第37話 領主様とその娘と
— 領主ノイエの屋敷 —
ロッペンハイマー領主ノイエ・フォン・ヴァイツゼッカーはドレス姿の長女ジゼルと緑と花に囲まれた美しい庭園で優雅なアフタヌーンティータイムを楽しんでいた。
「そういえばジゼルよ、クランフォール子爵との縁談はどうなったのかな?」
「お父様、あのような下心しか無い鼻の下を伸ばした気持ち悪い男を私は好みませぬ」
「しかしジゼルよ、お前ももういい歳だしそろそろ結婚相手を見つけてだな……」
ジゼルは執事に大きな鏡を持って来させ、突然立ち上がり、マッスルポーズをとりだし自身のマッチョっぷりに納得したのかウンウンとうなづきだすその姿にノイエは頭を抱えた。
ハア、やれやれ困った娘だ。幼い頃からオテンバな所もあったがいつか大人になれば落ち着くだろうと思っていたが………守備兵になってからは身体ばかり鍛えムキムキになりおって! 貴族の女らしさのかけらも無い……
ガシャン!
メイドの1人が食器を落としてしまい、すぐそばにいた執事達が慌てて彼女の所へ駆け寄ると彼女が空を指差した。
「何だ、どうしたというのだ?」
突然、空から全裸の男達が気をつけの姿勢でゆっくりとコチラへと近づいて来ている事に領主達は気付いた。
「ハアっ? 肉棒を振り回して空を飛んでいるだと? な……何という卑猥で下賎な行為なのだ!
コレはクランフォール子爵以上ではないかーっ!
お父様一体どういうなの事ですかアレはーっ?」
「イヤ……私に聞かれても困るのだが、 そ……それにしてもあの男達はどうして裸なのだろうか?」
「ハァ、質問しているのは私ですよお父様っ!」
その時、領主ノイエの前に少女を乗せた魚が現れた。ジゼルはその少女の顔を見ると何かに気が付いたのか少女の所へと走って行った。
「おお、君は確か魔物が攻めて来た時に勇者殿と一緒にいた娘ではないか?」
「えっと確か守備兵団の副長さんですよね?」
「うむ、今はこのような格好で申し訳ない」
「そんな事ないです! ドレス姿もすっごい綺麗だと思いますよ。アーリッヒさんにも見せてあげればいいんじゃないですかね?」
「な……何を言うかこの子供は!」
メアリーの突然の一言でジゼルの顔が真っ赤になってモジモジし出してしまった。
この会話から察するにどうやら領主の娘はメアリーと顔見知りのようね〜 フーンなるほどねアーリッヒがこのお嬢様にお熱なのかな? まあ別にアタシにとってはどうでもいい事だけどさーっ
「ほほう、どうやら我が愛娘の紹介は必要なさそうだな。…………それよりもこのどう見ても何処かの賊っぽい男達は?」
「領主様、この人達はこの町に潜伏して子供達を拉致していた山賊達です。どうぞ守備兵さん達の事務所まで連行して行って下さい」
「なるほどそういう事か、うむっ良い働きであったぞ子供よ」
ジゼルはメアリーの頭を優しく撫でだした。
少女を下ろし、プカプカと浮かぶその魚は領主ノイエのそばへと寄って行った。
「あのさーっ アタシちょっとノイエさんにお願いがあって来たのよね」
「そ……それは一体?」
「実は冒険者ギルドのカルロ村支部を新たに作ろうと思っているのだけどいいかしら」
こ……こ、これはもし断ったら私を……このロッペンハイマーの領主ノイエ・フォン・ヴァイツゼッカー男爵をあのような目に合わせるということなのだろうか?
あり得ない私が……領主であるこの私があのような姿……絶対にあり得ない!
「構わない、好きにするがいい……う…うむ。」
「よっしゃ! OKもらったわよ!」
「ええ先生、領主様の承諾をいただきましたね。」
「良かったな子供よ、頑張れ!」
「ハイ、ありがとうございますジゼルさん」
ジゼルが鍛えた上腕二頭筋を見せるとメアリーも
同じように筋肉を見せ出した。
アラ、何かしらこの2人は、筋肉を見せ合って身体で会話しているのかしら? 嗚呼、全く意識して無かったけどそういえばメアリーも毎日なんか黙々と筋トレとかしてるわね。
メアリーは新たな世界の扉を開いたのかしら……
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