第9話

物々しい門。軍事国家ダイソンに似つかわしい。


リノの一行は近辺に隠れていた。頑丈な門と人を拒絶する門番に行き先を阻まれていた。


「隊長、このままでは侵入できません」


リノは心配そうに呟いた。


「すごい警戒だな」


ユーリも唖然としている。


「裏手に協力者がいる。行こう」


リトは裏門に回り、協力者に連絡を告げた。ヴェルニカ国が派遣した隠密行動のエキスパートがダイソンに潜んでいた。ぬかりはない。


「リト様、ダイソン国内は非常に不安定にございます。くれぐれもご用心を。ここからなら一般の行商人に変装して、許可証がなくても入れます」


街人に化けた兵士が話す。リトは軽く頷く。


「俺達は大丈夫だ。途中、ダイソン国の者に襲われた。至急、ヴェルニカに戻り、近況を報告してくれ」


「わかりました!」


会話が済むと兵士は姿を消した。


裏門は手薄になっている。リト、ユーリ、リノと部下達は行商人の服装に衣類を変えた。


裏門から門番と交渉し、城内へと辿り着く事に成功した。


街は人手が少なく、街を闊歩する兵隊しかいなかった。この街は、一体どうなっているのだろうか?


「殺気だっているな・・・」


リトはリノに話しかけた。


「まるで戦争が起きる前触れみたいですね」


街中の広場にも誰もいなかった。この警戒はただ事ではないとリトは思った。


皆、リト達一行を見て密かに耳打ちしているのは気のせいだろうか。


リトは居心地の悪さにこの場を後にしたくて仕方なかった。この国には何かある。リトはそう感じずにはいられなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る