第三話

 葛城の艦載機、帝国海軍時代では、烈風に彩雲、そして、流星……

 今回飛来するのはおそらく流星。

 非常に強力な艦上攻撃機である。

「艦長!哨戒機全機発艦いたしました!」

 現代の技術をもってすれば、第二次世界大戦中の脅威だって、排除することができる。

「了解!全機、敵機の襲来に備えよ!」

 現代の最新技術対第二次世界大戦中の最新技術。どこまで差が表れるのか、楽しみなものだな。出来れば、無損害で切り抜けたいところではあるが、それは少し欲張りすぎている、というものだろう。

 魚が、海面で飛び跳ねている。この海を血に染めたくはないものだな。

 そして、第一次航空攻撃隊が、各空母に帰還した。

 敵艦隊はほぼ、壊滅状態。

 さらに、流星が飛来したが、多少の損害は被ったものの、難なく撃破。

 晴れて、レイテまでの道のりを開いたのであった。

「皆、ご苦労!次は、いよいよ、本土攻撃だ!これで、長年の戦いは終結を迎える!最後まで気を抜くな!愛する者のため、愛する故郷のために!勝利をこの手につかもうではないか!!」

 俺の号令に、各員が奮起する。この戦いが終ったら、その時は、真の戦争とは無縁の世界を作りだすことができる。世界はこの一戦に注目をしている。当然、これで終わらせることができるのならば、平和な世界を作りだすことができる。


「全艦に通達!第一突撃航行序列!そのままレイテへ突入する!」

 レイテ……先人たちが眠る海の墓を、我々はゆかねばならない。

「艦長。少し、よろしいですか……」

 そういって、喋りかけてきたのは、今井達郎いまい たつろう一尉。正式階級は、一等海尉で、俺や出雲のような海佐ではなく、海尉という一つ下の役職になる。この船の航海長であり、大学校時代の直々の後輩でもある。

「レイテまでの予想時間は?」

「およそ、5時間ほどです。戦闘開始まででいえば、4時間少しかと……」

 そう答えたのは、副長の山道道真やまみち みちざね三等海佐。

「ありがとう。航海長と奥で話してくる。後をたのめるか?」

 もちろん。と山道が頷く。

 山道道真。信頼における男だ。名前の由来、菅原道真のように、聡明な男である。

「ありがとうございます」

 今井も答える。


そして二人は、奥の小さな会議室へ入った。

「例の件か……」

「はい。そうです。特務科の奴と何度計算しても、やはり、あいません……」

「やはりか。俺の読みは外れていなかったわけか。どうしたものか。これでは、この一戦ですべてを終わらせる事が出来なくなってしまうな」

 今回の作戦とは別に、俺と、今井。それに出雲と特務科の奴らで調査していたことがある。それは、敵勢力にどこかの国が軍事協力をしているのではないか、という説だ。どう考えても、東南アジアだけでは産出できない量の天然資源を抱えている。

 でも、だとしたら、どこが?

 今日の世界では、大日本帝国を国として認めない、反抗勢力として、国連で採択がなされている。更に、鯖江条約によって、日本国・韓国・中国・ロシア・アメリカ・オーストラリア・イタリア・フランス・ドイツ・ポーランド・インド・スウェーデンは軍事的協力を結んでいる。この条約によって、実質的に世界の連合軍が完成していると言っても過言ではない。

「今井。どこが黒だ」

「正確には分かりませんが、社会主義国の可能性が高いかと……大日本帝国は社会主義を掲げていますし」

 社会主義国。ロシア、中国。といったところか……それならつじつまは合う。

「なるほどな。取り敢えず、特務科に、もう少し、調べるように伝えておいてくれ。陸奥海将には俺から連絡しておく」

「了解です」

 陸奥海将は、この計画に賛同してくれている、いわば協力者なのである。

 しかし、困ったことになったものだ。これでは、東京オリンピック前に決着をつけるなんてことができなくなってしまう。

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