第一章 第七話

「さてと、副長いけますか?」

「いつでも」

 艦隊一行は宮古島沖海上での合流を終え、台湾へ向けて再出発を切ろうとしていた。

「両舷前進微速~~!第二警戒序列!」

「了解!前進微速~」

 まずは、艦隊でのスピードを合わせる。

「艦長、各艦より機関再始動の通達揃いました」

「了解!それでは、第三戦速よーそろー!目標台湾!」

 むらさめが一気に加速する。海を行くとはまさにこの事だ。太陽が海面に反射し、ギラギラと輝いていた。


 同日 ヒトヨンマルマル 台湾沖

 艦隊は特に戦いの火を交える事無くもうまもなく台湾へ到着する。

 そして、もうまもなく政府が緊急会見を開く。それで、ようやく国民にこの件が伝えられる。

「台湾港まで残り1海里です!」

「了解!第一航行序列!!右舷30°ヨーソロー」

「右舷30°ヨーソロー」

 今井の操縦桿にグッと力が入る。

「この後は、台湾海軍の船が先導してくれるので、それに付いて行ってくれ」

「了解です」

 ひとまずこれで落ち着けるというものだ。

 台湾での停泊は夜明けまで。十分な時間がある。補給物資もしっかりと用意してくれているみたいだ。

 第二次世界大戦後は反共の防壁として共に役割を果たした国だ。日中平和友好条約によって国交は断絶されても、裏での信用は厚い。

 港の様子が目視でもよくわかる程度まで近づいた。

「これは見事な港ですな」

 山道が思わず声を零す。

「まったくですなぁ。台湾海軍といえば資金難というイメージがあったのですが、これは世界でも数えるほどの軍港ではないでしょうか?」

 俺も同じように驚く。台湾海軍は、中国からの独立の際から資金力に乏しく、海軍に予算が回りきっていないという情報を耳にしていたからだ。しかし、予想とは裏腹に、立派な護衛艦も停泊していて、大型空母の停泊も可能な程の大規模なものである。これは空母を三隻運用する我連合艦隊としては非常に心強い。

「台湾船より入電!”ようこそ台湾へ、第三区域へどうぞ”」

 本当にすごいものだ。三つの区域に分けて、緊急時に速やかに出港できる航路が形成されている。これなら、出撃速度も三倍のスピードで行えるというものか。

「了解!協力に感謝する、と送ってくれ」

 陸では日本国旗を掲げた台湾の人々が見られる。やはり、他国の人たちに歓迎されるというのはうれしいものである。航海中緊張しっぱなしだったが、一気に緊張がほぐれる。

 むらさめは、台湾籍のタグボートに押されて接岸した。

「各艦ご苦労!これより補給に入る!山道むらさめ副長の指示に従って作業を進めてくれ」

 船を山道に任せ、俺は台湾当局へと向かう。


「なぁ、何で俺がいかないといかないんだ?」

 そう言って面倒くさそうに俺の横にいるのが、ビビりの土佐。

「ほんとに、あなたって人は。だから航空戦でも気迫の攻めが出来ないのよ」

 と、土佐とは逆サイドにいるのが鬼の出雲。

「しかも、どうしてコイツと一緒なんだよ!!」

 はいはい。わかったわかった。犬猿の仲なのはよ~く分かったからそろそろ腕を開放してほしいですね土佐さん?

「仕方ない。君たちはこの重要な役目をし~っかりと果たすしかないのだよ?そうでしょ?赤城Jr.」

「だから、その呼び方をやめろぉ!」

 西の暴君も護衛として同行。

そして、少し歩いたところに台湾総統から指定された台湾護衛軍の施設があった。

「立派な建物だなぁ」

 台湾の成長ぶりには驚かされるばかりである。

 建物の前まで来たところで、護衛軍の参謀長をしているという青年から声をかけられた。

「日本語で対応させていただきますのでお気軽にどうぞ!日本海上自衛隊の皆さま!ようこそ台湾へ!さぁ、総統がお待ちですどうぞついてきてください!」

「日本語お上手ですね!ありがとうございます!軍港までお貸しいただき、感謝の限りです」

 青年はニコッと微笑んだ。感じの良い青年だ。

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