第一話 第十一話


 台湾を出て二時間が経過した。そろそろ、敵との交戦海域だ。

「偵察機より入電!敵艦隊を発見!」

「了解!土佐!頼んだ!」

「あぁ!!土佐機発艦します!」

 土佐が勢いよくかがから飛び出した。それに続くように、出雲や他の機体も飛び出す。

 銀の翼をはためかせ空を行く。どの時代も、航空機が飛びだす瞬間はかっこいいものである。黄色と青のラインが少しずつ速度を上げる。負けじと他の機もついて行く。

 中国はJ-15戦闘機を配備している。性能は各国のものと大差はない。すなわち、日本独自開発のSW-20も例外ではない。しかし、パイロットの技量では確実に負けない。海上自衛隊の中でも、先鋭達が集まっている。

 中国海軍……彼らは、現在世界的に禁止されている人工衛星を使った偵察及び弾着観測を行っているという噂もある。あくまで噂だが……

 我ら自衛隊は国連採択の際に打ち上げ予定だった衛星の計画を破棄した。それと、同時に例の新型航空母艦の計画も白紙になったのだけれど。


「レーダーに機影あり!これは……20……いえ!50を超えています!!」

「50だと?!」

 中国空母に50もJ-15を配備?そんな馬鹿なことが……そうか。マニラか……

 現在航行中のルソン島にはマニラという大きな都市がある。IT産業に力を入れており、街全体をIoT化させた世界で初めての都市である。人間は機械によって統制され、世界のどの都市よりも合理的に動く都市。そんなあまりにも行き過ぎた環境から、世界では“人のいない街”と揶揄されている。

 そのマニラだが、IT産業大国の中国と提携を結ぶことをフィリピン政府に進言したが、実現はせず。結果、フィリピン共和国から独立し、マニラ人民共和国を建国。国連には認められたが、フィリピン政府との仲は悪いままである。

 話を戻そう。そのマニラは中国と大きな関係を持っている。つまり、軍隊を持たないマニラの飛行場はいわば中国の占領下という訳である。そこから、空母護衛の為に飛ばしてきたのだろう……まったく、厄介だ。

「各艦に通達!対空戦闘用意!発砲を許可する!繰り返す発砲を許可する!」

 さてと、これで完全に日中戦争の幕開けという訳か。あくまで自衛の為の攻撃である。我らの母港を狙った代償はきっちりと返してもらう!

「主砲一番二番!三式弾斉射用意!目標敵航空大編隊!うてぇえええ!」

「了解!主砲一番二番うちーかたはじめ!」

 むらさめの初弾を皮切りに、次々と砲弾が宙を舞う。敵大編隊は分裂し、高度を上げた。

「誤差修正ヒトマル。第二射うてぇえええええ~!」

 岩波砲術長の声が艦橋に響く。

「敵大編隊急降下してきます!」

「なんだと、このご時世に急降下爆撃を仕掛けようというのか?!衝撃に備えろぉおお!」

 ありえない。戦闘機に急降下爆撃など。急降下爆撃というより、急降下ミサイルと表現するべきだろうか。これも、鯖江条約の中の一つで、各国の誘導ミサイルの破棄という規定による影響か。ホーミングのシステム暴走により、誤って居住地に落ちてしまうというなんとも悲しい事件が旧ソ連で起きた。万が一を考えて世界で無くそうという意見によるものだ。なんともそれを提案したのがロシアという点だけが納得いかないが……

 だから、俺らも誘導弾で敵航空機を撃墜できないという訳である。

「被害状況は?!」

「こちら、かすが……後部に火災発生対地・対艦ミサイル使用不可!繰り返す対地・対艦ミサイル使用不可!!!」

 かすがの射出口がやられたか。クソが……

「こちら、やまみね!機関部に被弾!航行不能!!」

 やまみねが航行不能?!これはよわったな……やまみねは佐世保の護衛艦で、かすが型護衛艦の三番艦である。かすがと同様に後部に対地・対艦ミサイルを備えている。今回の攻撃のかなめでもあった。

 その後も続々と被害状況の入電が入る。幸い、かすが・やまみね以外は目立った損傷はなかった。

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