チャプター 2-6 part.1
今朝、都ちゃんの行動があからさまにおかしくずっとその事で頭を悩ましているが、いくら考えても答えは出ない。それどころか、考えれば考える程謎は深まるばかり。まるでもがけばもがく程沈んでいく底無し沼に引きずり込まれているようだ。
「よぉ、朝からどうしたんだ?」
それが顔に出ていたのか。さっきまで雀部達と楽しそうに話していた青二がこちらへやってきた。
「……それがさ」
正直、青二に相談したところで何かが変わるとは思えないが、ダメ元で相談してみる事に。もしかしたら、何かの間違いでスピード解決するかもしれない。それに、こういう時は常識外れの考え方が役に立つだろうし──。
「なんだ、そんなことか。 てっきりお約束のお風呂で鉢合わせてきゃわわー♡ したかと思ったぜ」
しかし、事情を話したところでいつもの青二だった。もう既に役に立ちそうにないのが、あまりにもつらい……。
「気持ち悪い声を出すな……あと、ちゃんとノックをすればそんなことにはならない」
「堅物鉄仮面」
「別に感情表現は苦手じゃないだろ」
しかし、まだ諦めるのはまだ早い。いくら青二でも行動のおかしさくらいは分かってくれるはず。
「それより、どう思う?」
「どうって。 別に。 なんとも思わない」
当たり前のようにそんな事はなく、真顔で返してくる青二。今のお前の方がよっぽど鉄仮面だと言い返したくなったが、我慢した。
「いや、どう考えてもおかしいだろ」
「朝起こしに来てくれて、洗面所でタオルを渡してくれる。 なんか変か?」
「そこは、変じゃないけどさ」
「食事中にわざわざ醤油を取りに行ってくれたり、寒い季節に靴を暖めてくれたりぐらいするだろ。 ほら、何も変じゃない」
「お……おう……」
その靴を暖めるのが明らかに変なんだよ! と、ツッコむのは待たれているような気がしたので敢えてスルーするとして。何故、こいつは腕を組んで、踏ん反り返っているのか分からない。
「おっと、兄ちゃん分かってねぇようだな」
「何がだよ」
いきなり馴れ馴れしく肩を組んでくる青二。どこぞのクソピエロ先輩のようにニヤついた顔に腹が立つが、ここも我慢だ。
「いいか? 普通は、そこまでやらねぇ。 特に靴はな」
「だろうな」
「だが、そこまでするってコトは、理由は一つしかねぇ──愛されてるんだよ、新妻さんみたいにな」
唐突な青二の爆弾発言。しばしの間、開いた口が塞がらなかった。
「もしもーし、そんなに驚くコトか?」
「ああ、お前……頭、留守なのか?」
「ったく、オマエってやつは。 それは、ちゃんと頭にノックして言え」
気にするのはそこなんだな。
「ともかく、バカ言うな。 一体、どこに愛されてる要素があったんだよ」
「全部」
「は、正気か?」
「オレの長年の読書による知識から導き出された真理だ。 間違いない」
お前の長年の読書って、最近読み出した青春もののラノベだろ。しかも、めちゃくちゃ古いやつ。なのに、その自信はどこからくるのやら……。
「はぁ、お前に相談した僕の頭が留守だったよ」
「おう。 って、それオレをバカにしてないか?」
「さぁな」
都ちゃんが僕に対して変に気をつかってきたから相談したのに……余計心配になってしまった。そもそもそんな簡単に愛だの、恋だのになるとロクな事にならないと言い切れる。
でも、一理ぐらいはあるかもしれない。勿論、青二の言うような意味合いは抜きで。
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