第79話兵士でもないのにヘルム被ってるとか変人以外の何物でもないぞ
キヤは売られている一見ただの石を一つづつ摘まみ上げ角度を変えつつ検分する。するとキヤの読み通りその内の数個に化石らしきものが混じった石が見受けられた。大体が巻貝らしきものや、たまにサメの歯らしきものもある
「これなんかそれっぽいな……ほら、この黒っぽい部分。多分サメの歯かなんかの化石だと思いますよ」
キヤは売り物の石を一つ摘まみ上げ、若干黒くなっている部分を指さす。確かにそこには石に埋まった黒い何かがあった。
「……これが本当に太古の生物の骨なのか? ただの黒ずんだ石にしか見えないんだけど」
「化石ってのはそんなモンですよ。大昔の生物の骨や固い部分、植物や足跡なんかも化石になります。変わったところでウンk……動物のフンとかですねぇ」
「植物まで?! 信じられない……! それが事実なら大発見だ!!」
「生物の死骸や植物が腐食する前に土に埋もれて密閉状態になり腐食風化を免れ、そして永い時をかけて成分が岩石と同化していく。面白いッスよねぇ。レアなモンだと成分が宝石と入れ替わって、宝石の化石が出来るって聞いたことがあるな」
キヤの話に上級騎士ヘッド店員さんは目を煌かせた。ヘルムの窓から光が貫通してきている。
「しかし、どこで君はそんな知識を……」
「昔じいちゃん……祖父に教えてもらったんですよ。それから興味がわいて独学で」
脚色を加えつつキヤは当たり障りない範囲で答えた。事実キヤは幼少期に恐竜や化石にハマり、祖父に化石が出るという場所に行って採掘したり博物館などに通ったりしていた。
「そういや魔物の化石もあるのかなぁ? やべぇ、俄然興味湧いてきた、店員さん、この石どこで拾ったの?」
「なんなら今から来るかい? ここから結構近いんだ。僕も俄然気になってきたよ!」
「いいんですか?! ヨロシャス! あ、俺コウタ キヤって言います。よろしくです」
「ナルニィエス・ハインツナインツ。よろしくね」
そしてナルニィエスは簡単に店じまいをし二人は目的地へと向かった。変人と変人が手を組む時大体ヘンなことが起こる。
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
「はぇー、ここッスか」
キヤたちがいたのは大き目の屋敷の裏側にある、そこそこの距離に渡って存在する崖である。崖と言ってもそれほど高くなく二メートルほどの高さだ。キヤは拳で軽く崖を叩く
「ん、ちゃんと固いな。しかもおあつらえ向きに薄っすら層が見える」
「確かにここの崖は全部岩だから固いけど、それが化石と何の関係が?」
「化石になるってことは長い時間圧力で固められてるってこと、なら周りにあるものも必然的に硬くなる。新しく積もった地層は大体モロいんですよ」
「なるほど……」
「まぁ適当に歩き回って見てみますか。運が良ければなんかが表面に出てるかも」
「あ、そうそう、もうちょっと砕けた口調でいいよ。年近いと思うし。ちなみに僕二十」
「あ、俺十九っす。ハインツナイツがいいならタメ口で話すよ」
「ナルニィエスでいいよ。改めてよろしくね、キヤ」
そして二人は崖を見ながら歩き出した。そういえばキヤは気になっていたことを口にする
「そういやここってなんか屋敷の裏手ですけど、貴族の私有地って訳じゃないですよね? 一般人立ち入ってもいい場所ですよね?」
「…………」
刹那、ナルニィエスが首の可動域全開でそっぽを向いた。コレアカンやつやな
「帰りましょう、速やかに迅速に性急に帰りましょう、不敬罪で首チョンパはカンベン」
「はははは、大丈夫だよ。ここ、僕の実家なんだ。実家の周りをウロチョロしても問題ないでしょ?」
「あーなるほど実家ね。なら安心だね………実家ァァァァァ!?」
ナルニィエス、貴族だったでござる。話を聞くとどうやらこの辺りに拠点を置く商家の元締めの貴族が彼の一族らしい。だが彼は二男坊、三男ともなると当主は告げず自分で自立して生きていくことになる。ナルニィエスはそれを見越して早いうちから街で働きだしたそうだ。
「家は兄さんが継ぐし、姉さんはいずれどこかに嫁ぐ。そうなるといずれ僕は自立するしかないからね。だからひとまず手に職を付けるつもりで色々とやってるんだけど……」
「あー、こういうのも何だけどもうちょっと売り物はこだわったほうがいいと思うよ俺? 石そのままはさすがに……」
「だよねぇ……」
綺麗な石を加工してアクセサリーなどにするならまだしも石をそのまま販売はさすがに無策が過ぎる。さらに頭だけ上級騎士ヘルムの店員さんは怪しすぎる。失礼ながらこんなのでどうやって生きていくつもりだったのだろうか。
「まぁ化石を加工してちょっと変わったアクセサリーとかにしたり、ちょっとしたガラスの小箱に綿詰めてそこに入れて標本っぽくしても面白いかもしれないな。コレクション性を上げればモノを集めたがる男心に響きやすいだろうし」
「その手があったか……」
「土魔法とかあったら採掘もラクかもだけどなー。岩を道具で手彫りはキッツイだろうし」
「任せてくれたまえキヤ君、実は私土魔法は得意なんだ」
ヘルムで見えないもののおそらく得意顔で胸を張るナルニィエス。そこでキヤはふと思ったことを口にした。
「……土魔法で道路とか作る土建屋やったらよかったんじゃね?」
「僕割と虚弱でね……外で長いこと活動していると暑くなってきてすぐクラクラするんだ」
「そのヘルムのせいでね?」
「これを外すなんてとんでもない! 僕の象徴であり矜持そのものなのに!」
「でもそれって正直安いやつだよな? さらに実践と言うより飾り物的な。知り合いに武器防具に詳しい人いるから俺ある程度わかるぞ?」
「趣味だ!!」
「コイツはっちゃけやがったッッ!!」
楽しそうでなによりです
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