第4話 江戸前寿司が食べたい!

僕の日課は朝の調練、朝食、研究所での新兵器開発、昼食をだれも食べないけど僕は昼食を食べる。

午後は調練の日もあれば会議の日もある。

本来であれば、馬大将の僕は軍議には参加出来ないはずが、毎回呼ばれます。


織田軍は、半農武士ではなく純然たる軍人で構成されている当時としては画期的なシステムでした。すごいなあ。


信長さまは有能であれば、農民でも配下に加えその能力を活かす才能をお持ちでした。

学校の授業や本で読んだ織田信長さまのイメージは第六天魔王、キレキャラだったのですがまったく違いました。


『利家、お主はまた面妖な物を作っているそうじゃな?』

『ははっ!蒸気機関を活かした大型船を作りました。軍艦と言います。』

『ほほう、してどのくらい速いんじゃ?どれだけ遠くの海までいけるのじゃ?』

『信長さま、東の海の果てには途中、小島がありその先には大きな陸地がございます。そこでは、金や黒い油が得られますので私は織田家の繁栄のため、日の本のため、天子さまのためにも、その資源を得たいと存じます』


『ふむ、我らはそなたの武具で京を目指せばよいということか』

『信長さま、私が作り上げた武具は人を殺す物ではありませぬ、あの異様を目にすれば自ずと誰しもが信長さまの配下に加わるでしょう』


『さもあらん』

『威嚇射撃でさえ多大な死者が出るでしょう、相手の臆した時に、信長さまのお心で皆を織田家に加えてくださいませ!半年ほどで私は戻って参ります故に』

『で、あるか。利家よそなた誰を伴って大海原をいくのじゃ?』

『甥の前田慶次郎をと』

『あのかぶきものか!わははは!それは良い』


僕は令和の頃の記憶を探る。

(たしか、ちょっと前にコロンブスがアメリカ東海岸あたりに到達してたよな?)


『信長さま!大陸を統治するための全権を委任していただきたく存じます。なにせ連絡は取れなくなりますもので』




『よかろう!切り取り自由じゃ!すべてそなたの領地にせい!』

『お待ちください信長さま、かの地は信長さまのための地であり、日の本のための地であります!』


『そなたには欲がないのか?』

『いえ!ございます。事の成就のあかつきには加賀周辺の地が欲しいです!』



『加賀ときたか…よかろう、そなたが帰るまでは加賀の地は手をつけまい、おのれの力で存分に切り取るが良い!』


(やったぜ!言質とれたよー!)



『ありがたき幸せ!』


そして、夕げの時刻が近づいて来た。


(寿司居酒屋だいだいの寿司食いてえ)


家族で時折通った馴染みの店である。


(ちょっと炊事場へ行ってみるか)


この時代の寿司は『なれずし』という熟成されたものばかりで、僕はどうしても江戸前寿司を再現したい欲求にかられた。

だって、一月は船上暮らしやん。


調理を担当している板前の大八に声をかける。


『ちょっと隅をかりるぞ』

『利家さま!どうぞどうぞ!必要なものがあれば何でもおっしゃってください』

『それはありがたい、炊きたての米と酢、塩砂糖、出来れば新鮮な魚はあるか?』

『鯵がございます!』

『四匹ほど所望する』


オー!新鮮やん!生で食べれるやん!


『平たい桶はあるか?』

『どーぞどーぞ』



完璧


酢でしめた鯵と生の鯵で、遠慮なく江戸前寿司を作る。


途中、大八がジーーっとこちらを見ているが気にしない。


酢飯OK、ネタもOK


握っちゃうぞ!


大八がとなりにいる…え?気配消せるん?

やばいじー。



はい!完成!


『大八、食べてみるか?』

『利家さま!よろしいのですか?』

『かまわんよ』


二人でパクっもぐもぐ。。。


マジ泣きそう、うめえ。


『と、利家さま!これはなんたる美味!』

『そうであろう、そうであろう』


『こんなところで何をしている!』

耳元で囁く声…信長さまやーん!


『げほっ!の、の、信長さま!』

『利家よ、落ち着かんか。なんだこれは?また面妖なものを作りおったな?』

『あーっ!はーっ!にぎり寿司という創作料理でございます!』

『で、あるか』

パクっもぐもぐ


おいおい、毒味しよーぜ。無用心過ぎるやろ。


『利家よ!お主の才はどこまでも及ぶのか!?』

『何をおっしゃっているのかわかりません』

『この!たわけ者ー!こんなに旨いものを何故今まで隠していた!ん?』

『兵器を作ってたからです。はい』

『で、あったな』


信長は大八をにらむ

『大八よ、新鮮な魚や貝が手に入ったら、先ずはにぎり寿司にせい!』


気に入ったんかい!


というわけで遠洋への旅の前に、江戸前寿司が織田領地に広がっていった。

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