第44話 幼馴染同士で幼馴染しよう(3)~のんびり主人公と世話焼き幼馴染~
「朝やよー」
声が聞こえる。
「あと5分……」
「あと5分言うて、ずっと寝とるやろ」
ゆさゆさゆさ。肩をゆさぶる。
目を開けると、そこには幼馴染の真澄。
お向かいに住んでいて、小学校の頃からずっと一緒だ。
生まれた病院もベッドも一緒だったらもっと良かったのだけど。
「ん。おはよー。真澄」
「ほら。しゃんとして。朝ご飯出来とるからなー」
そう言い残して去って行く真澄。
「ん。美味い」
真澄が作ってくれたご飯をのんびり食べる。
「コウは毎回美味しそうに食べてくれるから作り甲斐あるわー」
ニコニコしながら僕を眺める真澄。
いつも世話を焼いてくれるのは嬉しいけど、なんでこんなにしてくれるんだろう。
「ほら、ここ、皺がついとる」
仕方ないなあ、という顔をする真澄。
制服のしわや襟を直してもらう。もうこんな日が続いてどれだけ経つだろうか。
「はい。お弁当な」
「いつもありがと」
登校するときも、いつも一緒だ。
「ほんと、コウはウチがいないと何もでけへんのやなー」
仕方なさそうな顔でそうぼやく真澄。
そんな日常が僕は好きだった。
「放課後は迎えに来るからなー」
そう言って去って行く真澄。
そして、学校にて。
親友の正樹がこう言った。
「今日は何のプレイをしてるんだ?」
プレイと言わないで欲しい。
正樹に事情を話した。
「それは、お前らには一番お似合いじゃないか?」
そう笑って言われたのが印象的だった。
放課後。
「コウー」
遠くから、走ってくる真澄。
「こうやって、ずっと一緒に居られたらええなー」
笑顔でそんなことを言う真澄。
そんな姿に僕は―
「って、ちょ。コウ、何しとんの?」
「キス、したくなって。いい?」
我ながら、なんでこんなところで興奮してるんだろうと思うが。
ちょっと耐えられない。
「ええけど。演技、忘れとるよ」
呆れたような、真澄。
20分後―
「ぷはあ。キス、凄い長かったわー」
ぽーっとした顔の真澄。
「なんだか、燃えたっていうかさ」
何故か、やたら気分が乗って来てしまった。
――
夜、僕の部屋にて。
「真澄に世話焼かれるの、凄い良かったみたい」
僕は、何かに目覚めてしまったみたいだ。
「それはおおきに。今日のコウはちょっと可愛かったわー」
ニコニコしながら、僕を見つめる真澄。
「でもさ。考えてみれば、普段、かなり真澄に世話焼かれてたんだね」
真澄がお弁当を作ってくれるようになった日を思い出す。
「ウチは今日、思う存分お世話できて良かったわ♪」
前から、何かして欲しいことをねだられていたから、
真澄にとっても楽しかったのだろう。
「気が向いたら、またしようなー」
これはダメ人間になりそうだ。
そう思いながらも。
「世話を焼いてもらうのも、結構いいかも」
結論。世話焼きは良い。
っていうか、真澄が世話焼きなんだろうけどね。
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