そうやって姉のことを思い出していると、不意にスカートのポケットの中でスマホが震えた。


取り出して画面を開けば親友の環からだった。

「もしもし?」


「もしもし九十九?私だけど、……大丈夫?なんていうか、心配で。」


「大丈夫だよ、ありがとう」と私は言う。


環はまだ心配なのか通話を切らない。


「わりと平気そうな声で話すんだね。それ、逆に心配になるんだけど」

環は不満げな声で言った。


「……なんか、ショックは受けてるんだけど、どうにも現実味がなくて、他人事みたいに感じちゃうんだよね。…私がお姉ちゃんと、そんなに仲良くなかったからかな?」


「…そっか。……なんとなく気持ちはわかるよ。」

環は私の言葉を確かめるみたいに間をおいてから、また言葉を続けた。


「今日学校で、全校集会があったんだけど、すごく変な空間だった。」


学年集会、と頭の中でつぶやきながら、私は黙って環の話を聞いていた。


「つくものお姉さんのことで、全校生徒が体育館に集められて、校長先生から話があったの。私はてっきり、校長がお姉さんの話題をだしたとき、お姉さんのクラスメイトの何人かは泣き出すんじゃないかと思ったんだけど、見た限り誰も泣いてなかった。それって変だと思わない?お姉さん、友達多かったのに。それで、校長の話も話でさ、3分だよ、3分。校長はお姉さんについて、たったの3分しか話さなかった。


『本校の生徒である桜木百についてですが、学校内でいじめがあったわけではなく、家庭に問題があったのではないかということです。桜木百は定期的に加相談室に足を運んでおり、スクールカウンセラーの畑中が、家がうまくいっていないと相談を受けていましたが、学校のことやいじめについては相談をうけていませんでした。つまり学校側に落ち度はなく、あくまで彼女自身の問題だったということです。』


だって。だいたいそんなようなことを言ってた。」





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