第2話
リトの左腕から血が吹き出る。フォレスト・ウルフの牙には、リトの衣服の切れ端と血がついていた。
「ロゼ!大丈夫か!?」
リトは叫んだ。
ロゼの首元にはナイフが突きつけられ、身動きが取れない。リノはすきを見て救出しようと試みる。
「動くと切る」
ロゼの首元には光るナイフ。力を込めながら、何者かは静かに呟いた。月明かりが辺りを照らす。飛びかかろうとしたリノは躊躇する。
ナイフを突き付ける黒いローブを羽織った少女がいた。真っ白な髪、真っ白な肌、印象的な漆黒の瞳。どこか儚く、人形のようでもある。リトは痛みを忘れ、こんな状況にもかかわらず見入っていた。
「この森に何をしに来たんだ?」
少女は呟く。
リトは傷口を抑えながら、話し始めた。
「この森にはかつて平和の使者フォレスト・ウルフがいると聞いた。俺は国の命令でその調査に来ただけだ」
「森を荒らす側の人間なのか?」
少女は真っ直ぐリトを睨みつける。
「俺達はそんな事はしない。今まで森に踏み入ろうとした人間が何人も怪我をして帰ってきているが、あいつらは密漁という犯罪を犯した者達だ」
少女は神妙な顔でリトの話しを聞いている。
「俺達密漁者じゃない。わかってくれないか?」
しばらくの間、リトと少女は睨み合う。意志の強い瞳がリトの体を突き刺す。リトは視線を逸らさないように、少女と対峙する。
「こいつらの言っている事は本当だな」
フォレスト・ウルフが口を開いた。殺気が少女の顔から消えた。まだ幼い顔にほんの少し血が付いている。ロゼの首元から少女はナイフをゆっくり下げる。
「調査とは何をするんだ?」
「森を調べて国王に報告するだけさ」
「そうか、森を焼き払いに来たわけじゃないんだな?」
「俺達はそんな事はしない」
フォレスト・ウルフは「嘘は言っていない」と、呟く。
リトに歩みよる少女に柔らかな月明かりが注いでいる。
「一人で歩けるか?手当てしよう」
少女はリトに肩を貸した。
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