かせるってものさ」






 ナルニィエスの大人の対応にキヤは感謝と後ろめたさを感じていた。そして一先ず総動員で片づけを始めていく。巨大な化石骨の大腿骨を担ぎながらマーソウは二人に問う。






「で、どうするつもりなんだ? この化石とやらは」




「一先ず魔石の化石を最優先で分別して個別にギアボックスに保管かな。魔石の化石はどっかの研究機関に預けて調べてもらうのがいいかもしれない」




「賛成だな。ウチのツテを辿ればそういう研究機関があるかもしれない」




「んじゃナルニィエス、魔石の化石を預けてもいいか?」




「わかった、ただ今の特大サイズのはちょっと待ってほしいな。できれば大中小の化石が一揃いあればそっちのほうがいい……ん?」






 再び唐突にギアボックスが輝きだした。再び何かアップデートが入ったようだ。キヤは一旦作業を置いてギアボックスのスタート画面を起動し、そしてアップデート情報の詳細をタップする






「んー、このクソ忙しい時に何のアプデが……んんん???」








『化石骨の分析が終了しました。角竜骨格A (仮称)を設計図として登録しました。シークレットミッションクリアに伴い新たな設計図をアンロック。『機怪なる化石骨(仮称)No,02』の設計図をアンロックしました。『機怪なる化石骨(仮称)No,02』の発展型の設計図をアンロックしました。』








 HAHAHA。ちょっと何言ってるかわからない。皆もそう思っているだろう、俺もそう思っている。




キヤはまさかな、と言った風に詳細をタップしギアボックスに記録した設計図を纏めた画面を出す。そこにはいままでキヤが作り上げてきた様々な機械や魔動具の設計図が表示されている。材料を入れてポチっとするだけで今まで作った物の複製品が出来るというチート仕様だ。そして画面をスライドすると新たな設計図が表示されていたのだ。






「えぇ~~~~っと……まさかな? 詳細っと」








『機怪なる化石骨(仮称)No,02』




 材料  鉄鉱石×(大量) 魔石(大)×1




 詳細




 ギアボックスに記録されていたシークレットミッションクリア報酬の設計図。太古の魔物の骨のデータを取り込み、かつ複雑な構造の設計図かコストの高い設計図を一定以上記録すると表示アンロックされる。




 収集した太古の魔物の骨格データを元に金属ベースの機械ゴーレムを作成する。作成後自分の支持を聞くように魔石(大)に設定プログラムを焼き付けよう




 →魔石設定焼き付け








「ぷえぇ」






 ギアボックス、最近影が薄かったからってちょっと張り切りすぎだと思う。要するに先ほどの化石骨のデータを元に自分の意のままに操れる機械人形メタルゴーレムとして作成することができるということだ。恐竜ロボットとか男の子がときめかない訳がない。そして気になることがもう一つ、これのさらに発展型の設計図がアンロックされているのだ。キヤは震える指で詳細をタップする








『機怪なる化石骨(仮称)No,02 発展型』






 材料 鉄鉱石×(最多量) 魔石(大)×1 魔石(中)×6




 詳細




 機怪なる化石骨(仮称)No,02の設計図のアンロックと人体パーツを模した設計図が二つ以上、及び簡易的な変形機構の設計図を記録すると表示アンロックされる。




 変形機構を有する機怪なる化石骨(仮称)No,02の設計図。大型魔動バイク形態と人型形態に変形することが可能になったタイプ。構造が複雑化している為魔石に書き込む設定プログラムは非常に複雑なものになっている。






「これ激しくヤっちまってるぞオイ!!! 時代背景錯誤ってレベルじゃねぇ!!」






 キヤは思わず叫んだ。端的に言えば、化石掘ってギアボックスに入れてたらなぜか変形ロボットが作成可能になったのだ。訳が分からないというレベルで済まされない。




ちなみにキヤは新たな発明禁欲中(?)にフラストレーションを発散するためにやたらめったら色々な設計図を書いてはギアボックスにしまっていた。その中には遊びで描いた変形おもちゃの設計図や魔動義手に類するものの設計図もあった。ヒマな時はプラモデルならぬウッドモデルと言った感じの組み立て式鎧人形の設計図も描いていた。




 要は全部キヤが悪いのだ。案の定サツキに雷(物理)を落とされた。ついでに意識も落とされた。

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