4-4

 スキルの力を目の当たりにした俺は少々予定を変更することにした。

もう少しマジックガンナーとしての力を磨くことにしたのだ。

この能力は倫子を探し当てるためにも絶対に必要になると思う。

今のうちに少しでもレベルアップしておきたかった。


 でも、どうして急にスキルが発現したのだろう? 

今までも危機的な状況は何度もあったし、実際に死亡して向こうの世界へ帰っている。

前回と今回では何かが変わったのか? 

ひょっとしたら魔物の肉を食べたことが関係あるのかもしれない。

漠然とそんな気がした。

というより、他に理由が思いつかないよね。



 どうせ転移1秒後の世界に戻るのだから、死ぬまで訓練を続けてみるか。

手のひらを銃の形にしながら四谷周辺の探索を開始した。


 郵便局はだめだったけど、諦めきれずに銀行の方へ行ってみることにした。

俺はまだ大量札びらゲットの夢をあきらめていない。

ところが、駅周辺はどこもかしこも瓦礫の山と化していて、往時の繁栄は見る影もなかった。

あまりに壊滅的で、自分がどこにいるかもわからないくらいだ。

地下鉄の入口が近いから、あふれ出た魔物に押しつぶされたのかもしれないし、この場所をめがけて空爆があったのかもしれない。

銀行の中の金庫は無事かもしれないけど、瓦礫をどかせられないなら意味はないじゃないか。

だいたい金庫はバールではどうにもならないだろう。

魔弾丸マジックバレットだって歯が立たない気がする。

エルナの魔法ならなんとかなるのかな? 

次回は絶対に一緒に来てもらおう。


 煤けた街を眺めながら、しばし放心してしまった。

これが東京かよ……。

瓦礫の間に積もった土の中でススキが風に揺れている。

兵どもが夢の跡だ。


 バシュッ! バシュッ! バシュッ!


 現れた魔物を倒しながらレジを探した。

駅から遠ざかると建物はまだ健在で、火災を免れたビルもたくさんあった。

初っ端に新宿の喫茶店で襲ってきた大ネズミにも意趣返しができたぞ。

違う個体だとは思うけど、倒せたことで満足だ。


 いろいろと試してみたけど、魔弾丸は右手からも左手からも出せることがわかった。

ただし二丁拳銃のように同時に使うことはできない。

どちらかの手に装弾されたら、次のリロードまでは使う手を固定される仕様だった。

スキルのレベルが上がったら同時使いも可能かな? 


 それにしても、マジックバレットが発射される瞬間が美しい。

魔力を籠めると黄色く輝く小さな魔法陣が指先でクルクルと回りだすのだ。

念じると、その魔法陣から弾丸が発射されていた。

スキルの発動に時間はかからなくて、指さえ向ければ、すぐに撃つことができた。


バシュッ! バシュッ!


 スキルのおかげでレジを壊すのも随分と楽になったよ。

今日は12万2千円を稼いでいる。

塚本さんから受け取った金を合わせれば34万8千円だから、これで当面の生活費は確保できたな。


 初期段階だからかスキルレベルも順調に上がっていた。


レベル :2 → 4

弾数  :5発 → 6発

リロード:10秒 → 9秒

射程  :25メートル → 25メートル

威力  :12 → 14

命中補正:5% → 6%

モード :??? →???


 そろそろレベル5に上がりそうだと感じていたら、一匹の魔物を発見した。

チーターみたいで、身ごなしの早そうな奴だ。

肩甲骨と腰骨の部分が露出していてトゲの生えた鎧みたいになっている。

顔の体毛が無くて、顎の筋肉から剥き出しの牙が鋭く上下に伸びているのが見えた。

見るからに恐ろし気な魔物である。


 マジックバレットの射程は25メートルなので、ある程度近づかなくては攻撃できない。

物音を立てずに接近を試みたのだが、臭いで感づかれたのか途中で見つかってしまった。

加齢臭じゃないよね?

違うよね!?

まだ、そんな歳じゃないと思う……。


 引き付けて撃とうと思ったのだが、ジグザグ回避運動を交えた魔物の接近に誘われ、2発ほどを無駄に弾を消費してしまった。

残弾は4発だ。

次こそは引き付けてなんて考えていたら、あっという間に距離を詰められて、頭に攻撃をくらっていた。


 俺の反射神経とスキルの命中補正が上がれば、次は仕留められるかな? 

ゲームと違って、最初から強い魔物が出てくるところがリアルだ。

そんなことを考えながら俺は死んでいった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る