第53話 甘い夜と女子の苦労

※R15的描写があります。注意


 すー、はー。すー、はー。


「ああ、いい匂いやー」


 部活の後、僕の部屋にて。

 例によって、真澄に臭い、いや、匂いを嗅がれていた。

 それも、いつもより少し激しめだ。


「前から思うんだけどさ。どこがいい匂いなの?」


 正直、ほんとにわからない。


「ウチにとっては、いい匂いなんやー」


 さいですか。

 背中をなでながら


「こういうときの真澄も、可愛いね」


 と囁く。

 すると、首筋に冷たい感触。

 ちゅ。ちゅ。

 首筋にキスをされるのは、唇とまた違って、なんだかゾクゾクしてくる。


 僕も、顔を彼女の首筋に寄せて、キスしてみる。


「んー」


 言葉にならない、うめき声。


「コウー、好きやー」

「僕もだよ」


 ふにゃふにゃとした声。


「今日、楽しかったね」

「ウチもー」


 身体をぎゅっと抱きしめられる。とても暖かい。

 こういうときの、お互いの体温を感じられる瞬間が心地よくて好きだ。


「いつもより、甘えてる?」

「コウが皆にとられたみたいやったもん」


 そんなことを思っていたのか。


「大丈夫。僕は真澄だけのものだから」

「ウチもコウだけのもんよー」


 なんて囁き合っていると、下半身に手が触れられる。


「ちょっと。まだ早いんだけど」

「ウチはもう準備できとるよー」


 それはそれで悪くないんだけど、もう少しこの瞬間を楽しんでいていたい。

 手を下半身から引きはがす。


「コウのイケずー」

「もうちょっと待ってね」


 苦笑しながらそう返す。

 普段は恥ずかしがりなところがある彼女だけど、思う存分甘えてくれる。


 もっと体温を感じたくて、より強くぎゅっと抱きしめる。


「ふぁー。暖かいー。極楽や―」

「極楽って」


 真澄の顔を持ち上げて、口付ける。


「ん」


 くちゅくちゅ。真澄が舌を入れてくるので、僕の方も舌を絡める。

 キスをしながら、服の下から手を回して、胸に手を触れる。

 どく、どく、と少し早い鼓動が感じられる。


「小さくてごめんなー」

「普通だと思うけど」


 こうやって膨らみをちゃんと感じられるし、普通じゃないのかな。


「周りの女子はもっと大きいんよー」


 服の上からだと、そんなに変わらないように見えたけど、そうなのか。


「そうなんよ。着替えの時とか見るとなー」


 そんな事を気にしていたとは。


「僕がそんなこと気にしないのは知ってるでしょ」

「それはわかっとるけど。ウチの問題なのー」

「わかったわかった」


 僕が気にしてなくても、そこは譲れないらしい。力を入れないように、ゆっくりと触れたまま揉みしだいていく。


「ん、んん」


 だんだんと彼女の息が荒くなってくる。


「興奮してる?」

「うんー。はよ、しよう?」


 再び下半身に彼女の手がかかる。


「じゃあ……」


 それを合図に、彼女の服を脱がせ始める。


――


「胸のことってさ、そんなに話題になるの?」


 行為の後、ベッドに寝っ転がりながら聞いてみる。


「色々やなー。胸のバランスがどうとか、もっと大きくするには、とか」

「女子同士のときって、何話してるの?」

「下ネタがめっちゃ多いなあ。あとは、色恋沙汰やな」

「そ、そうなんだ。ひょっとして、僕たちの事が伝わってるのも?」

「女子ネットワークやろうな」


 女子トークというと、甘いものを囲みながら、

 楽しく話しているイメージがあったけど。


「苦労してるんだなあ」

「女子はみんなそんなもんやで」


 溜息をつく真澄。

 普段の生活の裏側にそんな話があったとは。

 真澄も色々苦労してるんだなあ。そんなことを思ったのだった。

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