突破 と 逆張り という競争戦略

大袈裟かもしれないが、

民主主義である限り

ライバルがいない業界や地域は

ほぼ存在しないだろう。


独占事業と言われた電気事業ですら

2016年からの低圧分野の規制撤廃

による小売全面自由化により、

電力市場が開放され、ライバルが

登場する時代である。


従って、いわゆる競争戦略は

好むと好まざるとに関わらず、

企業活動には必須の取り組みだ。


達社長と建築部長。

次回の営業会議を前に


ライバル他社を分析し、

競争戦略を考えてみることにした。


とはいえ、

大切にしたいキーワードは

「戦わずして勝つ」である。


わが社にとって最大のライバルは

隣町に本社を構える県内最大手の

建設会社 ○○社である。


大型ビルから、商業施設、住宅まで

幅広く事業を展開し、豊富な実績に

裏打ちされた、多様な人脈も、

中々真似できない老舗企業である。


「分かっていたことですが、

調べれば、調べるほど

敵わないなあと思っちゃいますね」


税理士の所長先生に準備頂いた資料や

企業情報等を見ながら、建築部長は

ため息混じりに、そう呟いた。


税理士の所長先生は、

笑いながら、

「また、理屈だと言われそうですが」

やや謙遜ぎみに、話し始めた。


「弱者の戦略の要諦は2つ」

「突破するか逆張りで行くかです」


突破とは、ある事に集中する事で

突き抜けていくやり方である。


一方、逆張りとは、

常識だと考えられた事の逆を行く

戦略である。


「先生、理屈だなんて思ってません」

「建設業は、特殊なんだって

考えていたら、一生○○建設には

敵わないですから」


なぜか、法人営業セミナー以来

謙虚に自社を観るようになった、

建築部長の言葉が嬉しかった。


「先ずは突破、つまりどこで

私達は突き抜けるかを考えてみよう」


達社長

○○建設会社のパンフレットを

めくりながら、そう問いかけた。


「建設実績では、もう全く

勝負にならないですよね」


そう言う建築部長だが、

表情はどこか落ち着いた感じだ。


「何か勝算がありそうですね」

税理士の所長先生である。


「○○薬品さんとのお取引で

培った、安全管理のノウハウを

全面に出してはいかがでしょうか」


「なるほど、工場は無論、

倉庫建築でも生かせそうですね」

税理士の所長先生。


そうなのだ。

大都市圏に近い地域ゆえ、

近年、物流倉庫等が増えてきて

いるのだ。


勿論、これで全ての建設ニーズを

カバーできる訳ではないだろう。


しかし、

「何でもあるは何もない」

食品工場建設のブランディングで

成功している、社長の言葉を信じたい。


達社長は、そう考えている。


「わが社には、安全管理の

資格者も複数いますから」


ずっと考えていたのだろう

建築部長が自信ありげに

語ってくれる姿が、頼もしい。


「あとは、やはり

建設以外だと思います」

建築部長。


「サービスでの差別化ですね」

税理士の所長先生の言葉に、

建築部長は頷いた。


確かに、○○社は、

首都圏への進出もあり、

建築実績は大小豊富で、かつ

名前も地方企業とは思えない程

知られている。


しかし、いわゆるソフト力は、

強くない。というか、今のところ、

強化しようと言う意志を感じない。


「ま、受注残は数年分あると

言われてますから」


建築部長が言うには、

工事をこなすのに忙しくて

それどころかではないという。


「施工品質では負けません

ただ、知名度では敵わない」


「だったら、アフターは無論、

商業施設の集客や運営支援など

建設以外で勝負

してはいかがでしょうか?」


「木構造建築とも相性が

良いと思います」


「それって、ある意味、

建設業の非常識じゃないの?」


二人を見ながら、達社長は

そう呟いた。


「安全管理とサービスで差別化し、

戦わずして(指名もらい)勝つ」


「まずは、既存のお客様への

サポートで、価値を認めてもらい

それを武器にする」


先輩社長の教え

「開拓だからこそ、

緊急じゃないが重要な事に時間配分」

でいく。


「街を元気にする」

簡単じゃない。しかし、

きっとこれでビジョンが動きだす。


達社長は、そう感じていた。

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