第48話いよいよ高校生活です

 あれからまた四人で、参考書を買いに行ったり温室の手入れを俊介とやったりして春休みが瞬く間に過ぎていった。いよいよ明日入学式だ。俊介とふたりで温室の作業をしているときに、俊介がいった。入学式の代表挨拶を俊介がやることを。


 「すごいね~。緊張しない?」


 「まあな。でも挨拶は長くなくていいらしいからな」


 「そうなの?」


 「ああ、自分の好きなようにって言われた」


 「でもあんまり短いのもね」


 「まあ、適当にやるよ」


 「こんなところで、こんなことやってていいの?明日の練習とかしなくていいの?」


 「大体覚えたし大丈夫」


 「すごいね~」


 私は俊介が飄々としているのを見て、改めて俊介を見直した。確かに俊介は中学の時にも代表をやったけれど、今度はあの青竹高校だ。選ばれるのはすごいなあと感心したのだった。私の視線に気が付いたのか、


 「どう?見直した?」


 俊介が私を見て、にやっと笑ってきた。


 「まあね」


 私が素直に同意すると、俊介は何か言い返されるのかと思っていたらしい。反対に俊介の方が、自分で言っておきながら少し気まずそうに視線を先にそらした。

 私はその様子に思わず吹き出してしまった。


 「なんだよう」


 俊介が少し顔をしかめてきた。


 「だって自分で言っておきながら自爆してるんだもん」


 私が今度は笑いながらそういうと、俊介も苦笑いを浮かべた。


 


 「じゃあ明日な」


 「うん、明日ね。代表頑張って」


 明日の事もあるので、早めに作業を切り上げて俊介は帰っていった。帰るときに、私が今までの作業のお礼も兼ねて、明日の代表に向けて激励の言葉をかけてあげると、俊介は嬉しそうに笑顔を私に向けた。その時になぜか私の心がきゅんとした。

 



 高校の入学式は、いいお天気になった。朝から太陽がさんさんと輝いている。雲一つない。真新しい制服を着ると、背筋がしゃきっと伸びる気がした。

 父は会社があるため入学式には出ることが出来ないので、朝からミニ撮影会をした。玄関先で、私のひとり撮影会だ。


 「かわいいね。ことちゃんこっち向いて」

 

 パチッパチッ。


 「いいね。今度はこっち向いて。そうそういいねえ」


 パチッパチッ。


 どこで覚えてきたのか、プロカメラマンも真っ青の口調で次々に写真を撮っていく。


 「「おはようございます」」


 写真を撮っているときに、ちょうど俊介と俊介のお母さんがやってきた。今日は、一緒に行く予定なのだ。

 

 「おはようございます。よかったら俊介君も一緒に撮らない?」


 「いいんですか?」


 「もちろん」


 母が俊介にそういったので、今度は俊介と一緒に撮ることになった。俊介が私の横に並んできたので、私が俊介に小声で言った。


 「お父さん、長いからごめんね。何枚も撮るんだよ」


 「いいよ」


 俊介は快く言ってくれたので安心したが、そんな心配はいらなかった。


 「お父さん、もういいの?」


 「ああ、二枚も撮ったからね。じゃあ会社行ってくるよ。ことちゃん、俊介君入学おめでとう」


 「「行ってらっしゃい」」


 「ありがとうございます。行ってらっしゃい」

 

 父は、そういって会社に行ってしまった。私は、拍子抜けした。思わず母の顔を見れば、残念そうな顔をした母がいた。俊介を見やればなぜか苦笑いしている。 

 

 「「じゃあ行きましょうか」」


 母と俊介のお母さんのふたりの促しで、私たちは高校の入学式に行くことにした。


 

 門の前では、さっそく式がはじまる前だというのに大勢の人たちが、門のところで記念写真を撮っていた。式が終わった後の方が混むので、先に撮っておこうという人達も多いのだ。


 「ことちゃん!」


 門のところでは美香ちゃんと岡本君が、それぞれお母さんと一緒に待っていてくれていた。


 「「「「おはよう」」」」


 私たちはお互いに挨拶をしあった。傍らでは、母たちもお互いに挨拶をしあっている。


 「なんだか緊張するね」


 「そうだね」


 「今日代表挨拶するんだろ。がんばれよ」


 「おう」


 私たちは、母たちと別れて受付に向かっていった。受付の前には、クラスが書かれた紙が貼ってあった。私たちはドキドキしながら、紙に目をやった。


 「美香ちゃん、同じクラスだ!よかった!」


 「ほんと?やったね」


 「俊介俺たち同じクラスだ」


 「そうか」


 私と美香ちゃん、俊介と岡本君はそれぞれ同じクラスになった。私はほっとした。同じ中学からは、この四人しかいない。誰か一人でも一緒のクラスだったらいいなと思っていたが、まさか美香ちゃんと同じクラスだなんて、天にも昇る気持ちだ。すごくほっとした。美香ちゃんも同じだったらしく、私に嬉しそうな顔を見せてくれた。


 

 まず教室に行ってから、クラスごとに体育館に向かった。入学式では校長先生や来賓の挨拶を聞いているうちに、この青竹高校に行くという実感がふつふつとわいてきた。

 俊介は、代表の挨拶を堂々と挨拶をこなしていた。それを見た私は、なぜか誇らしくなった。


 入学式を終えた私たちは、やはりというべきか長蛇の列に並んで、門のところで写真を撮った。今日まだ具合がよくないおばあちゃんに見せるためだ。おばあちゃんは、入学式に行けないことをすごく残念がっていた。


 私たちが写真を撮っているときに、なぜか待っているギャラリーからものすごく注目を集めていた。代表の挨拶をした俊介は、もうちょっとした有名人の様で、周りからずいぶん視線を浴びている。特に女子から。


 「ことちゃん、葉ヶ井君もう有名人だね」


 美香ちゃんの言葉に少しだけ胸がチクンとした私がいた。


 


 


 

 

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