第16話 ママ無双
石川県立歴史博物館へと到着した。入館料を支払い中へ入ると、前田利家公ゆかりの品がずらりと並んでいる。
『前川どの!このような上等な品はわしは持っておらなんだぞ!』
『利家さま…だから声がでかい』
『そうであったな、ここにあるものは一級品はがりじゃわい、馬大将のわしが持てるものではない』
『利家ちゃん?どうかしら?ウズかない?』
『疼くの!武者震いがするわ!』
『じゃ♪帰りましょ。もう、一通りみたでしょ?』
『ママどのが一手御指南してくださるのか?』
『利家ちゃん、強者は強者を知るというでしょ?私からみたら、利家ちゃん隙だらけなのよ♪心配になるくらいだわ♪』
『ママどのー帰るのじゃ!』
ダッシュで帰宅した。
ママは道場で着替えている。完全武装だ。
忍者の世界では、伊賀と甲賀が有名であるが。最強で在るが故に、加賀忍術は無名であった。
なぜなら、出会い対立し狙われた者の生き残りが居ないからだ。
『利家ちゃん、パパから鎧兜と真剣と本槍も借りてね♪じゃないと死んじゃうから』
(くーーっ!久しぶりにママの武術がみれるぞ!おら!ワクワクすっぞ!)
『パパ、絶対に止めたり手出ししないで』
『はい!喜んで!』
ガチャガチャ、甲冑に身を包んだ利家さまの姿は異様である!流石は戦国武将。
『前川どの!さきに言っておく!わしが隙だらけじゃと!目にもの見せてくれるわ!覚悟せい!世話になっているが手加減はできぬ!』
『利家!弱きものは、よく吠えるの!』
ママは瞬風の如く利家さまの後ろにまわる。
そして、首の付け根に手刀を入れる。
バタ。
瞬殺である。
『水を!』
『はい!』
私は用意してあったバケツの水をママに渡す。
バシャッ!
『利家!目を覚まさぬか!』
『うっ、ぐっ、はぁ…何が起きたのじゃ?』
『己よくその程度で生き残っていたの!立て!』
『なんだかよくわらぬが…悔しい!今一度勝負!』
『弱っちいから手加減してあげる』
『な、な!な!!なんだと!』
利家さまの槍が鋭く突き出される!
ピタリ。
ママはなんと真剣の付いた槍を指で挟んでいた。
『なんたる剛力じゃ!動かぬではないか!』
利家さまの槍はにっちもさっちも動かない。
『己、基本がなってない!今一度眠れ!』
ママは槍の先端をつまんでいるだけなのに、利家さまの重心は崩され床に這いつくばる。
『槍が手から離れぬ!なんじゃこの術は!』
『黙れ!塵!』
ママの手のひらが利家さまの胸元へ触れる。
沈黙である。再びの気絶である。
『水を!』
『はい!』
バシャッ!
『あたたた、参りました!』
『今日はここまで!己には基本から仕込む!覚悟されよ!』
(ここで解説しよう!ママはバトルモードになると人格がかわるのである!)
『今日子さん、着替えようか?』
『つまらぬ試合であった!』
ママは道場の裏で武装解除する。
『パパっ♪利家ちゃん♪ご飯の用意をしてくるわね♪お稽古お疲れさま♪』
ママはママの人格を取り戻した。一安心である。今夜の夕食は右左がいた頃のように、利家さまの強化プログラムについて熱く語るだろう。ママは感性が優れているので、私は通訳に勤めよう。そう誓う私であった。
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