チャプター 4-1 part.2 (side.紫)

 今日の真一はキラキラしている。

 校門で声をかけた──ううん、遠目に見えた時からずっと、ずっとそう思っていた。まるで初めて会った時みたい、だと。

『…………』

 初めて見る絵の具を手にする真一。その顔はとてもつらそうで息が詰まるような気持ちになる。

 ──ズキン。

 胸が痛む。

 ──ズキン。

 心が痛む。

 ──ズキン。

 泣いている。私のキラキラが。

「…………」

 私は、口下手だから絵を描く事しか出来ない。それでしか伝えられない。それ以外の方法を知らない。

 だから、ずっと見ているだけだった。遠くなった背中を。あの絵を。

『…………』

 真一の手が震えている。

「…………」

 ゆっくり自分の手元へと視線を移す。

 これで、伝えれるだろうか。何度描いても、見向きもされなかった私の絵で。

「…………」

 いや、やめておこう。その必要はない。

 だって、

『…………』

 真一はキラキラしている。あの時、以上に。

 だから、野暮な事はしなくていい。

『──よしっ!』

 ほら。やっぱり、必要なかった。

「…………」

 きっと、今の真一があんなにもキラキラしているのは、あの子のおかげ。真っ直ぐな──キラキラした瞳で真一の絵を見ていたあの子の。

「…………」

 悔しい。ライバルとして。

 だから、

「色、塗るんだ」

 私も──

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