カラオケルーム
山耳虎
第1話 プロローグ
「へぇ、そこで打ち上げするんだ。」
商店街にある普通の喫茶店。
「そうなんだよ。ばばぁ共が毎回こいこいうるさくてさ。」
若い。と表現するには微妙な年齢さしかかってるであろう男女二人が周りの客とは違う空気をだしながら昼間から騒いでいる。
ここは一人で本を読んだり一人でスマホをいじったり老夫婦がゆっくり時間を過ごす商店街にある普通の喫茶店。
「でもコーチはモテモテだからその中にお気に入りがいるんじゃない?」
ビジュアルから年齢が掴めない女がニヤニヤしながら聞いた。
「いやいや、ばばあに好かれてもなんもおもわないよ 。きもちわりーし。俺、夏美ちゃん一筋だからさ。」
一見爽やかな好青年風な男が一呼吸のセリフで爽やかとは真逆な毒と甘さをだした。
そもそも:モテモテ:を否定しない時点で好青年ではない。ニセ好青年だ。
「ふーん。」と信じていない赤らんだ顔をしながら女はトイレのほうに向かった。
その姿を目でおいながら、「本当だよー。」と聞こえんばかりに手を差し出しているニセ好青年。
「ちっ。めんどくせーな。顔は可愛いんだけどなかなおちねーな。」
と、ぶつくさ言いながら手をしまう。
もはやニセでもない。
爽やかなルックスである分余計に毒があるように聞こえる。
ただのダメ男。
そして、そのしまった手ですぐさまスマホをいじる。
一人でじっとしていれば良い男なんだが。
しばらくしてトイレからでてきた女は「ごちそーさまー。またねー。」と男のいる席には寄らず青白い満面の笑顔で店をでた。
「あっ」
と、息が漏れた位の声で言いながらスマホをテーブルに置き、また手を差しのべた。さっきまで大切にいじっていたスマホをテーブルに軽く投げっぱなす位の勢いで。
すぐさま伝票をもち会計を済ませ男も店をでた。
きっと追いかけたのだろう。
ニセ好青年はあわてていたからなのかいじっていたスマホをテーブルに置いたまま。
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