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だから自分の部屋に戻って、机の上に手紙が置かれていることに気付いたときには、一瞬心臓が止まった。まるで見開いた目に体の全神経が集中しているようだった。
私は後ろ手でゆっくりと扉を閉めると、空気が張り詰めているのを感じた。
近づいてよく見てみると、封筒にはつくもへ、と私宛であることが記されており、手にとって裏返せばモモより、と姉からであることが記されていた。
どちらも姉の几帳面で綺麗な文字だった。
私はその、どこにでもあるような無地の白い封筒を見つめながら、頭の中でしばらく考えをめぐらせた。
何が書かれているのか、全く検討がつかない。
誰にも何も残さなかった姉が、唯一残したものがこの手紙なのだとしたら、この手紙は間違いなく、とても重要で貴重なものだ。
もしかしたら姉が自殺してしまった原因だとか、姉が考えていたことや感じていたことなどが、ここに書かれているのかもしれない。
しかし私は音も立てずに、しばらく手紙を持ったまま、躊躇して動くことができなかった。
手紙の中身について、興味がないわけではもちろんなかったのだけれど、そんな重要なことを一番始めに知るのが妹の私で良いのだろうか、とか、もっと適切な人間がいるのではないか、とか、いくつもの迷いが心の中で生じていて、それと同時に、姉の死について詳しく知るのが、なんだか少し怖くもあったのだ。
だから私は手紙を開けずに、何度か裏返したり表をむけたりしただけで、結局また机の上に戻した。
『どうして、手紙を残す相手が私なんだろう。』
私がそんな風に思うのも、無理のないことだと思う。だって、私と姉は、別に仲の良い姉妹だったわけではないからだ。
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