第54話 妻自身よりも夫の方が詳しい
「え、なぜ貴方も脱がれるのですか?」
領主専用の風呂へと案内するアナルドについていくと、館の裏手にある岩場に出た。上からお湯が絶え間なく落ちている。天然の岩風呂だ。湯が溜められた場所まではタイルが敷き詰めてある。上には建物から屋根が付きだしているが、空も見える。左右には木でできた囲いがあり据え付けられた棚があった。
大人が10人ほどは余裕で入れる広さに、思わず感嘆の声を上げたのもつかの間、突然服を脱ぎ始めたアナルドに冷ややかな視線を向けてしまった。
鍛えられた体はしなやかで、傾いた陽光を受けてもますます輝いているように見える。
内心で見惚れないように叱りつけながら、引き締まった腹部に目を落とす。上半身は裸でズボンのベルトも緩めている彼は頓着せずに端に備え付けられた棚を示した。
「脱衣籠はそこにあるでしょう。すべて脱いだら湯をかけてあげますよ」
「なぜ、一緒に入るのです?」
こんなに素敵な風呂なら、余計な邪魔をされずに一人で入りたい。
しかも今は夕方だ。まだまだ太陽は高い位置にあり、隠れることはない。つまり、すべてをさらけ出してしまう明るさだ。
「夫婦なのですから当然です。これも賭けの一環ですよ」
夫婦は一緒に風呂に入るのが当然?!
夫婦って奥が深いなとバイレッタが呆然としている間にもアナルドはバイレッタを抱きしめるように腕を回した。
彫像のように硬い胸が、目の前に来て思わず息を呑む。
「筋肉痛にもよく効くんですよ。馬車でずっと座っていると同じ姿勢ばかりで疲れるでしょうから」
言うなり、バイレッタの背中にあるドレスのリボンをしゅるりとほどいた。そのまま肩を落とされると下着だけになる。慌てて胸元を隠すと、アナルドは首を傾げた。
「随分と熱そうですね、真っ赤ですよ?」
「———っ、当たり前でっ…ひゃぁっ」
アナルドは首筋に舌を這わせると、舌先で優しく舐め挙げた。甘い刺激にバイレッタも思わず上ずった声をあげる。
「まだ湯に浸かってもいないのに、すっかり熱くなっていますね。期待していました?」
からかうように笑われると羞恥心が増して、思わずかっとなる。
体の反応はそうかもしれないが、決してして欲しいわけではない。
「違いますっ」
「何度貴女を抱いたと思ってるんですか。妻自身よりも俺の方が貴女の体には詳しいでしょう。欲しがって瞳はすっかり潤んでるんじゃないですか。ほら、ここが感じる場所だ、気持ちいいでしょう?」
得意げな声で耳元に囁かれる。だが狙いを定めた手が肌に触れると、反論が嬌声に変わる。
「じっくりされるのもお好みでしょうけど、激しくされるのも好きでしょう? 今日はどちらがいいですか?」
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