第一章 第十三話
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「まさかホーミングが飛んでくるとは……リミッター外しといてよかったわね」
私のSW-20が珍しく鳴いているわね。やはり、おじい様直伝出雲式回避術は、この子にはキツイかしらね。でも、
相変わらず元気なミサイルなこと。3……2……1……
「舞え!SW-20!!!」
SW-20はほぼ垂直に急上昇していた機体を急減続させ、竜巻を起こすかのように高度14000mのキャンパスにループを描いた。
ホーミングミサイルはその速度変化に耐えきれず、あっけなくSW-20を追い越してしまった。そして、私はホーミングミサイルの背後をとった。
「フィーネ」
空対空ミサイルを放ち、敵ホーミングミサイルを撃ち落とした。
「あぁあ……おじい様……私にはまだ早かったみたい……」
さっきの急変速による代償がいっきに体に降りかかる。幸い意識は飛んでいないが、頭痛がする。とにかく、故障機と合流しないと……
「こちら出雲……敵ホーミングミサイルの撃墜を確認。これより帰艦します」
「了解。よく無事でいてくれた。一戸小隊を現在回している。後方は守ってくれるさ。安心して帰ってこい」
「了解」
翔太クンの声……安心するな…………
「石破一等海曹。大丈夫ですか?」
「大丈夫です!三佐のお手を煩わせてしまって申し訳ありません!」
「いいのよ。気にしないで」
石破一等海曹の機体は、敵空母からの対空攻撃によって機体後方に被弾。微速でも飛べるのが幸いね。
「さぁ、帰艦するわよ。空母まではあと10分少しだから、なんとか頑張って」
「こちら、岩国第三航空隊!赤城二等海佐からの命で参りました!これより、後方警戒に当たります」
「こちら出雲。助かります」
これで、安心ね。あとは彼らに任せましょう。それにしても、腕が訛ってるわ。ここ数日出撃続きで鍛錬を怠ったのが原因ね……はぁ。またため息ついてしまったわ。幸せが逃げたわね。
先ほどの一件が嘘のように、SW-20は静かに飛んでいる。海面に反射する光が眩しい。
訓練の一環として、機体をくるりと回し、背面飛行をしてみる。こうしていると、何だか嫌なことを忘れる。私はこの子と共にこれからも戦うのね。そして、運命を共にする。
「出雲三等海佐!!どうされましたか?!やはり、先ほどの戦闘で被弾を!」
石破一等海曹が背面飛行をしている私に向かって心配してくれる。戦闘行動中にわざわざ背面飛行をするなんて事普通じゃありえないわよね。
「被弾した箇所はないわ、ただの趣味……みたいなものよ。心配してくれてありがとう」
「趣味……?……!!自分なんかに感謝の言葉なんてもったいないです!!」
「あなたは自信を持った方がいいわよ。先ほどの戦闘での仲間を庇うように被弾した姿。あれはカッコよかったわ」
「ご覧になってたんですか?!お恥ずかしい……」
「だから、自信を持って、その腕を磨きなさい。きっと優秀なパイロットになれるわ」
「ありがとうございまちゅ!あっ!」
無線越しではあるが、噛んだのはしっかりと聞こえた。意外とかわいい所あるじゃない。
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