第40話 案内人

 それからしばらく道路を歩いていると……前方にまたしても廃墟群が見えた。


「……まったく。どこまで行っても廃墟だな」


 忌々しそうにそう言うサヨ。俺も、その時ばかりは、サヨの足を直すことができるような施設が現れてほしいと思ってしまった。


 無論、それは砂漠でオアシスを求めるようなもので、早々簡単に、ニナのような人造人間に会うことなんて、できるはずがないのだが。


「どうする? 寄っていくか?」


 珍しくサヨの方からそう言ってきた。おそらく何もないとは思われるが……かといって、もしかすると、何かが存在する可能性も1%くらいはあるはずだ。


「そうだね。ちょっと見てみようか」


 俺たちはそう言って、廃虚の方へ向かっていった。


 着いてみると、やはり、見た目通りの廃墟であった。誰もいないし、何もない……来た意味はないと思われた。


「……やはり、無駄か。行くぞ」


 サヨがそう言ったので、俺も同様に来た道を引き返そうとした……その時だった。


「珍しいですね」


 背後から声が聞こえてきた。俺とサヨは同時に振り返る。


「どうも。こんな廃墟に誰かがいるなんて思いませんでしたか?」


 目の前には白い服装を着た、長い黒髪の女性が笑顔で立っていた。見た目は美しいのだが……どことなく、怪しいというか、胡散臭い感じがする。


 そもそも、人間か、人造人間か……俺には即座にわからなかった。


「お前……人造人間だな?」


 サヨが俺よりも先にそう言った。女性は笑顔のままで小さく頷いた。


「ええ。そうですね。少なくとも私は自分を人造人間と自覚しています」


 どこかで聞いたことのあるセリフ……とにかく、彼女は人造人間であるようだ。


「ふっ……そうか。で、お前は独りでここにいるのか?」


 と、女性は首を横にふる。


「え……他にも、誰かいるの?」


「はい。大勢いますよ。ご案内しましょう」


 そう言って、女性は歩きだしてしまった。俺は少し戸惑う。


「……どうする、サヨ?」


「明らかに胡散臭くて怪しいヤツだ。さすがの私も片足では満足に戦えないし……ナオヤ。お前はどうする?」


 反対に聞き返されて、俺は少し悩む。しかし、もしかすると、この案内された先に、サヨの足を直すことができる人造人間がいるのではないか……俺はなんとなくそう思ってしまった。


「どうされましたか? 行かないのですか?」


 女性が呼んでいる。俺は選択を決定した。


「……行こう」


 俺の選択に、サヨは何も言わなかった。俺たちはそのまま女性のあとをついていったのだった。

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