第15話 利家の知らぬ未来

三晃で食事を終えて三人は歩き出す。目的地は石川県立博物館、正式名称は石川県立歴史博物館だ。


三晃から右へ向かい左へ曲がる。道路の反対側にはパチンコ屋さんがあった。

利家さまは興味深く見て。


『あの入道はつよそうじゃの!』

『プロレスラーですからね』

『ふむ、今度一手ねがいたいのお』

『本人に聞いてみますね』


そんな会話をしながら、てくてくと歩くと片町スクランブル交差点にたどり着く。北国銀行からセブンイレブン方面へ渡り左手へ。

まっすぐ進むと先ほどの竪町、柿木畠と続き香林坊交差点へ。そこを右へ曲がる。


『珍妙なものがかざってあるの!』


ぐるりと結ばれた足のモニュメントである。


『今の利家さまにはわからぬとは思いますが、利家さまは芸術や芸能を愛して加賀百万石を発展させたのですよ』

『ここは、加賀なのか!?』


(そういえば言ってなかったな)


『はい、現在は石川県と言い、ここは金沢です』

『金沢?知らぬなじゃのう』

『また、お話ししますよ』

『うむ、頼む』


モニュメントを左へ曲がりまっすぐ歩む。しばらくすると左手に金沢城公園の立派な石垣が見える。


『これは、見事か城構えじゃ!どのような大名がつくったのかしりたいのお』

『利家さまです』

『!!わしじゃと!?』

『それも、あとで説明します』

『うむ!うむ!わしは大名になったのか!』

『大大名ですよ』

『信じられん!信長さまのために槍を振り回すことだけがわしの本懐で、喧嘩ばかりしておったから人徳には程遠いのはわかっておった。それが大大名になるとは…。』


石浦神社へと交差点を越えて行く。


『パパっ!せっかくだから参拝していきましょう』

『ああ、そうだな。ママ』



境内へ入り手水で清め本殿へ。


(右左が無事でありますように)


私は祈る。もしかしたら右左はどこにも存在せず、利家さまの御霊だけが時を越えて来た可能性も否定できないからだ。

ママも長く長く祈っている。

利家さまも深々と頭を下げて参拝を終えていた。


『大丈夫じゃ…信長さまのことじゃ、絶対にご無事に違いない…。』


(本当に尊敬しているのだな)


『パパっ!右左ちゃんは無事よ!今ね、ちらっと見えたの右左の姿が!』


ママは超越者だから、有り得るな。



石浦神社境内にひしめく屋台を通りすぎ右手の坂を上がる。道路向かいは兼六園である。


『良いところじゃの!』

『利家ちゃんもそう思う?』

『ママどのー。わしには出来んぞこのような仕事は』


途中、道路を越えて金澤神社境内へと入る。

芋掘り藤五郎が芋を洗ったという、金洗いの沢をみて、本殿へ進む。

ここでも三人は各々の祈りを捧げるのであった。


境内を出て坂道を上がっていく、道路向かい反対側にレンガ造りの建築群が見てとれる。


『利家さま、着きましたよ』

『この館もおもむき深い、見事じゃ!』



こうして、我々はやっと石川県立歴史博物館へと到着するのであった。


さて、利家さまは当時の利家さまの未来をみて何を思うのか?そして、現代に在るべくどのように人生を選択するのか?注意深く見守らなければと思う前川上下であった。



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