第一章 第二十一話
「偵察機より入電!
「了解、誤差修正マルヨン!第二射うちかたはじめぇ!」
偵察機からの情報を元に、修正して射撃を行う。晴れ渡った空に鉄の塊が飛んでいく。
「敵砲塔旋回確認!」
「全艦に通達!“砲撃ニ注意サレタシ”!」
向こう側からも鉄の塊がとんでくる。こちら側がとばしたものよりも遥かに大きな塊が。
「面舵一杯!!」
ギリギリのところで回避する。
「命中弾なし!」
副長が声をあげる。
「了解、取舵一杯!そのまま、敵艦隊に向かって航路をとれ!」
現在、敵艦隊との位置関係はT字有理である。このまま進めば衝突するが、そんなことは言ってられない。日本側の主砲は最大で20.3㎝単装砲なので、接近しなければ彼らの装甲を抜くことは難しい。彼らのように大型砲塔を積んでいれば良いのだが、あくまで国防軍なので、自衛の最低限しかつめないのである。
「観測機より入電!敵艦に命中!されど、損傷軽微!第三射の要を認める!」
やはり、この距離ではまだ弾かれるか……
「主砲砲撃準備!!うちかたはじめぇええ!」
もう限界だ、といわんばかりの音をたててむらさめが火を噴く。
「ドイツ艦隊より入電!読み上げます!“Defeat an enemy submarine!
おお!これでドイツ艦隊がこちらへ向かってくれる!!
「了解!我らはこのまま敵艦隊へ近づいて攻撃を続ける!!」
ドイツ艦隊との距離は現在12海里南西。彼らの射程は我々よりも長い。もうしばらくすれば攻撃に加わってくれるだろう。
「艦長!!敵艦隊まで残りマルハチです!いかがしましょうか!」
マルハチ……このまま進めば八分で衝突するという意味だ。
「マルロクまで近づき、艦隊面舵一杯!同航戦に入る!」
マルロクの距離まで近づけばさすがの20.3㎝単装砲でも装甲を簡単に抜くことができる。
「観測機より入電!!!“敵空母ヨリ敵機発艦確認!!注意サレタシ“」
「了解!二番主砲三式弾へ切り替えぇ!!一番発射用意!うちかたはじめぇ!」
空から襲い掛かる敵機、この距離だ発艦したらすぐ攻撃されてしまう。
「艦長!敵機よりミサイル確認!!!」
「三式弾斉射!対空ミサイルもうちこめぇええ!総員衝撃にそなえよ!」
次の瞬間、敵より放たれた高速の鉄の矢がむらさめに命中し、大きな爆発を起こした。
「ミサイル命中!!艦尾で火災発生!!航行速度低下!」
艦尾への命中でまだ助かった。自力航行は辛うじて可能か……
「はくほう甲板に被弾!艦載機発艦不可!!!」
クソッ……大事な戦力をそがれたか……
「かがの出雲三等に!“コレヨリ航空指揮権ヲ執レ!準備完了次第発艦セヨ“と伝えてくれ」
通信使にそう言い放った。空は鉄の塊が飛び交っていてまるで地獄絵図である。弾幕で少しずつ視界が悪くなっていく。
「二番徹甲弾に切り替えぇえ!目標敵護衛艦後方機関部!」
「観測機より入電!!敵航空隊再度甲板に確認!!」
「なに?!対空戦闘急ぎ用意!!……間に合わないか」
徹甲弾に変え、艦隊攻撃に移行中に敵の二次攻撃隊が甲板にて発艦準備を始めた。徹甲弾を装填してしまったがばかりに三式弾に変えるのにはまだ時間を要する……
これは、直撃もいとわないか……
「観測機より入電!!!敵空母大破炎上!!!甲板使用不可!!!」
「敵空母大破炎上??」
「艦長これは……」
副長と思わず目を合わせる……
そして、艦橋上部にあるモニターが切り替わった。
「待たせたネ!!」
ドイツの貴公子が笑顔で映っていた。
「シュナイダー司令!!!」
「meのattackみていてネ!Operation Start Attack! Attack! Attack!!」
通話が切れた。その瞬間、遠くてもわかる轟音が鳴り響いた。
「38㎝連装砲……」
第二次世界大戦中にドイツが開発したビスマルク級戦艦の主砲塔である。現在のドイツ海軍はまだ38㎝連装砲を愛用しており、その中でも特にシュナイダー司令はWWⅡの兵器を愛していると噂がある。
それでも、やはり大戦中のドイツを支えた戦艦の主砲塔の改良版である。威力が凄まじい……中国海軍はなすすべなく、日本海軍への攻撃をやめ、撤退へと移行した。
「艦長、どうしましょうか……」
「ドイツ艦隊のおかげで敵空母の無効化は確認した。任務成功だ。去る者追わずさ……」
「分かりました」
「全艦に通達!“コレニテ作戦ヲ終了ス!勝利ハ我ラノ手ニ!“」
これでひとまずは勝利を収めることができた。果たして我らの手柄といえるのかは微妙なところであるが……我々の勝利とひろい意味を持たせておこう……
上部モニターを切り換えシュナイダー司令につなぐよう通信使に命令する。
「Hey!Why Japanese nevyは攻撃しないのですカ?」
「シュナイダー司令!敵空母の無効化を確認しました。これにて作戦終了です!」
「But! Enemyはまだsurviveですよ??最後までやりまショウ!」
「いえ、これ以上の追撃は無用です。協力に感謝致します」
「Oh……I see……」
「どうですか、これから日本へ寄港されては」
「提案に感謝スルヨ!But
通信が切れる。本当に多忙な人だよ。
「ドイツ艦隊に入電“貴艦ラノ協力ニ感謝スル航海ノ安全ヲ祈ル”各員ドイツ艦隊へ敬礼!!」
勝利を喜んでいる船員達に命令する。浮かれていた船員たちは、全員ドイツ艦隊の方を向き敬礼を始めた。
「ドイツ艦隊より入電“Danke!”」
シュナイダー司令とはいつかゆっくりとお話したいものだな……
そのためにも一刻もはやくこの戦いを終わらせなければならないな。
「これより帰艦する!!総員撤退用意!!!呉へ航路をとれ!180度転舵!!」
激戦を繰りひろげた海域を後にして、我らは祖国への帰路についた。祖国へ命を捧げた家族達の想いを乗せて……
そして、ありがとうむさらめ……よくぞ戦い抜いてくれた。
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