第81話女子の夏服とギアボックス




「そういえばキヤは昨日何をしていたんだ?」






 次の日。朝食を食べ終え一息ついたメンバーは思い思いに今日の計画を立てる。女子組は今日着る服などの選別で別室へと移動し、男子組とオネェは特にやることもなくダベっていた。マーソウは昨日ぼっちだったキヤの行動が気になっていたようだ。






「ん、お土産屋さんの通りを適当に歩いてたよ。珍しい石が売っててね、化石っつーんだけど」




「化石とはなんだ? 珍しい石なんてあるのか?」




「遠い遠い昔の生き物の骨だったりが石のようになることがあってね。売ってるお店の店員さんと一緒にちょっと採掘してたりしてたのさ」




「キヤちゃんたら予想斜め上の楽しみ方してるわねぇ……」






 ゴルドワーフが呆れたように笑う。余談だがこのスイートルームの広さはおおよそ4LDKで、それぞれ男女とオネェに分けても余裕でゆったりできる。さらに大きな風呂が二つあり、その一つは海を一望できる露天風呂だ。しばらく滞在する予定なので男女オネェで代わりばんこに使うことになっている。ヘタすれば住みたくなるのが難点か。一先ずこの宿には一週間泊まることになっている。たまにはガッツリ休みたいときもあるのだ。










「その店員さんがやたらキャラ濃くてさ。首から下はちゃんと一般人なのに、頭に上級騎士ヘルム被ってんの。一歩間違えたら不審者だよ」




「俺が言うのも何だが、商売できるのかそれで……」




「ぜーんぜん。商品もただ掘り出した石そのまんま並べてたし。まぁお貴族さんだから多少はね?」




「キヤちゃんたらまた貴族様を垂らしこんだの? 節操ないわねぇ」




「言葉のチョイス!!」






キヤがツッコミを入れたところで女子組が入ってきた。身だしなみは今日もバッチリである。最近暑くなってきたので半袖になった女子組の薄着が眩しい。どうでもいいが男子組も全体的に薄着になったりと多少衣装が変わっている。服飾アレンジはなんとマーシュンだ。自分にもできることを探した結果こうなったらしい。いい向上心である






「お待たせしました皆さん。何を話されてたんですか?」






 にこやかに微笑みながら自然とキヤの隣に座るカレン。さり気無い接近、俺でなくとも見逃さないね。そんなカレンを生暖かい目で見るキヤを覗いたメンバー達。人の恋路は蜜の味なのである。






「昨日取り残された俺が体験した一大スペクタクル冒険譚を語ってた」




「ウソつけ、しょげて土産通りを歩いて寂しさ埋めるために店員さんを垂らしこんでたんだろうが」




「だから言い方ァ!! ちゃんと説明するから聞け、あぁもう涙目になるなカレンそういうんじゃないから!! 店員さん男だから! あとそういうのでもないからねゴルドさん?!」




「無茶苦茶早口で大草原萌えいずるんだけど」






 気分を変えてポニテにしたサツキがニヤニヤ笑う。少々露出の増えた首元からちらりと見える鎖骨が何とも言えない色気を放っている。下はいつものパンツスタイルだが、裾がくるぶしより少し上まで上がっておりサツキの形のいい足首が見えている。




キヤの弁明で涙目から少し回復したカレンは普段着の薄緑のアオザイっぽい服を着ている。ただこれも暑い日仕様で、半そでに全体的に生地が薄くなり若干機動力が上がり、キヤへの特攻も若干上がっている。夏服は良いものだ。




 マーシュンは動きやすそうな半袖に膝より若干上に裾が来るパンツスタイルで、冬服の時には控えめになっていた彼女の快活さが全面的に推しだされている。腰に巻いた薄手のジャケットがまたいいアクセントになっている。




 結論、女子組カワイイヤッターである。






「そんで今日はどうするの? なんか目ぼしい観光スポットとかあった?」




「俺は今日騎士ヘルム店員さんのとこで化石イジろうかと思ってる、約束しちゃったしね。全体行動は明日からでどう? 今日はみんなで行きたい場所リサーチする日ってことで」




「思ったんだけどさ、旅行一週間は長くない?」




「ヘーキヘーキ、どうせこの後水着回やなんやかんやあるでしょ。ポロリもあるよ。主にゴルドさんのだけど」




「やめたげなさい」










ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ






「キヤ、掘り出した化石とやらは騎士ヘルムの所にあるのか?」




「いや? 俺のギアボックスにしまってあるよ。無機物限定とはいえ無限収納はやっぱサイコーですわ。見る? 綺麗にする前だけど」






 キヤがギアボックスを開くと、ギアボックスが勝手にいきなり例の液晶画面モードに切り替わった。キヤが普段使いする際は工具箱のままで使っているのだが、何の操作もしていないのに勝手に変化するのは初めてだ






「ん? クリエイティブモードはお呼びじゃない……あれ? 新しいメニューが増えてる?」




「何かあったのか?」




「なんかギアボックスの新しい機能が更新されましたって……」










『化石を保管しました。トリミングの機能がアンロックされました』




『シークレットミッションをクリアしました。本体更新の後詳細をご覧ください』






 キヤが画面をタップすると先ほどのお知らせが表示された。何がどうなってるかわからないが、とりあえずキヤは本体更新をタップする。するとギアボックスはひとりでに工具箱モードに代わり、数秒後に再び液晶画面モードに戻った。






「これトリミングモードって……てことは化石が自動的に綺麗になって出てくるってことか?!」






 新しく追加表示されたトリミングをタップすると、そこにはキヤが保存した化石入りの岩が箇条書きで表示され、魔力を消費してトリミングできると表示してあった。






「いやいやいや、こんな限定的過ぎる機能なんで持ってんだこの箱……これ作った人の顔が見てみたいな……」






 するとギアボックスはひとりでに鏡モードの機能を起動しキヤの顔を映した。そこにはぽかんとしたマヌケ面のキヤが映っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る