1-16 狩猟解禁!
寝ているフィーナを横目に、俺は本格的に旅支度をする為に必要な道具の想定を始める。
・食糧
・寝袋
・武器・防具
・釣竿(旅先での食料確保用)
・たいまつ
・地図
・各種資材少々
・作業台
まあ、最低限こんなところか。
食糧・釣竿・たいまつ・作業台などは既にあるものをそのまま持ち出せばいいだろう。
すると新規で必要なものはそれほど多くはなさそうだ。
寝袋・テントと、武器防具になる。
この中で優先的に欲しいものは防具だった。
それもフィーナの防具だ。
俺も旅に出たことはないし、モンスターと遭遇したのもフィーナが襲われそうだった半魚人との一回きりだ。
だから旅先で何が起きるかはわからないし、何かと遭遇しても上手く対応できる自信はない。
だからこそフィーナの守備面に関してはできる限り気を配りたかった。
出来るなら鋼鉄で身を固めた重厚なフルアーマー・フィーナにしてやりたいが、そもそも元になる鉱物がないから用意しようがない。
こんなことなら家の増改築の傍で、鉱物の採掘にも精を出しておくべきだった。
今から鉱物入手も考えてみたが、そもそも鉱山がどこにあるかもわからないから手当たり次第に掘り進むしかなくなる。
それは非効率過ぎるため、選択肢に入れる気になれなかった。
その場合、レシピのなかで残された選択肢は『革の鎧』の一択になってしまった。
うーん・・・。
RPGをやっていると序盤は助かるから俺も使うけど、すぐいらなくなっちゃうんだよね。
まぁ、それでもないよりはマシと言うものだ。
革を手に入れるためには家の付近で牛や猪を見たことがあるから、それを殺せばいいのだろうか?
となれば狩りに行く必要がある。
思えばあまりに簡単に魚が取れてしまい、食糧事情に困ったことがなかったから、他の生き物を捕食すると言う発想がなかった。
ついにフィーナに動物性タンパク質を与える日が来るかもしれない。
味覚のない俺は別にそれでも良かったけれど、フィーナはどうだったのだろう。
実は他の食べ物を食べたいと思っていたけど、居候の手前そんな希望を言い辛くて我慢をしてたのではないか・・・!?
俺はホワンホワーンっと回想の中で食事をするフィーナを思い出す。
フィーナは朝は弱いが、それ以外の飯時になるといつも率先して食事の用意を始めている。
スープ、丸焼き、燻製くらいしかできないのに、そこにアレンジを加えようと何処かから手に入れてきた雑草を入れて、
「これは美味しいです!」
と言いながら目を輝かせているフィーナ。
「これはとても美味しいです!」
と言いながら涎が垂れてしまっているフィーナ。
「これは革命ですぅぅ!」
と言いながら魚の背に直に齧り付いているフィーナ。
いつも楽しそうに味の品評しながら食事をしてた。
・・・うん、全然心配いらなかったわ。
たが冷静に考えるとよくも同じ魚でここまで食事を楽しむことができるものだ。
ここでまるでジャンルの違う動物性タンパク質を見せつけたらどうなるんだろう。
ホワマリンを最初に見たときはめちゃくちゃ驚いてたっけかな。
魚であれだろ?じゃあ肉だったらどうなる?
ククク・・・・。
育ち盛りの小さな肢体に、汁の滴る獣肉はさぞ堪えるでしょうなぁ?
これは一歩間違えれば、屈服を通り過ぎて隷属させてしまうかもしれませんなぁ!?
俺は再度、ベットで寝ているフィーナを見る。
涎を垂らして呑気に寝ておる。
そうしていられるのも今のうちよ。
今晩には貴様を骨抜きにしてやるからな!!
フハハ!フハハハ!フハハハハハハーーー!!
俺は心の中で高笑いをして朝食の用意に入った。
◆
朝食の用意を終えてフィーナを起こして食事を終えると、俺はフィーナと土遁の術(土の中に隠れる)の練習を10セット行った。
これは食後の簡単な運動になるから結構良い感じだ。
「じゃあ今日から旅支度を本格的に始めようか」
「そうですね!色々と用意しないといけません!なにからやりましょうか?」
フィーナはどこかウキウキとした様子で俺に話振ってくる。
「お魚をたくさん釣りましょうか?それとも綿を沢山用意しましょうか?」
「あー、寝袋を作りたいから、確かに綿を作っておいてもらった方がいいかもしれないな。食糧はまあ、時間のある時にでも見ておいて貰えばいいかな?」
「わかりました、任せてください!」
「食糧は本当に時間があればでいいからね?」
「はい、了解ですよ」
俺はやんわりとフィーナに釘を刺しておく。
『クラフターズ』のゲームシステム的に、食糧は腐ったりしないから別にありすぎて困るものもでもない。
しかしフィーナは食に関しては妙にこだわりが強く、必要以上に集めてしまう傾向がある。
賢人は必要以上に命を奪わないものだ。
何より、俺もこれから革鎧の材料を手に入れるに森へ狩猟に出るつもりだ。
これ以上食料の在庫が増えることにあまり意味を感じられなかった。
「俺は今日、ちょっと探し物があるから、森の中に行ってくるよ」
「え・・・そうなんですか」
フィーナは少し以外そうな表情で俺を見てくる。
「・・・ゲンキさん、気を付けてくださいね?」
「あぁ、大丈夫だよ」
「道がわからなくなくならないように、本当に気をつけてくださいね?」
「大丈夫だって」
「暗くなる前に帰ってきてくださいね?危ないですからね?」
「う、うん」
「本当にですよ?」
「あぁ、大丈夫だって」
オカンか!
いつもは素直なフィーナが、今日はすごいグイグイくる。
「でも、一人で森に行くのは心配ですし、私もついていきましょうか?」
「いやいや、フィーナは綿の仕込みをお願いしたじゃない?本当、なにが起きても平気だから、待っててくれって」
第一、最悪何かあって死んだとしても俺はセーブポイントに死に戻りできるはずなんだ。
だからどんなことがあっても俺は死なない。
いや死ぬけど、でも事実上無敵であった。
NPCキャラのフィーナがそれを知らないのは無理のないことだけど・・・。
「でも・・・」
「でもじゃないの、決めたんだからさ」
「うぅ・・・」
「さ、それじゃお互い今日の仕事に取り掛かろうか!」
「はい・・・」
半ば強引にフィーナの話を切ると、フィーナは渋々と綿の採集と仕込みに向かう。
俺はアイテム保管庫から武器の石の棍棒を取り出して、具合を確かめる。
これで牛だか豚だかを叩いて倒して革を手に入れて、ついでに肉をフィーナに食わせてやるのだ。
さぁ、狩猟解禁の時がきたぜぇ!!
--------
「美味しいですね!!」
「うん・・美味いなぁ・・・」
俺とフィーナは今、夕食を食べている。
満面の笑みのフィーナの目の前には、いつもの魚の焼き物があった。
「ゲンキさん、今日は目的のものは森で見つかったんですか?」
「うーん、今日はなんかうまいこといかなかったんだよねー・・・」
無邪気な質問がフィーナから投げかけられる。
結論から言うと、牛は見つからなかった。
豚も見つからなかった。
普通にプレイしている分には遠目に見かけた動物たちだが、必要に駆られて探しだすと意外に見つからないものだった。
家の位置を忘れるなと言うフィーナの助言もあって、狭い範囲で探していたのも響いているのかもしれない。
小さくまとまった生半可な索敵範囲では見つからないようだったので、明日はもうちょっと足を伸ばしてみようと思う。
フィーナには内緒で。
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