第2話幼馴染の葉ヶ井俊介
そして幼稚園へ通い始めたのだが、公園の仲間たちはみんな一緒の幼稚園に通うことになった。まあ近所にある幼稚園はその園一つだったのもあるが、遊ぶ場所が公園から幼稚園になっただけだった。
幼稚園は朝からたくさん遊べるとあって、大好きな場所になった。
しかし幸せな時はいつまでも続かなかった。ある朝幼稚園に行く支度をしていた時だった。
「今日から三日間は、幼稚園をお休みしましょうね」
母に言われたものの突然の事でなんだかわからず、あっけにとられた顔をしていたのを見たおばあちゃんがいった。
「琴ちゃん、もう変化しちゃったからみんなびっくりするよ。元通りになるまでおうちにいようね」
そしておばあちゃんは、私を鏡の前に連れて行ってくれた。そこには前に見たことのあるお人形のようにかわいらしい子が映っていた。鏡の中の子もなぜか不機嫌そうな顔をしている。
「ほらね琴ちゃん、いつもとお顔が違うでしょ」
「この子琴じゃないよ。琴じゃない」
私が言うと鏡の中の子も何か口を動かしている。びっくりして鏡に手を差し伸べると鏡の子も手を差し出してきた。鏡の方へ近づくとその女の子も近づいてきた。
「おんなじ幼稚園の子だ!」
女の子も口を動かしている。そしてその子も幼稚園の園服とズボンを身に着けていた。
不意にその子が胸につけている名札が目に入った。名前には『ささたけことこ』と書いてあった。びっくりしてその子に指をさすとその子も指をさしてきた。
そこで琴子の記憶がない。あとでおばあちゃんに聞くと、立ったまま気を失ったらしい。気が付いた時には、お布団の中だった。私はしばらく泣きまくっていたらしい。絶世の美女よりいつも見る平凡な顔が恋しかったようだ。小さいながらも、これじゃあみんなに会えないということを自覚して三日間おとなしくしていた。
三日ぶりに幼稚園に行くときには幼いながらもドキドキしていたが、あまりに周りの反応が普通だったので、すぐ忘れてしまいまた遊びまくった。
それから毎月三日間ほど休まなくてはいけなくなった時には、月がなくなればいいとまで思っていた。ただ幼稚園も高学年になるにつれ、特に女の子たちからいろいろ言われるようになった。
「ことちゃんは体弱いんだね」
「おかずは好き嫌いしちゃあいけないんだよ。ことちゃん好き嫌い多いんじゃないの?」
「おかしばっかり食べちゃあいけないんだよ」
今思えば自分が家で言われていることを私に言っていただけなのだが、その時の私には突き刺さるものがあってその頃は男の子とばかり遊んでいた。それが余計女の子たちからの反感を買ったのかもしれない。今思えばおませさんねと笑って済ませられるのだが、あの時にはそんなことできるはずもなく、女の子たちが苦手になってしまい、その反動でよけい男の子たちと遊んでばかりいた。
それから小学校に入っても、私の女の子苦手意識はひどくなる一方で、遊ぶのは男の子たちとばっかりだった。
それを助長させたのは、私の父親だ。
琴子の父親は一人娘の琴子を見るとかわいいかわいい!といって溺愛していた。明らかに琴子が女の子達と仲良くできていないのを誰が見てもわかるはずなのに、琴子の父親は少しも気にしていなかった。日ごろ琴子の様子をよく見ている母親が気にして、父親に相談すると『こんなかわいいことちゃん』が嫌われるはずがないといい、琴子の好きにさせてしまった。
そんな琴子だから、髪は男の子のように短くて洋服は毎日ズボンは当たり前。遠足でも男の子たちと一緒に食べ、運動会でも男の子たちと一緒にいるという、自分でも周りももう本当に女の子の認識があるのか疑問が思い浮かぶほどある意味男の子より男らしい子!になってしまったのだった。
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