第五話

 出雲と土佐。決して旧友を残したわけではない。

「土佐君お久しぶり」

「和桜ちゃん~お久しぶり~」

 土佐という男も一見すると真面目な軍人だが、裏はどこにでもいる大学生のように頭の中は真っピンクな男である。

「ほんと、あなた、オンの時気持ち悪いわね。あなたの真面目な姿はかえって気持ち悪いだけだから、あの尾張とかいう男と同じようにしときなさいよ」

「な、な、気持ち悪いとかいうな!」

 こいつら完全に作戦中ということを忘れている……

「あの~少しよろしいかい?このメンツでまた集まれたことは大変うれしく思うのだけれど、一応作戦中で、一応艦隊の司令官という立場なので……」

「あなたも、ずいぶん偉くなったものね。まったく。二等海佐だなんて。あなたは訓練兵で十分よ」

 フンっと、和桜が腕を組み、肩にかけている軍服をマントのように扱う。その動作の隙間から見える、軍服の第一級賞詞が眩しい。

「な?翔太。コイツむかつくだろ?」

 寄ってくるな暑苦しい。

「とにかくだ。出雲は知っていると思うが、この基地にどこかの外部勢力から物資が届いている可能性がある。気は抜かないでほしい」

「分かってるわよ」

 出雲は自分も戦闘機で出撃するとだけあって自信満々。

「……ん?」(満面の笑み)

 土佐は、今の発言に理解できていないらしい。まるで、板書を理解していないのに先生に褒められるために分かっているふりをしている小学生のような満面の笑顔だ。その笑顔に100万ドルかけてあげよう。

「ちょちょ……それってまずくないか?!」

「あくまで予測だけど。可能性があるというのだけ知っておいてほしい」

「ほぉおおおお!それは、それは、ヤバイ。出撃するの怖くなってきたよ。どうするよ、最新の対空砲で撃ち落とされたら……」

「まぁ、あなたの航空操縦技術ではその程度だったってことよ。さっさと諦めなさいよ」

「なにぃ!いいよ、やるもん」

「お前らなぁ……一応作戦だから穏便にね……」

 土佐と和桜は、大学校で一、二を争っていた優秀な操縦者なのであるのは間違いないのだが、性格がちょ~っとばかりアレなので目標ではなく、お互いを撃ち落としあうという奇行をしてしまうわけで……今回ばかりはそうならないことを祈るばかりである。え?俺、いやだなぁ~航空機なんか操ったことないですよ?(赤城翔太 大学校時代 航空操縦 落単)


 そして、補給が完了した。わざわざ赴いてくれた島民の方々に艦隊の代表として、挨拶に伺った。帝国側からの支配に日々怯えている親戚や友人がレイテ島には沢山いるという。さらに、幸運なことに、帝国海軍の基地周辺は一般島民の立ち入りが強く規制されているの、本土へ直接砲撃を行っても、島民への被害は無いとのありがたい情報を得ることができた。これで躊躇なく砲撃をすることが出来る。今回の作戦にあたり、日本政府はもちろんのことながら、大日本帝国を認めず、テロ組織として扱うことを決定している、国際連合の攻撃承認も頂いている。

 いよいよ、最終決戦。なんとしても叩く。まだ決まったわけではないが、最悪完全に叩けなかったとしても、裏の糸を見つける。俺たちが出来るのはそこまでだ。後は国のお偉いさんに任せるしかない。

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