第45話お昼です

 私たちは、お昼を食べるべく書店から近いバーガー屋さんに向かった。お昼前だったおかげで席が空いていた。私たちは席の椅子に教科書を置いて、注文をしに行った。私たちの前に2、3人ほど順番を待っている。

 私がおもむろにチラシを広げて、俊介を除く二人に見せた。


 「どれにする?」


 「どれどれ?」


 俊介が私たちが見ているところに割り込んできた。


 「もう~!」


 私がみんなを代表して文句を言ってやった。俊介は私の文句を聞き流して反対に聞いてきた。


 「これか? 期間限定って」

 

 「そうそう、これ。おいしそうだよね」


 気が付けば私は、この期間限定のバーガーについて熱く語ってしまっていた。結局私の熱い思いに打たれたのか、皆期間限定バーガーを選んでいた。飲み物はそれぞれ思い思いのものを注文した。私は飲み物についてはあまりこだわりがないのだ。私が選んだのは、もちろんアイスティーだが。

 

 「おいしい!」


 私は席についてすぐバーガーにかじりつく。思わず声が出た。


 「ほんとおいしいね」


 美香ちゃんも私を見て言ってきた。おいしかったようで顔が緩んでいる。私たちは黙々とバーガーを食べた。食べ終わり、飲み物を飲んでいた時だ。


 「昨日の雷すごかったね」


 「ほんと、うちの近くに落ちた見たいだった。すごい音したよね。ことちゃんも聞いたでしょ?」


 岡本君が不意に言ってきた。美香ちゃんもそう思ったようで、私に話を振ってきた。


 「ブッ____!」


 「げっほ、げっほ、げっほ」


 思い切り俊介が飲んでいたコーヒーを吹き出した。席の前に座っている私にだ。私も飲み物がむせてしまった。

 

 「ことちゃん大丈夫?」


 「ぼく、何か言った?」


 俊介が急に吹き出したのを見て、美香ちゃんは私を心配してくれた。岡本君は、どうして俊介が急に吹き出したのか訳が分からず慌てていた。私は、むせてしまいそれどころではなかった。

 やっとむせが収まった私に、美香ちゃんがいってくれた。


 「葉ヶ井君が急に吹き出すから~。ことちゃんびっくりしたよね」


 私は雷という言葉にびっくりしてむせたのだが、美香ちゃんは俊介が吹き出して私がびっくりしたと思っている。


 「笹竹さん、むせ大丈夫? 顔が赤いけど、まだのどが変?」


 「ううん、もう何ともない」

 

 岡本君も私がなににびっくりしてむせたのかわかっていないようで、少し安心した。そのおかげで顔のほてりも収まってきた。

 俊介は、黙々とテーブルを拭いている。私がちらっと俊介を見ると、俊介も私の視線を感じたのかこちらをむいた。しかし私と目が合うと、すぐに視線をそらした。私も慌てて別なほうを見た。

 まさかそんな様子を美香ちゃんによく見られていたとは思いもしなかった。


 私が落ち着いたところで、みんな店を出た。バス停に向かう。途中書店の前を通ったが、まだ買いに来た人達でにぎやかだった。

 バス停についてバスを待っている間に私は、美香ちゃんに聞いてみることにした。


 「参考書何買う?」


 「翔也君が使った参考書聞いてあるの。よかったらことちゃんに教えてあげる?」


 「うん、お願い!」


 「でもさ~。それってあの超難関大学いった先輩が使ってたやつだろう?」


 美香ちゃんと私が話しているところに俊介が割り込んできた。私はむっとしたが、確かに俊介の言う事にも一理ある。というか十理ぐらいあるかもしれない。そんな頭のいい人が使っていた参考書を、私が使いこなせるとはとても思えない。まあ頭のいい美香ちゃんなら話は別だが。私がうんうんと考え込んでいると、ひとり考え込んでいた姿を見た岡本君が私に言ってきた。


 「はじめは、教科書会社が出している教科書に沿った参考書がいいかもね。特に数学なんかは」


 「確かに~。さすが岡本君!」


 「そこまで感心される事じゃあないよ」


 私は、岡本君の的を得たアドバイスに感心した。尊敬のまなざしで岡本君を見ると、岡本君も私のよいしょにまんざらでもないようだった。


 「誰でも思いつくんじゃねえ。そんな単純なこと思いつかないのはことだけだって」


 私と岡本君のやり取りを黙って見ていた俊介が横やりを入れてきた。


 「さっき葉ヶ井君がいったことに、もうちょっとアドバイス的なものを入れてあげたら、葉ヶ井君の株も上がったのに残念だったわね」


 美香ちゃんが小憎らしいことを言った俊介にそういった。俊介はふんといった態度を見せたが、ちらっと私を見た。私は美香ちゃんが言ってくれたことで溜飲が下がって、俊介を嘲笑ってやった。


 「俊介って、意地悪だもんしょうがないよ。まあ私は大人だから、大目に見てあげるけど」


 「どこが大人なんだよ」


 俊介の言葉は、どう見ても負け犬の遠吠えだった。


 私たちは、それからも高校生活についてあれこれ言い合ってお互い帰路についたのだった。


 

 


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