第10話 慶次郎のかぶきぶり

軍略においては、兵站が最も重要だと考える。

水陸両用強襲艦これを水陸両用強襲戦車に換装したものを、かなりの数用意した。

後方には補給車輌、ガソリン燃焼式蒸気機関車である。

オフロードを走るので、サスペンションもバッチリで車輪もゴムのような柔軟な素材が巻かれている。

馬車スペシャル!サスペンションと足回りは同じだ。居住性抜群!四頭引きで6人までゆったり乗れる。これも相当数。


騎馬隊、織田軍とロミオたち合わせて三万の部隊だ。

短期間ではあるが、ロミオたちにもライフル銃の使い方は教えてあり、全体ではないが適性のある者に持たせている。


西海岸から東海岸まで、およそ4000キロメートル。大変な距離である。


馬の1日の移動距離を40キロメートルに設定し騎馬隊は100日ほどで到着する。


飛行船部隊100隻は楕円の環状線を描くべく先行している。ガソリン燃焼式蒸気機関プロペラ機なので、時速80キロもの速度が出せる。


(あれ作ったのだれだ?基本的理論は僕のだけど、応用力すごくね?)


どうやら空中給油まで、出来るようで時折補給船が上空を西海岸へ向かっていく。



山越え川越え谷越えて。

というか!水陸両用強襲戦車が川を越えながら橋も作っていたのが衝撃的だった!




さて!西洋人さんよ!どう対応してる?



すでに西海岸を出発してから1週間が過ぎている。


西洋人の居留地には、私の書いた宣戦布告文と降伏条件が書かれている。

普通に英文で書いていたのだか、慶次郎が生暖かい目で僕をみていたことを思い出した。



(いい加減変だとは感じてるだろうな)



文章の内容は以下である。

①宣戦布告するが降伏するなら攻撃はしない。

②逃げようとすれば即座に攻撃する。

③降伏条件は無条件とする。



定期的に飛行船は楕円の環状線を行く。

飛行船には空爆用の爆薬がたんまり積んである。



さて、そろそろか。

遥か彼方に居留地の姿がみえる。


そして、五頭の騎馬にまたがった西洋人の姿も。


『出迎えご苦労!私は織田軍の前田利家である!代表者は誰だ!』


カッポカッポとやつれた姿の指揮官と見られる男が出て来た。


『なぜ我々の言葉をはなせる?』

『そんな些細なことは、どうでもよい!良くも逃げずにいたな?』

『ぐぬぬぬぬぬ、全ての船のマストを壊したのはお前たちだろう!?』

『慶次郎だ』

『誰だ!それは?』

『慶次郎!ここに!』

『ははっ!』


僕も背が高い方だが、慶次郎の方が高くスタイルが良い。


相手の外国人は胆はすわっているようだが、意外と小柄だ。慶次郎を見上げ冷や汗をかいている。


『こやつが前田慶次郎で、わしが前田利家だ。ややこしいので、これは慶次郎と呼べ』

『なるほどな、私はジョン・グランドウォーカーだ。イギリス海軍大将をしている』

『ジョンか、で。宣戦布告文と降伏条件は認めるか?』

『本国の女王に判断してもらわなければ、答えられぬ!』

『だめだ!本国には帰さぬ!生きたいか死にたいか今すぐ決めよ!』


ジョンはしばらく目を伏せたまま考える…。

そして、何を考えたか、サッと腰の銃に手を伸ばした。早抜きである。


シュッ!ボトッ…!


『ぐああああ』ジョンは苦悩の表情をしている。


慶次郎の居合い抜きで手首から先を切り落とされたのだ。



(殺すべきか殺さぬべきか)



僕は持っていた紐を出して止血する。

『ジョン、お前はバカなのか?』

『はぁ、はぁ、はぁ、くっ!殺せ!』


(クッコロやん!初めて生で聞いた)



『発言の許可を求める!』

後ろに居た四人の内の一人が歩みよる。

『かまわぬが』

『前田殿、感謝する。そして交渉中でありながら銃に手をかけた彼の無礼を謝罪する。

私は海軍中将のジャック・ウェイバーだ。よろしく頼む』

『どうやら話のできる人物もいるようだな、ジャックよこの通りジョン大将は話せぬようだ、そなたと決められるか?』

『前田殿、決めるもなにも我々の選択肢は降伏しかあるまい、後ろに見えるのは大筒だろう?あの数とやり合いたくはないな』

『よろしい!そして、捕虜にしている現地人を即時解放せよ!』

『それは、自分から投降してきたものも含めてか?』

『当たり前であろう』

『わかった、おい!大将閣下をお運びしろ!それと、無駄な血を流さぬように徹底的に武装解除するように各方面へ指示せよ!』



こうして、東海岸一帯は僕の支配下に置かれた。


(ほとんど、慶次郎の仕事ぶりだけどね!さすが天下のかぶき者!)


その後、穴太衆と金堀衆に彼らの居住地を土塁や石垣、ふかい堀で囲み収容所という陸上の出島にするのであった。

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