第14話 イ・ミンジュンのお店

料理人の朝は早い。まだ陽の昇らない暗い時間から、冷たいキッチンに入らないといけない。何故なら野菜、肉の下ごしらえの準備は、本格的な料理の仕事の前に始めるのが基本だから


突然、トントンとノックの音が聞こえてきた。

気のせいかと思い、しばらく放っておくと

今度はドアノブをガチャガチャ回す音が聞こえたので誰かが来たのがわかった。

何者だ?こんな時間に?

恐る恐るドアを開けると、そこには勇者の証明であるペンダントを着けたメアリーさんがいた。


「おはようございますミンジュンさん。すいませんこんな早朝に押しかけちゃって… 」


「メアリーさんと魚の聖獣様?、それと他の方々もまだ朝も早いのでとりあえず店に上がってもらってもいいですかね」



ミンジュンに店の中へ案内されると皆、店内を物珍しそうに物色し出した。


「わぁここがミンジュンさんのお店ですか?

中の内装も素敵ですねー!」


「おほーっ椅子もフカフカじゃのう」


「どんな料理か楽しみニャー♪」


部屋の壁などは地味な白をベースにしているのに対してテーブル・椅子などはダークブラウンの木製家具を使っていてクラシカルな雰囲気を出しているのねー! なるほどいい感じじゃないの?


「あらまー中々いい雰囲気のお店じゃないの」


「ありがとうございます。店の内装はカイラと2人で考えて家具職人の方々にオーダーメイドで作ってもらい、厨房の奥にある魔法具などの設備もカイラの父親にお願いして南西の大陸から取り寄せて頂きました。」


魔法具?……何かしら初めて聞く言葉だわ??


「そうだっ!ちょうど今、朝の仕込みの途中だったんですが朝飯何か作りましょうか?」


「それでしたらここに先生が取ってきたお魚があるのでこれで何か作って下さい」


少し眠そうな目をしたメアリーは立ち上がり、袋に入った川魚をミンジュンに渡してすぐに席へと戻る。彼女とすれ違う様にアタシは厨房へとプカプカ空中を泳ぎながら入って行く


「さてと…アタシも何か手伝おうかしら♪」


「おーっ助かります。それでしたらそこの2段目に入っている野菜類を細かくに切って頂けますか?」


「お安い御用よって…アレ?何よこの店、冷蔵庫があるじゃないの?」


何と冷蔵庫があった? 異世界なのに? なんで?

でもよく見たらコンセント挿すところがないじゃないの、どういう事なの?


「ああそれでしたら魔石の中にある魔力を原動力にを使って作動させるんですよ」


「ちょっと何よーっ! それって電気代タダじゃないのよ〜! さっき言ってた魔法具ってコレの事よね?いいわねコレ〜♪」


「カイラが言うにはそもそもこの世界には電気やガス、ガソリンなどの私達が使っていたエネルギー資源などは使われていないそうなんですよ。そのかわりに魔法学というものが発達しているとか?」


ちょっとーっ! 何よそれーっ? あのバカみたいに高い公共料金が無しってサイコーじゃないのさ!


「へー何か面白そうな話じゃないの〜?気になるわねぇ是非とも聞きたいわ〜コチラも色々と聞きたい事もあるしカイラ君はいつ来るのか・し・ら?」


「今日はお昼頃に手伝いに来てくれるそうですよ。」


「ハイ昼ね、 んじゃ食事の後、彼が来るまで二階で皆を連れて眠っていてもいいかしら?」


「ええ構いませんよ」


手伝いが一通り終わったのでアタシはテーブルへと戻ると3人は気持ち良さそうにぐっすり眠っていた。起こすのもかわいそうなので放っておこうかと思ったが…


ミンジュンが料理をテーブルへを運んできた。その匂いに反応するかのようにボミエが目を覚まし、メアリーとヨハンを起こしているところ、ミンジュンはさらに大きな焼魚が乗せられた皿を持ってきてテーブルの中央に置き、みんなにフォークとナイフを渡した。


「コレはさっきの湖で取れた魚かのう」


「わぁー待ってましたニャ」


「アレっボミエさんはさっき、魚もう食べないって言ってましたよね?」


しかし…テーブルに置かれたある料理を見て3人は顔をしかめた。まあ確かにそういう反応するわよね

この町の雰囲気からしておそらくパンやじゃが芋が主食の彼等にとって全く馴染みのない物だったのでしょうね


「あのミンジュンさん、コレは一体何ですか?」


「僕がいた世界でよく食べられている唐辛子などを使った野菜の漬物でちょっと辛いかもしれませんが食べ出すとクセになりますよ。」


「なるほど、ピクルスの様な物かのう」


「ミンジュン君が漬けたキムチかしら〜これをご飯に乗せて食べると美味しいのよね〜!」


そこへガランとドアを開ける音がしたので皆が一斉に振り向くとそこへカイラが入って来た。


「おはようございます。何か店の中から賑やかな声が聞こえたのはメアリーさん達でしたか」


「アラっカイラちゃんお昼頃に来るって聞いていたのだけど?」


「実は先程までこの町の守備兵達とちょっとした事務作業をしていたのですが彼等の1人からメアリーさんらしき少女が町に入って来たという話を聞いてまさかと思いここに来ました。」


さっきのアーリッヒとかいう子の事かしら?


カイラはメアリーの隣に座り、皆が目の前にある

食べ物に手をつけず躊躇している事に気付いた。確かにキムチはちょっと特異なにおいがあって、人によっては敬遠したいというかもしれないわね〜

しかし…

キムチをご飯に乗せて銀の箸で美味しそうに食べているカイラを見て皆がスプーンかフォークで恐る恐る食べてみると、意外といけるのかガツガツと食べ出した。


「な…何ニャ?野菜なのに魚の味がするニャ」


「うわぁ! 何これ!辛いけどほのかに甘みを感じますよ。この白いのと一緒に食べると美味しいですね私…こんなに美味しいモノを食べたの初めてですよ!!」


「それはねご飯っていう食べ物よ!………っていうかメアリーちゃん! アナタは今まで一体どんな物を食べていたのよ?」



「えっと‥ その辺に生えている木の実とかその辺に生えている草とかですね!エヘへっ」


何よそれ?…ほとんど野生児じゃないの?

んーまぁあの村じゃ作物とかも育ててる感じじゃなかったし……いや多分働いてすらいない感じだったかしら? ヤバイじゃないのニート村じゃないのさ?


「そういえばメアリーさん達は先程まで夜釣りでもしていたんですか?」


「いや実は私、その住む場所が無くなっちゃいまして、エヘへっ」


「はい?どういう事ですか?」

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