第19話夏祭りで何食べる?

 四人でお参りをした後、どの店に行くか話し合うことにした。


 「どこに行こうか」


 やはりというべきか岡本君がこの場も仕切ってくれるらしい。


 「ことちゃんはまずりんご飴?」


 「いいねえ!」


 私が美香ちゃんのりんご飴といったのを聞いて、激しく同意したのを見た岡本君が笑いながら次は?と聞いてきた。私が何か言おうとした時だ。俊介が言ってきた。


 「やっぱ金魚すくいでしょ」


 私は金魚すくいにも同意しそうになったが、俊介の提案だったので、思いっきり無視してやった。俊介が私のほうを見て、なんだ賛成しないのかよという顔をしたからだ。私がそ知らぬふりをしているのを見た美香ちゃんが言ってくれた。


 「金魚すくいは後にとっておかない?金魚をもって他のを見るのも大変だし」


 「じゃあ先に食べる?」


 私が言うと、俊介が言ってきた。


 「ことは、やっぱり食べることが大好きだよな」


 俊介の言葉にムッとしたが、確かに今は少しお腹が空いている。周りから香ばしいいい匂いがしてるし今日は早くに浴衣を着てしまったので、あんまりお昼を食べられなかったのだ。


 「そうだね、今なら空いてるし先に食べようか。僕もおなかが空いてきたよ」


 「周りからいい匂いがしてくるもんね」


 またもや岡本君と美香ちゃんがフォローしてくれた。私はみんなでお店を見に行くとき、わざと俊介の横をつんと澄まして通り過ぎた。


 なに食べようかな~


 いろいろなお店からいい匂いがして、私はだんだんそちらに気をとられてしまい、気が付けば匂いのするほうへ吸い寄せられてしまった。後ろから美香ちゃんや岡本君が半分あきれた顔で、それから俊介がやっぱりなといった顔でついてきた。私はみんなの事をすっかり忘れてしまい、何を食べようかと悩みに悩んで、焼きそばやさんの前に立った。まだ早いせいか人が何人かついているだけだった。

 急いで待っている人の列に並んでひと安心した時だった。


 あっ、忘れてた~


 私は一緒に来たみんなの事をすっかり忘れていて、気が付いてあたりを見回した時だ。


 「ことちゃん、焼きそばにするの?」


 すぐ後ろから美香ちゃんの声がして、気が付けば岡本君と俊介もそばに立っていた。


 「あっごめんね。私は焼きそばがいいけど...」


 もう並んでおいて今更だけど一応そういった私に、またもや二人がフォローしてくれた。


 「いいね」


 「いいよ。おいしそうだし」


 若干一名私の決めた焼きそばに文句を言ったやつがいた。俊介だった。


 「俺、お好みのほうがよかったかも」


 「じゃあさ、焼きそばとお好み焼き二個づつ買って半分にする?」

 

 「いいね、両方食べれるもんね!」

 

 またもや岡本君のナイスアイデアに私は、一度で二度おいしいとばかりに大賛成した。


 こうして焼きそばとお好み焼きを二個づつ買って半分こすることにした。

 神社の境内横にある飲食コーナーに行った。そこには椅子とテーブルが置かれているが、まだ食事をするには少し早い時間だったせいもあり席が空いていて四人座ることができた。

 女性ということもあり、美香ちゃんと私が先にお好み焼きを箸で半分に切っていった。そして焼きそばのトレーのふたに置いてその焼きそばも半分にする。それから半分にした焼きそばの横にお好み焼きを置きなおした。

 

 「笹竹さん手慣れてるね」


 「ほんと私が切ったのより、ことちゃんが切ったのはきれいね」


 「そんなことないよ」


 一応謙遜しながらもお好み焼きのきれいな切り口にを見て、自分の出来栄えに嬉しくなった。


 「ことは、昔から食べ物に関しては手先が器用だよな」


 また気に食わないことを言ったやつがいた。まるで私の食い意地が張ってるみたいじゃないか、その通りだけど。そいつの言葉をほっておいて、きれいに切れたお好み焼きと焼きそばが入ったトレーを岡本君に差し出す。


 「ありがとう」


 岡本君が笑顔でお礼を言ってくれた。その笑顔に満足して、もう一個のトレーを私が自分のそばに寄せようとした時だ。

 俊介が、さっと私が切ったきれいな切り口のお好み焼きと焼きそばセットを自分のほうに持って行ってしまった。私はキッと俊介をにらんだが、俊介はどこ吹く風で食べ始めてしまった。

 気が付くと美香ちゃんが、自分が切ったお好み焼きと焼きそばが入ったトレーを申し訳なさそうに私に差し出してきた。


 「ごめんね」


 「ううん」


 美香ちゃんに変な気づかいをさせてしまったことを申し訳なく思いながら、私はもう一度俊介をにらんでから焼きそばとお好み焼きを食べ始めた。おいしかった。


 のどが渇いた私たちは、今度はかき氷を買った。美香ちゃんはイチゴ味、岡本君と俊介はマンゴー味、私は七種類の味がするというキャッチコピーに目を引かれ、レインボー味という奇妙な味のかき氷を買ってしまい、最後まで食べ切れなかった。氷がどんどん溶けてしまい余計不思議な味になってしまった。


 私が微妙な顔で食べているのを見ていた俊介は、大笑いしていて美香ちゃんや岡本君に怒られていた。


 ざまあみろ!


 



 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る