第3話 萱津の戦い

天文21年8月16日早朝、僕は信長さまと共に那古野城を出陣した。

途中、連合しているらしい織田信光と合流し、僕は信光さまの陣営とともに庄内川を越え海津へと移動した。

しばらくすると、戦闘の火蓋が切られて僕は長槍を持ち、他にもいろんな暗器も仕込んで戦闘の行われている場所へ身を投じた。


(期待はずれだ)


本当に弱いんですよ。みーんな小柄なんだもの。


確か歴史上での僕は初陣で首級を一つ上げるらしいけど、二十も指揮官クラスを撃ち取ったら誰も近距離に来てくれなくなった。


(つまらん)


せやけん、邪魔な防具は外して動きやすいコスチュームに変更。遠距離から矢で狙えば死んじゃうよねー。という見た目にしてみた。


願ったり叶ったりで無数の矢が僕に飛んでくる!


サッサっと手づかみで矢をとらえると、自らの弓でバンバン応戦してみた。



僕の腕力に合った強弓なので、一発の無駄もなく敵を撃ち抜いてみた。刺さるというより爆散する様に、更に敵兵も味方も顔面が青ざめている様子が伺える。



ここは生き死にのかかった戦場である。自制心など必要ない。



とにかく多くの敵兵を殺意と敬意をもって討ち取る!その事に集中していた。



『又左とまれー!』信光さまからご指名である。


『お主、何者なのだ!独壇場ではないか!』

『申し訳ございません。初陣で緊張していたもので』

『もうよい、手柄を上げ過ぎじゃ。後方で待機しておれ!』

『御意!』


そうして、僕は余る体力をもてあましながらも、仕方なく後方へ下がるのであった。


下がると水や干し飯が与えられ、ちょっと一息つけたのでした。



(弱いなあ、つまらんなあ。鉄砲伝来したら魔改造しまくりたいなあ)



そして、令和の僕の知る歴史とは違う流れで、戦は幕を閉じるのであった。


一言で言えば圧勝

又左の独壇場


信長さまもかなりの戦績を上げて…僕が暴れたから敵兵をこちらに寄せ付けられたこともあり。


清洲城は明け渡された。




僕は与えられた場所で仮眠をとっていた。


『又左ー!又左はおるか!』勝家さまの大声で目を覚ました。

『ははっ!こちらに!』

『信長さまがお呼びである!すぐについてこい!』


どうも、急用みたいだ。


(なんやろ?)


『信長さま!又左を連れて参りました!』

『うむ!又左よ、ちこうよれ!』

『ははっ!』


信長は興味津々な目付きで、僕のことを見回す。


『そなたの此度の働き天晴れであったぞ!敵将首級200、打ち取った兵は数えられなんだ。よって褒美としてこの朱槍を褒美としよう。刀も業物を用意するので、楽しみに待っておれ、報償金はうーん、存外な額になるのぉ。しばし待たれよ!尚、近くそなたの元服の義を吉日を選び行うこととする!よいな。』


『ははっ!ありがたき幸せにございます!これからも信長さまのために存分に働く所存でございます!』


『うむ!そなたの功績が存外に際立ち過ぎておるゆえ、おって更なる沙汰を下すであろう!下がって身体を休めよ』

『ははっー!』



何日間か普段の暮らしをしていると、勝家さまが馬を連れて来た。


『勝家殿、これは素晴らしい馬ですね!』

『ほぅ、又左にもこの馬の良さがわかるか』


(父さんとクレインで馬上訓練したなあ)


僕は懐かしい家族のことを思い出す。


『又左!驚くなよ!この名馬は信長さまからそなたへの褒美じゃ!』


『ふぁ!僕は小姓ですよ!流石にそれは無理がありませんか?』

『又左が小姓だと?馬鹿め!今日からお主は馬大将じゃ!ガハハハハハ‼️』


(それって偉いんかや?ようわからんて)


『私が馬大将ですと!なんともったいない!元服もまだなのですよ!』


『そうじゃの、これはまだ内密じゃが、決まったことである。元服の義は来週執り行われるぞ!烏帽子親は信長さまが直々にされるそうじゃ』


(マジか~)


『なんと、恐れ多いい』

『なに!そなたのこれからを見込んでのことであろう。日々鍛練に励めよ!』

『ははっ!』


そうして、勝家さまは馬を連れて帰っていった。


翌週、清洲城内において元服の義が執り行われた。


又左は、前田又左衛門利家になった。



よしよし、金沢に帰れるように頑張るぞ!


『利家よ、少しわしと話をせぬか』突然の信長からの申し出であった。

『ははっ!ありがたき幸せ』


『利家よ、初陣はいかがであったか?』

『信長さま、まったく手応えのある武士がおらず、とても退屈でした』

『末恐ろしい男よの』

『これも、今まで数々の武術を教えてくださった師匠たちのお陰でございます』

『で、あるか。そなたはこれからの戦場でどのように、戦う所存か?遠慮なく聞かせよ』

『ははっ!それでは、先ずは種子島に伝来している火縄銃を、改良して連発できるようにします。その銃の先端に銃剣をつけ、弾丸が切れたら白兵戦にも用いられるようにします。

なお、蒸気を用いた車を作成し大筒を乗せ、城攻めに使います。

あとは、そうですね。金属の楯と鎧で重装歩兵隊も欲しいですね。それらを用いるために道の整備は、絶対に欠かせません。あと…』

『待て待て利家!意味がわからん!』

『ですよねー。研究所を頂ければ実物をお見せすることはできるでしょう』

『これは面妖な…必ず役に立つのじゃろうな?』

『きっと信長さまのめんめが飛び出すとおもいますよ』

『わしの目が飛び出すほどのものか、よかろう金銭に目処はつけぬ!期間はそうじゃのう2年あれば足りるか?』

『材料である鉄鋼、鍛冶師、花火職人、そしてベースモデルになる種子島があれば大丈夫です!』

『戦にも呼ぶからの、研究所とやらに籠りすぎぬように厳命する』

『ははっ!』


こうして、自制心をとっぱずした僕はまんまと研究所所長兼馬大将になりました。



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