第8話 ただの村娘が勇者を辞めたい勇者に勇者の称号を押し付けられ空飛ぶ魚と出会う

「ねぇアンタ達ちょっと待ちなさいな」


 勇者イ・ミンジュンと騎士服姿のその仲間は後ろから聞こえた声により振り返ってあたりを見回すが誰もいない……


「ちょっと〜アンタ達どこ見てんのよ」


「さ……魚が喋ってるし、浮いてる?」


 あらあら

 頭上でアタシが浮いていた事に驚いて口を魚みたいにパクパクさせちゃってさ


「何なんだよ一体?」


「少し話を聞きたいだけよ。アンタ達、そこの子供に何をしたのさ??」


 勇者の付き人が勇者を庇うように前に立った。

 若くて真面目そうな騎士って感じね


「い…いや実は彼、国が召喚した勇者なんですがどうしても他にやりたい事があるらしく勇者の立場を捨てたいと言い出したので何度も話し合った結果、我々も仕方なくこの村の村長に誰か相応しい方をお願いしたら彼女を連れて来たんです」



 下らない勝手な理由だわ!!そんなのアンタの勝手じゃないのさ!


 それにあの子供が勇者の力を持ってしまうという事はアタシみたいな奴がまた勇者の特別なエナジーを感知して攻めて来るかもしれない?


「だからといって押し付けはさすがにダメよね、しかも幼い少女に」


「いやっボク達は……」


 念力サイコキネシスで2人を宙に浮かべ、逃げられないようにした。

 そして炎念力パイロキネシスを使おうとしたその時、先程魔法陣の中で眠っていた火傷顔の少女メアリーが足を引きずりながら勇者達とアタシの間に入って来た。


「待ってください。勇者様達を許してあげて下さい」


 少女メアリーはアタシの事をジーッと見て不思議そうに驚いた顔をした。


「あの…貴方はもしかして伝説の聖獣様ですか?」


「性獣ですって?…う〜んまぁ確かにそんな感じなのかしら、伝説になった覚えはないけど」


 伝説の性獣ってどんなのよ一体???


 とりあえず念力サイコキネシスを解除すると

 勇者達が駆け寄り、アタシの前で跪きだし頭を下げてきた。

 何よコレ!意味がわからないじゃないのよ?


「偉大なるこの地を統べる聖獣様!

 オレはカイラ・フォン・ヒンデンブルクと申します。どうかオレ達の話を聞いて頂けないだろうか?」


 そこへ勇者達の元へメアリーが駆け寄り


「勇者様は何も悪くありませんよ。勇者様から顔の火傷と膝の治療費を頂けるという事なので私も承諾してやった事なんです。まぁ…確かに村長さんからは強引に押し付けられましたけど」


「メアリーさん……ありがとう」


 あまり感情を表に出すのが得意ではないのか、控えめに微笑むメアリーを勇者は優しげな眼差しで見つめている


「ボクっ元の世界ではレストランで修行していたんです。いつか自分の店が持つ事が夢だったんです。

 だからこっちに勇者として召喚されてもやっぱり夢を諦めたくなくて……

 カイラもボクの夢に出資してくれるって言ってくれているのでボクは挑戦してみたい!自分の店の味をここの世界の人達にも食べてもらいたいんです。

 あと、いつか店が成功したらメアリーさんにお礼がしたい」


 ふ〜ん青っちろい夢ね!コイツ本当に勇者なのかしら? こんなニコニコした優男が……


「あの聖獣様?私、勇者様の夢の話を聞いて何か協力出来たらと思ったので むしろ少しでもお手伝いが出来て嬉しいです。

 だからどうか勇者様を許してあげて下さい!」


「まぁいいわよただし1つだけ条件があるわ」


「そっ…それは何でしょうか?」


「メアリーちゃんとアタシに貴方の自慢の料理を

 ご馳走するってのはどうかしら♪」


「そっ…そんな事当たり前じゃないですかーっ!

 ボクは恩人であるメアリーさん、そして聖獣様からお金なんて取りませんので是非食べにロッペンハイマーの店へ来て頂きたいです。」


「えっ聖獣様だけじゃなく私も勇者様の作った料理を頂けるのですか??」


「良かったわねメアリーちゃん!」


 せっかくなので勇者イ・ミンジュンと付き人のカイラにこの近くの町や首都についてなどこの国の事を教えてもらったわ。やっぱり情報収集しておかないとね♪


 彼等は去って行き、アタシ達はその後ろ姿を見送った。


 

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