第一話 第十二話
敵大編隊の攻撃から約30分そろそろ、第一次攻撃隊が、敵艦隊に到着する頃である。
「こちら、土佐!トラ!トラ!トラ!!カワ!カワ!カワ!」
そうか、攻撃成功か。しかし、第二次攻撃隊を求むという事は、まだ甲板の無効化には届いてないのか。
「はくほうに通達!相模三佐を出せ!」
まってましたと、いわんばかりに、はくほうの甲板で堂々と待機している
SW-21SはSW-20より大きな音を立てて飛び立っていった。さすが小松航空隊のエースだ。マッドサイエンティストパイロットという二つ名はあるものの見事な腕である。
それに続くように、かが・ひりゅう・はくほうから残りの機体が発艦する。
さて、こちらももう一仕事しなければ……
「かすが・やまみね・しらぬいに通達!貴艦は現時刻をもって現海域を離脱。航行不能のやまみねをかすが・しらぬいで台湾まで曳いて帰ってくれ。今後の判断はしらぬい艦長に任せる」
しらぬいは呉護衛艦の中でも比較的優秀である。無傷艦一隻で損傷艦二隻の護衛は少し心もとないが、作戦続行のためにはやむを得ない判断と言えるだろう。
「了解!しらぬいはこれより、やまみね及びかすが護衛の任に就きます!貴艦の航海の安全を祈る」
しらぬいとかすがが戦列を離れ航行不能になっているやまみねの前方へ回り込み縄をかけ始めた。作業をしている三隻の艦員の目に悔し涙が浮かんでいるのがここからでも分かる。一度自衛隊員になったんだ。祖国を守りたいと思うのは当たり前だろう。
でもここは戦場だ。死者をなるべく少なくして勝利をつかむことに意味がある。結果を重視すればよい第二次世界大戦中の考えはもう古い。今は勝利までのプロセスを重視する時代だ。誰一人死なせはしない。
相模機が発艦してから50分ほど経過した。
「第一次攻撃隊見えました!」
土佐達の編隊が帰ってきた。
「こちら土佐です。現在、攻撃隊の一機がエンジントラブルを起こし、編隊より外れております。該当機には出雲三等についてもらってます。尚、当該機は微速にて飛行可能であります」
「了解。着艦後再度攻撃に出る可能性がある。休息を少しとり補給後発艦する用意だけしておいてくれ」
「了解」
エンジントラブルか。被弾したのだろうか……でも、敵は第二次攻撃隊の迎撃に戦力を割くだろう。更に出雲がついているなら問題はないか……
「緊急連絡!!こちら出雲!!現在、敵ホーミングにロックオンされた!繰り返す!敵はホーミングを使用!!」
出雲から緊急回線で通達が入る。ホーミング!!やはり持っていたか。この非人道どもがッッ!
「迎撃の可否は?」
「可能です。しかし、ギリギリとなることが予想されます。このホーミング以外にこられたらもう太刀打ちできない可能性が……」
「了解。第二次攻撃隊の一小隊をそちらに回す!なんとかそれまで持ちこたえてくれ!」
心配なのは、エンジントラブルを起こしている機体だ。ロックオンされたのは出雲機だが、もう一発こられたら間違いなく堕ちるだろう。
「艦長。SW-20の
近年の戦闘機は、あまりにも速度が出すぎてパイロットの生命活動に支障をきたすほどのGをかけてしまう場合がある。それに対し、日本国防衛省はSW-20全機のフライ・バイ・ワイヤに過度ともいえるほどの制限をプログラムした。それはそうなんだけど……
「安心しろ。出雲機はフライ・バイ・ワイヤのリミッターが外れている」
「外れているって……どういうことですか?」
「あぁ。あいつは機械頼りのフライトが大嫌いだからな。フライトは航空機と自分との一対一で成立する。というのが信念なんだと。機械という第三者に頼りはしないって、大学校時代に言ってた」
まぁ、設計図上では出雲機もリミッターしっかりついてるんだけどね……極秘に外したといいますか……防衛省さんのごきげんとるためといいますか……
ともかく。そんなわけで、出雲機は桁違いの戦闘力を発揮できるというわけさ。機械を完全にのけ者にした代償は、水平飛行・速力固定・旋回変速のすべてを自分の感覚で補わなければならない。つまり、通常飛行をするだけでもかなりの技術を必要とする訳だ。だから出雲の次に優秀と言われた土佐でさえリミッターを外すなんていうマネはできないという訳である。だから、あの二機が空中でやりあったら確実に土佐が負けるんだよ。つまり、大学校海上・航空科の航空部門主席と次席の間にはそれほどの差があるというわけだ。
え?お前はどうなんだって??僕は、海上・航空科で航空部門以外主席ですが何か?(赤城翔太 航空操縦赤点+航空部門ビリ)
そうそう。噂によればSW-21Sもリミッター外れてるって聞いたことがあるような……
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