第2話 アナタナラドウスル

「サッ、アカコサンナラドウスル?」



梅雨入り前の5月の7時。まだ暑いとは言えないこの時期に半袖のTシャツで歩きながら身ぶり手振りで事細かく今日あった出来事を説明しきったアオシがアカコさんに質問した。



「んー、私なら普通に店員に教えるかな。」

当たり障りない答えで流すアカコさん。

「俺ならそのままかな。というより何も言わなくても店員が片付ける時に気付くし。」

つい俺も答えてしまった。



「ヤッパリナー。」

そもそもその機械音ボイスで聞きづらい。

だけどめんどくさいので触れないでいたい。

「ムラタクンハドウカナ?」

MC気取りのアオシが機械音ボイスでムラタにも聞いた。



「僕なら持って追いかけてあげるよ。」

「ヤッパリナー。」

間を開けずにアオシがしゃべる。

「ムラタクンナラソウスルトオモッタヨ。」

「普通じゃない?」

ムラタは純粋な顔をしている。

「イヤイヤ、ムラタクン。ソノフツウガムズカシイノサ。」

なんとなく答えはわかってきた。



「ねぇねぇ、アオシは結局どうしたの?」

興味のない俺とアカコさんと違い、ちゃんと内容を気になっていたムラタがちゃんと答えを求めた。

「サスガ、ムラタクン。ヨクキイテクレタ。」

なかなか、さっ。と答えないアオシ。

めんどくさい。



「ヤサシイボクハ、ケイタイヲモッテニセコウセイネンヲオイカケタンダガモドッテキタンダ。:イッシュンデキエチマッタ:トカイイナガラ。」

「なんだ、普通に気付いたんだね。」

なぜだか少しつまらなそうなムラタ。



「イヤイヤ、モンダイハソコジャナイ。ヒトトシテヤサシサガアルカガモンダイナンダ。」

それにしても聴きづらい。よくムラタは話が頭に入るな。



「まぁ、キイロやアカコちゃんはシャイだからね。」

ムラタ。確かにシャイだが、それよりも俺はめんどくさい事が嫌いなだけだよ。



「アカコサンハシャーナイトシテ、キイロハタダメンドクサイダケナンダヨ。」

エスパーか。機械音ボイスめ。



「でもさ、なんかその二人って仲良しじゃないよね。」

まだ8歳のムラタ少年にはわからないらしい。

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カラオケルーム 山耳虎 @yamajitora

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