チャプター 1-7
放課後、母さんから『今日は真っ直ぐ家に帰ってね♡』とメッセージが届いていた。しかも、ご丁寧にスタンプ付きで。だから、今日は部活に行かず家まで直帰コースだ。
「はぁ、いつなったらやめてくれるんだろうか」
息子相手に♡を付けるのも、スタンプを送るのもやめてくれと口を酸っぱくして言っているのに……。
「あれ? クロくん今日来ないの?」
下駄箱で靴を履き替えていると制服をおしゃれに着崩した女生徒に声をかけられた。彼女は同じ美術部に所属する
「ちょっと用があってね」
「ふーん、あ、ガム食べる?」
「いや、いいよ」
中学の頃から不思議に思っていたが、何故そんなにガムが好きなんだろうか。というか、なんで当たり前のように常備しているのか。よく分からない。
「そういえば、相方は?」
「あいつなら先に帰ったよ」
部活に行かない日は青二と一緒に帰るのだが、今日は『おすしマンのストラップを手に入れる!』と言い、チャイムが鳴ると同時に教室を飛び出していった。正直、予想以上の効果についニヤけそうになる。我ながら悪いやつだ。
「へぇ、珍しいね」
「まぁ、色々あってあいつも大変なんだよ」
「そっか、そっか。 じゃあ、クロくんが優しく接してあげないとね!」
グフフと、不気味な笑みを浮かべる佐渡さん。それだけで上には上がいると思い知らされた……。
「そ、それじゃあ、僕はこれで」
「うん、バイチャ〜。 あっ、そうだ。 あんまサボったらゆかりんがフキゲンになるからホドホドにね〜」
サボりじゃないし、僕が居ないくらいで紫が不機嫌になる訳がないのはさておき。やっぱり、苦手だな。金髪で、ギャルみたいな見た目といい、あの中身といい……相性が悪過ぎる。
「ん?」
昇降口を出て、正門へ向かっていると、正門付近で数人の生徒が群がり、何やら騒いでいた。とはいえ、そんなものには興味がないので、無視してさっさと通り過ぎようとした。しかし、見覚えのある小さな影が目に入り、歩がピタリと止まる。
そして、瞬時に頭の中が『なんで?』、『どうして?』と疑問でいっぱいになった。何故なら、その騒ぎの中心にいる小さな影は都ちゃんだったからだ。
「……っ!」
騒ぎの中心で困惑していた都ちゃんだったが、こちらに気づくと急いで僕の後ろへと逃げこんだ。
「えーと……どうしてここに?」
「ひぅ」
理由は分からないが、ひどく怯えており、今はまともに話せないようだ。
「君、もしかしてその子の知り合いかな?」
「はい、そうですけど」
「良かった。 その子、ずっとここでソワソワしてて迷子かなって心配してたんだよ」
うちの高校は学年毎にリボン(ネクタイ)の色が違う。今年度は、赤が一年、青が二年、緑が三年となっている。この丁寧に状況説明をしてくれた女生徒は青のリボンをしている。つまり、一つ歳上の二年生だ。
どうやら都ちゃんを心配して話しかけてくれていたみたいだ。彼女の物腰は柔らかく、都ちゃんが彼女に対して怯えているとは考えられなかった。となると、一体何に怯えているんだろうか?
「ごめんね。 私があいつらより早く来てたら良かったんだけど」
「おい、
「そうだ、俺は遠くから匂いを嗅いだだけだ。 柑橘系の爽やかな匂いがした」
「
「でもよ、
「臼井っ!」
「ん、なんだ?」
「分かったから。 今は、黙ってろ」
優しい先輩から事情を聞いていると勇ましい声を上げる男子生徒と何やら危ない発言をする男子生徒が突っかかってきた。
今の会話からすると、この優しい先輩は浅倉先輩。で、浅倉先輩が指差した二人組(ネクタイからして同じ二年)の強面で背が低い方が杵島先輩、背が高く呆けた顔をしている方が臼井先輩らしい。
さて、どう考えても都ちゃんが怯えたのは、この二人のせいか。杵島先輩は顔が怖くて荒っぽいし、臼井先輩は当たり前のように危ない発言をしていた。だから、間違いないだろう。
「みたいじゃなくて、そう言ってんのよ! あんた達みたいな不審者に話しかけられて怖がらない女はいないわ!」
「んだとぉ! 俺たちは優しく声をかけて紳士的に対応してたぞ! お前も何か言ってやれ!」
「でも、さっき黙ってろって」
「今はいいんだ!」
「なら、俺達は発展途上の女には手を出さねぇ。 紳士だからな。 あと、お前みたいな貧乳もな」
「なっ!?」
「バカっ、今はそういう事を言ってほしいんじゃない! だが、俺もお前の言い分には賛成だ。 ただ、こいつのはまな板だから魅力がないだけで貧乳とは違うし、貧乳には貧乳の良さがあるからな。 それは覚えとけ」
「くっ、あんたらぁ……ほっんとサイテーっ!!」
強く拳を握りしめた浅倉先輩の怒号が蒸気機関車の汽笛ように鳴り響く。石炭も充分に放り込まれているので、その怒りの炎の凄まじさは想像を絶する。
見たところこの三人は、ある程度顔見知りらしい。少なくともセクハラギリギリ(正確にはアウト)の発言を許せるくらいには。
しばらくの間、浅倉先輩と杵島先輩の言い合いが続く。無論、僕は口を挟む事は出来ず、自然に収まるのをただ待つしかない。
「第一あんたはいつもいつもっ!」
「うるせぇ! 胸がちぃせぇやつは器もちぃせぇってかぁ!」
そして、拳で語り合わないと解決出来ないと思う程ヒートアップした頃には都ちゃんの話は関係なくなっており、早くこの場を去りたくて仕方なかった。
「ひぅっ、ぁう」
そういえば、どうして都ちゃんはこんなにも怯えているんだろうか。最初は危ない先輩に絡まれたからだと思っていたが、今は先輩達からの注意は全く向いていない。まだ近くにいるとはいえ僕が壁になっているし、そこまで怯えなくていいんじゃ……? それにさっきから都ちゃんが怯えて僕の腕を力強く握るのは決まって、
「ほんとキモいっ!! 変態っ!!」
「やかましいっ!! 俺は自分らしくピュアに生きてるだけだっ!!」
「ひゃうんっ」
二人が怒鳴る時だ。
もしかして、怖かったのは不審な先輩達じゃなくて怒鳴り声の方なのか? もしそうだとしたら早くこの場を去るべきだ。
「都ちゃん、いこ」
「……ふえ……っ!?」
「あのー、僕達は先に帰りますね。 それじゃっ!」
慌てて都ちゃんの手を引き、早足で正門を後にした。言い合ってる二人はこちらに全く気付いてなかったが、臼井先輩の方はこっちに気付いて手を振っていた。少しにやけているのがかなり怖かった。
「大丈夫?」
「はい……もう大丈夫です」
か細い声で返事をする都ちゃん。渦中を脱したとはいえ、その様子はひどくしょんぼりしていて、まるでこっぴどく叱られた後のようだった。
「都ちゃんって怒鳴り声が苦手だったりする?」
「……すごく、苦手です……」
思った通り怒鳴り声が苦手みたいだ。だから、昨日も僕が怒鳴った時に泣いていたのか。
「そっか。 じゃあ、都ちゃんの前では怒鳴らないように気をつけるね」
例え、どんな理由があっても、だ。
「…………。 ありがとう、ございます」
曇った表情から一変、明るい笑顔を見せてくれる都ちゃん。返事に少し間があったが、気にしなくていいか。
「そういえば、どうして正門に居たの?」
「紗枝さんに……お兄さんと一緒に帰るように言われてて、それで待っていたんです」
なるほど。だから、今日は直帰するように言われてたのか。なら、それを先に言っておいてくれよ、母さん……どうせ忘れてたんだろうけど。
「なら、高校の場所は母さんから聞いたんだ」
「そう、ですね。 今朝、紗枝さんが地図を……書いてくれていたので」
都ちゃんから地図(メモ)を受け取り、目を疑った。そこに書かれていたのは大まかな道程と雑な案内で、どこからどう見ても地図と呼べる代物ではなかった。
右、上、左、真っ直ぐ二つ目の信号を右、斜め上って……格ゲーのコマンドじゃないんだから、もう少し分かりやすく書いてあげなよ。これなら幼稚園児に書かせた方がまだマシかもしれない。
「よくこれで分かったね」
「大体の道筋はイメージ出来ましたから……。 あ、あとは、道中で道を間違えてないか……尋ねるだけでバッチリ、でした」
「イメージ……出来た?」
「う、それは、その、なんと、いいますか」
「はは、すごいね」
「え」
「僕なら絶対に辿り着けないよ」
「そ、そんな……おおげさ……です……」
謙遜からか顔を伏せる都ちゃん。別に謙遜するような事じゃないのに。
あんな地図と呼べない代物で道が分かるなんて頭にスーパーコンピューターでも入っていない限り無理だ。都ちゃんの理解力のすごさが分かる。もしかすると十年に一人の天才だったりして。
「と、ところで、お兄さん」
「どうしたの?」
「この、辺りで、お手洗いを……お借りできる場所は、ありますか?」
「んー、しばらくはないかな」
「そう、ですか」
僕の返答を聞くと、急転苦悶の表情を浮かべる都ちゃん。さっきから妙にソワソワしていて、歩幅も小さいような気はしていたが……もしかして、もしかするのだろうか。
「その、結構ピンチだったりする?」
「ぅ……ん、ん……」
都ちゃんは頰を赤らめて小さく頷き、目も少し潤んでいた。その様子から大体の心情は察せるので『どうしてもっと早く言ってくれなかったの!』なんて野暮な事は言わないとして。
困ったな。家まで結構距離があるし、この辺りには緑と畑ぐらいしかない。だが、幸いと言うべきか……人目は少なく、身を隠せる茂みはいくらでもある。
しかし、いたいけな少女相手にデリカシーのない提案が出来るだろうか? 否、出来ない。となると選択肢は一つだ。
「よし。 じゃあ、乗って」
「あ、あのお兄さん……いったい……」
「ほら、早く乗って。 コンビニまで走るから」
トイレのある場所まで急いで行くしかない。とはいえ、内股になって我慢している都ちゃんが自分の足で行くのは不可能だ。つまり、僕が連れて行ってあげるしかない。
「で、でも……おんぶしてもらうなんて」
小学生にもなっておんぶしてもらうのが恥ずかしいのは分かるが、今こうしている間にもタイムリミットは迫っている。
「グズグズしてる暇はないよ。 それともお姫様抱っこのがいい?」
「ふえっ!? あ、そのぉ……んぅ……お、おんぶで、お願い、します」
少し強引だったが、素直に背に乗ってくれたので良しとする。
「それじゃあ、行くよ」
「うぅ、はい……」
ここからは時間との勝負だ。
しかし、ただがむしゃらに走るだけではいけない。都ちゃんのデリケートゾーンを刺激しないように優しく、だ。
昔、運動会でスプーンに卵を乗せて走る競技をした事がある。それと同じだ。都ちゃんに余計な刺激を与えないように細心の注意を払いつつ、タイムリミットまでにトイレへと到着しなければらない。
それは少しのミスも許されない過酷な任務。だが、僕からすればそんなの赤子の手を捻るのと変わらない。簡単に任務完了だ!
──と、信じて疑っていなかった。
しかし、現実は非情で予想の半分の距離も走れていない。言うまでもなく、僕はプレッシャーに弱かった……。
だって、しょうがないじゃないか! 運動会では卵を落としても『残念でした、また頑張ってね』ぐらいのプレッシャーしかなかった。
でも、今は違う。たった一回のミスが破滅のウォーターフォウルで、都ちゃんは泣きながら身を濯ぐ事になる。あの時とは重みがまるで違うどころの話じゃない。何の知識もない一般人が時限爆弾を停止させなければらないプレッシャーと同じと言ってもいい。僕には、あまりにも重い……。
「ふ、ぅっ」
次第に都ちゃんが肩を握る力が強くなっていく。ジワリ、ジワリと。
それはタイムリミットが迫っている事を示し、さらにプレッシャーがかかる。
まずい。このままじゃ確実にアウトだ。なら、いっそ覚悟を決め、もう少し速度を上げて。
「ひっ、ぁ、んん……っ!」
「わっ!? ご、ごめんっ!!」
「い、ぇ……だ、大丈夫……ぇす……」
つい力んでしまい、都ちゃんに余計な衝撃を与えてしまった。口では大丈夫と言っているが、明らかに大丈夫じゃない。
「本当にごめんね。 もっと優しく、気をつけるから」
都ちゃんから返事はなかった。しかし、その代わりに僕へと抱きつく力がより一層強くなった。
同じ轍を踏まぬよう細心の注意を払い、再び走り出すも、新たな試練が僕を襲った。
「はぁ、はっ……んっ……はぁ……」
「………」
「ひぅっ、うぅ……はぁ……はぁ……」
無意識なのは分かる。余程我慢するのがつらいのだろう。
しかし、しかし、しかし……それはあまりにもいけない声だよ、都ちゃんっ!! 若干、法に触れてるっ!! いや、正確にはアウトだよっ!!
「はぅっ」
「んぐっ!?」
都ちゃんの両腕が軽くチョークスリーパーをかけてくる。
走っている最中にそれは辛い以前に、お互いの体温が混ざり合うように密着してしまった。まさか境界線みたいな体が最終防衛ラインになるとは……。
やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばいよ! いくら小学生とはいえ思春期を迎えた女の子がそんなにくっついたら。
「やわらかい。 ……っ!」
即座に首を横に振り、邪念を払う。
正直、誤算だった。女の子とはいえ緊急事態だから接触はやむを得ない。それに相手は小学生だからおんぶくらい大丈夫だと甘くみていた。
まさか……こんなにも……。
「こんなにも」
ドキドキするなんて知らなかった!!
今までラブコメの主人公が女の子と接触する度に、そんなオーバーリアクションでドギマギする訳ないと思っていたが、あれは正しかった。女の子と接触した男はアドレナリンが爆発しそうなぐらいドキドキする! いや、爆発してる! ビックバンだ!
例え、それが歳下の小さな女の子であろうと。いや、歳下の小さな女の子だからこそかもしれない。父性が刺激されているからとでも言うのか、無垢な魅力が一番キくらしい。
こんな事になると分かっていたら……。
「すぅ、はぁ」
一旦、深呼吸をする。
クールになれ、僕。人間には己を律する為の自制心がある。だから、簡単にやましい気持ちに呑まれたりしない。それに心頭滅却すれば火もまた涼し。心を無にすれば余計な事に気を取られたりしない。そう、大丈夫。こういう時こそクールに。
「なっ!?」
その時、首筋にサラサラとしたものが触れる。そして、それはさらに煽るかのように二度、三度と、触れてくる。
「ま、まさか」
また触れてくるそれに全神経を集中させる。
間違いない。これは──都ちゃんの髪だ。あのしなやかでサラサラの黒髪が僕に……。
ドク、ドク、ダム、ダムと胸の鼓動が加速する。
直接、手で触れた訳じゃないのにこの至福感……あぁ、いい。すごくいい。やっぱり、君の髪は最高だったんだね。
つい涙が出そうだ。
……って、この短時間で同じ過ちを繰り返すな!
非常にまずいぞ。このままではもう戻れない領域に踏み込むのは時間の問題かもしれない。それは今後の僕達の関係においてあっちゃいけない。絶対に!
だが、どうすればいい。いくら心を無にしようとしても髪が触れている限り不可能だ。かといってそれを僕から引き離す事も出来そうにない。
……詰んだか。
「ごめん、都ちゃん」
「え?」
「僕、ダメかもしれない」
「お兄、さん?」
こんなにも欲にまみれた人間が小学生の女の子をおんぶしていいはずがない。いや、耐えられない。
所詮、僕もただの雄。可愛い女の子の魅力的な髪の前では成す術がなく、パラライズされるしかない。さっき杵島先輩が言ってたのって、こういう事だったのか……。
「あの、無理、なら……も、う降ろして、大丈夫、です、よ。 そもそも、ちゃんと、お手洗いに、行かなかった……わたしが……悪かった、んです。 だから……お兄さんに、迷惑、かけて、すみません……」
「…………」
「わ、わたしなら……へ、平気……ですから」
声が震えている。きっと、それは限界が近いからだけじゃない。こんな状況にも関わらずこの子は憂いている。僕に迷惑をかけてしまった、と。
「……ごめん、都ちゃん……」
そっと、都ちゃんを降ろす。
「え、えへへ、そ、それじゃ、わたしは……」
──パシィッン!
「へ、お、お兄さん!?」
自分で両の頰を思いっきり引っ叩き、気合いを入れる。
クールになれ、僕。今まで何の為に走ってきたんだ? 都ちゃんに
なのに……都ちゃんの甘い声、首筋に触れるサラサラの髪、髪から漂う柑橘系のシャンプー匂い、ほんのり暖かい体温、柔らかい手足、シャツを強く握る手から伝わる手汗、背中に密着しているが故に感じる感触とその他諸々の罪深さに屈した。だから、常識人ぶってそれから逃げた。
このバカ! そうじゃないだろっ! 大切な事を見失うなっ!!
「泣き言、言ってごめんね」
「お兄……さん」
僕は、何が何でもこの子をトイレに間に合わせる。例え、どんな手段を用いても、誰に何と思われようとも。
「え、あ、その」
「ここからは」
「ふぇ、へ、わ、わわっ!?」
「お姫様抱っこでいくよっ!」
「ふわぁ……ひゃ、ひゃいぃ……」
そう、初めからこうしていれば良かったんだ。
女の子を抱きかかえているのが何だ。肩にランドセルがかかっているのが何だ。恥ずかしさなんてもしを考えればお話にもならない。
それに、
「……えへ……」
僕は都ちゃんの明るい顔を見ていたい。
「はぁ……はぁ……コン、ビニ、着いたよ。 どう、歩ける?」
「ん……んぅ……」
頑張って首を縦に振る都ちゃん。だが、限界はすぐそこで余裕がないのは火を見るよりも明らかだった。
呼吸が乱れ、脇腹がズキズキと痛む。はっきり言って僕も厳しい状態だ。しかし、ここまで来て決壊させてはまさに水の泡だ。なので、もうひと頑張りする事にした。
「らっしゃーませぇー」
自動ドアをくぐり店内へ入ると店員のやる気のない声が鳴り響いた。
そうだ、コンビニのお手洗いを借りるなら店員に一声かけないと……。よし、時間をかけないように、手短に、要点だけを……。
「はぁ、はぁ……あの……」
(うわぁ、何この人、息荒っ。 てか、なんでお姫様だっこ!?)
「もう我慢出来ないんです……。 この子、トイレ……。 貸してくださいっ!」
「(が、我慢できない!? この子をトイレ……でっ!?)」
「いい、ですか?」
「て、てんちょーっ! 変態っ! 子どもをトイレに連れ込もうとする変態がぁーっ!!」
「えっ、あの、ちょっと」
「お兄さん……あ、あぁ……ぁぁ……」
「え、都ちゃん!? 都ちゃぁぁぁぁんっ!!」
悲痛な声とともにたらりと滴がこぼれ落ちる。どうやら僕は最後の最後にミスを犯してしまった。
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