第一章 第九話

「さて、それでは行きましょうか」

 青年の後を俺たちはついて行く。道中無言というのもあれなので少し疑問に思っていたことを聞いてみる。

「あのつまらない事なのですが、質問してもよろしいですか?」

 青年はニコッと微笑みどうぞと告げる。

「台湾護衛軍は金銭的に余裕がなくて、軍事力強化に苦戦しているという事を噂で聞いたのですが、これは一体」

「なるほど、噂で、ですか」

 マズイことを聞いてしまったのだろうか。

「お気に障ってしまいましたか?」

「いえ、そんなことはありません。その噂は本当ですよ」

 噂は本当?なら何故こんな大規模な軍港が?

「まぁ、それも何年も前の話ですが。話すと少し長くなりますがそれでも良いですか?」

 これは、一国の自衛隊の上官としては例え長くなったとしても、聞いておかなければならないだろう。

「お願いします」

「では。確かにおっしゃる通り、私たち台湾というものはアメリカに、日本と共に反共の防壁として使われ、その後は放置され、貧しい国になってしまいました。しかし、なんとかして中国本土の奪還を!と、国民が声を上げ始めました。そこで、7年前。台湾政府は東南アジア・オセアニア諸国との貿易ルートが増大しました。そうです、東京オリンピック決定。そして、帝国側の攻撃再開。その貿易ルートを使って、莫大な利益を上げ、国の経済は大きく成長しました。今更いうのもなんですが、中華人民共和国が帝国サイドにつくことを政府は知っていました。台湾領海を東南アジア方面へ移動する中華人民共和国海軍の大艦隊を何度も目撃しましたから。このままでは、帝国側と結託した中華人民共和国が台湾政府を倒しにくるのも時間の問題だ、と考えたわけです。そこで、軍事費の大幅増大を行い、急速に護衛軍が発展した。ということです。もっと早く、彼らの動きを日本に伝えられたらよかったなと後悔するばかりです」

 なるほど。中国が帝国側と組んだのは、単に社会主義の発展というだけじゃなく、中国統一という目的もあった訳か。

「話していただきありがとうございます。そうですか、やはり台湾にも危機が迫っていたわけですね」

「日本国の皆さんと協力できただけで、その不安も少しは解消しましたね。国民も日本がバックについてくれる!と大喜びしております。と、話していたらついてしまいましたね」

 そういって俺たちが到着したのは、台湾護衛軍軍事倉庫。倉庫といってもドッグに近い感じがする。ふと目線を港に移すと、そこに停泊しているのはまさかの護衛空母だった。

「この船は一体?」

 台湾政府が護衛空母を持っている情報は一切なかった。

「あぁ、これは護衛空母宋休です。中国空母に対抗するために建造されました。昔の軽空母クラスなのでそこまで大きな戦力ではありませんが」

 軽空母クラスか。そうはいってもこの時代護衛空母は大きな戦力だ。いやはや、ほんとに驚いたものだ。

「さて、それではこの倉庫のものは自由に持って行ってください。弾薬は奥にクレーンと共にあります。私は国防会議がありますので、これにて失礼します。ご武運を!」

「ありがとうございました!貴官の協力に感謝します!」

 俺たちは敬礼を交わした。


「出雲、航空機の弾薬の補給指示を」

「了解」

 倉庫の奥の方にSW-20に搭載できる弾薬が沢山あった。ありがたくつかわせてもらうことにしよう。鎮守府が燃えた影響で呉の物資が使い物にならなくなったので補給が十分にできなかった。この資材が本当にありがたい。

「それでは私は整備に戻ります」

「あぁ、ありがとう」

 尾張が自分の船へと戻っていった。やはり一般の兵士とは違う。自分の船は自分で確かめる。軍人の鑑だ。

 そうして、着々と補給が進んでいるのを確認して俺はむらさめに戻った。

 あれ?土佐はどこ行った?まぁいいか。

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