第二話

同日 ゼロロクヨンマル

「かがより入電!“発艦準備整いし”同じくひりゅうよりも伝令“我指示ヲ待つ”」

「了解!全艦に通達、これより作戦行動に移る、全機発艦!暁の水平線に勝利を!」

「むらさめより全艦に通達“コレヨリ作戦行動ニ移ル 全機発艦 暁ノ水平線ニ勝利ヲ!”」

 いよいよ戦いが始まる。かがとひりゅうから甲高いエンジン音と共に歓声が聞こえる。

 世紀の一戦。日本統一へ向けた最後の戦い。そして、俺の艦隊司令としての初陣。

 今回の作戦は、呉鎮守府のみではなく、途中で佐世保鎮守府と岩国航空基地からの増援がくる手はずとなっている。西日本の海上自衛隊の総力を挙げての一戦だ。何も心配することはない。しかし、だからといって慢心してはだめだ。司令として、常に最悪のケースを想定しながら、最善の指示を出さなければならない。それが司令というものだ。

 第二警戒航行序列で海原を駆け巡る呉艦隊。むらさめの前方に、きりしま、すずつき、あきしもの護衛艦三隻が、後方にかが、ひりゅうの護衛空母二隻が、さらにその後ろに、みねぐも、ゆうだち、かざばな、べんてん、かすが、しののめの護衛艦六隻の計12隻の艦隊である。さらに、偵察要員として伊456・呂209の二隻を配置。呉からは14隻の出撃である。

 現在呉鎮守府には、この14隻に加えて、護衛艦が二隻、掃海艇、巡視艇などが配属されている。

「かがより入電!爆撃機敵艦隊ヲ目視コレヨリ攻撃ニ入ル」

「了解!!」

 ついに、攻撃が始まった。爆撃機の使用は第二次世界大戦後初めてである。まだ、開発が進んでおらず、試験的に運用された、SW-20という機体。爆撃機ながら、最高速力2.1マッハを誇る。装甲も優れており、大日本帝国側の三式弾では通用しないレベルである。

「かがより続報!“敵艦隊ノ編成写真ヲ送ル”」

 便利な時代になったものだ。爆撃機が写真を撮ったら、それがここまで瞬時にとんでくるのだから。

「了解!写真をメインモニターに表示しろ!」

 むらさめの艦橋メインモニターに映し出されたのは、いかにも旧大日本帝国海軍の船ばかりであった。長門に始まり、酒匂・神風・春月・北上・鳳翔・葛城・青葉・箕面と。

 横須賀、呉から強奪した船の中でも、大破や中破していた船ばかり。この長い年月をかけて自らで修理したのであろう。いずれにしても、旧海軍の船など、最新装備にかかればどうということはない。

 しかし、旧海軍の船を沈めてしまうというのは、非常にもったいなく感じてしまう。海外では、わざわざ戦時中の船を引き揚げるとも聞いた。しかし、これは戦争だ。船に情けをかけてしまってはいけない。

「偵察機より入電!酒匂・北上・鳳翔の轟沈を確認。青葉の大破炎上も確認。しかし、葛城より艦載機が発艦された模様。注意されたし、とのことです!」

「葛城から艦載機か……厄介だな。全艦に通達!哨戒機を出せる艦は至急発艦させよ!」

 かが・ひりゅうに哨戒機を出してもらってはいるが、うちもらすなんてことがあってはいけないので、一応護衛艦からも発艦させておく。護衛艦も政府の方針で、全艦仮設カタパルトを積んでいる。2004年の海上自衛隊大規模改修の際につけられた。


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