第2話 赤眼の魔女 回想1
ニューアーカムはボストンから車で二時間ほど北にいった場所にある小さな町だ。
町でいちばん大きな施設はニューミスカトニック大学。地域随一の蔵書量とその質を誇る図書館と最新技術を実地で学べる工学部が最近新設された有名大学である。
そして、二番目に大きいのが「ニューアーカム療養所」。診療所は大西洋の向こうからやってきた第二帝政期建築様式というごてついた装飾だらけの複数の建物から成り、二〇世紀半ばには
院長になる前の段階でドクター・タカツは男性看護士から閉鎖病棟の奥に棲む白い肉塊を紹介された。カルテどころか入所記録もなく、自分が誰だかも分からない女性患者。彼女は先天的な疾患により
ドクター・タカツはこの女性患者を見た瞬間、記録文書の一切の紛失と治療放棄という重篤な医療過誤を美談に変えて宣伝にさえ繋げる方法を思いついた。
「ラヴィニア、きみは美しい」
ドクター・タカツがそう言った瞬間、蛆のように蠢いていた肉塊の動きが一瞬止まり、髪を振り乱して汚れきった顔をあげた。
「そうだよ。きみは美しい。そしてもっと美しくなれる」
微笑むドクター。それを真似るかのようにラヴィニアは茶色く腐食した歯を剥き出し、不器用な笑みを作った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます