第4話 計画は立ててからが始まり

警察での長い間、ずっとこれからを考えていた。あの一件は世間からすれば可哀想な物であったが、自殺志願者からすれば自分を再確認できるいい機会だったのではないか。


もちろんその程度で変わるような決意ではなかったわけだが、今回俺はある計画を立てることにした。何かを考えるから、周りと比べたがり、そして傷ついていた。何かを考えるから、自分の価値が低く見えた。


だからこれからは余計なことは考えず生きていけるように、大まかな人生計画をした。

これに従えば確実な生活が待っている、というものを。


そこに楽しさはないのかもしれない。喜びや嬉しさ、悲しみや苦しみも。

それでも何かを考えることより感情を失うほうがよかった。今の俺にはそれが一番楽で正しいと思えた。


早速ゴールを作った。田舎での結婚生活だった。三十歳になったら仕事をやめ、一緒に田舎へ来てくれそうな人と田舎暮らしを始めることを目標とした。相手の同意があれば自分からは特に求めない。モテないことから始まったこの騒動だが、モテなくとも結婚して最終的に幸せになれればいいのだと考えた。本当に幸せになれなくてもいい。ただこの今の自分さえ騙して明日からの原動力にすれば。


次に道を考えた。田舎暮らしには当然お金がいる。農業による自給自足を予定しているが、それにもはじめは限界があるし、何よりこればかりは確実に成功するとは限らない。だから、大手企業で高給取になって且つ出来るだけ貯蓄に回すようになろう。最終的に貯金3000万を目指して。


ならいますべきことは何か考えた。

大卒で働いて30で辞めることを考えるとかなりの大企業である。となれば学歴を安定させ、就職活動を成功させるのが懸命だ。そこで東京大学文化二類に合格し、経済学部に進学することにした。そうなれば、完璧とは言えなくともかなりの精度で今の理想が叶うと思う。


ここ数日は普通の人よりかなり濃いものだったが、これからの方がもっと濃くなりそうだ、と思いつつ俺は早速勉強を始めた。

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