第33話『清掃開始』
「地球を転移させるための正確な座標の特定に時間がかかっていたけど、それも地球から来たあなたを解析すれば済みそうだわぁ。あなたの世界の言葉では『棚からぼた餅』とかいうらしいわね」
「随分とお喋りだな。お前の言っている事は一つも理解出来なかったが、お前が生きるに値しないゴミだということは十二分に理解ができた。残念だが、お前の願いが叶うことはない」
「あらぁ。地球では大した事を成し遂げる事もできなかった無能が大きくでたわねぇ。今の私は神に等しい存在、あなたごときでは私には敵わないわぁ……」
「三階と四階のゴミもお前と同じような事を言っていたぞ。もうお前の話を聞くつもりはない、死ね――バブル・ウオッシュ」
バルタの全身をキメの細かい泡が包む。
全身を泡が包みこみ酸素の供給を遮断する。
口の中から水が入り込み全身を水と泡で満たす。
皮膚呼吸も不可能な程にきめ細かい泡を全身に刷り込む。
バルタは無様に泡のなかでもがくも当然逃すわけがない。
「スクラブ」
ダイヤも削れるヤスリがバルタの全身の皮膚を削ぎ落とす。
殺意を持って放った清掃魔法の殺傷能力は、
モンスターにも通じる。
バブル・ウオッシュの泡の中から、
保健室の人体模型のように全身の皮膚を
剥がされたバルタが現れる。
バルタの端正な顔立ちも今は面影は無い。
人間は人体の34%の皮膚を失うことで死ぬ。
無論100%であれば確実に殺す事ができる。
「ぐがぁあ……
バルタは魔導書を開き魔法のような言葉をつぶやく。
血塗れの人体模型のようになっていた、
姿だったバルタが完全に元の状態にまで復元する。
服が濡れている以外は元通りだ。
「まさかぁ……、挨拶もなくいきなり殺しにくるとは思わなかったわぁ。品性のない異界人のしそうなことだわねぇ。でもまったく無駄よぉ、私は時間を巻き戻すことができるの。つまり、あなたには私を殺すことはできない。万に一つも勝ち目は無いわ。そして、今度は私の番だわぁ。絶望しながら――死になさいッ!!」
魔導書、ブック・オブ・アレイスターを広げると、
バルタの目の前に巨大なガトリング・ガンが現われる。
地球上の兵器の複製したものだろう。
けたたましい音をあげローターが回転し、
足元にはおびただしい数弾の空薬莢が積みあがる。
銃身から火炎と硝煙を噴出しながら、
無数の弾丸が俺に向けて襲いかかる。
(ガトリング・ガンの……この弾速の速さ、回避は無理か)
俺は咄嗟にスライム状の体を硬化させ、
全身を覆う球状の盾に変える。
ガトリング・ガンの砲撃を受ける。
バルタから放たれた弾丸は一発も外さず、
俺の作った球状の盾に直撃。
硬化した盾を貫通し蜂の巣にした。
「あなたのご自慢の盾も、あなたの世界の技術を複製したこのガトリング・ガンの前には紙も同然だったようね。自分の生きていた世界の技術で殺されるってどういう気持かしらぁ。まぁ、死人に口なしというやつかしらぁ?」
バルタは球状の盾の前に近づく、
球状の盾はあちこちに穴が空いている。
「あら、おかしいわねぇ。血が、流れていないわぁ……」
「残念、俺はお前の後ろだ」
バルタの背面から寄生義手を手刀の形にして、
背中を刺し貫き心臓を掴み握り潰す。
更に心臓から全身に寄生義手の粘菌を血管に流し込む。
地球出身の俺はガトリング・ガンの威力を知っている。
あくまでも映画で見た程度の知識だが、
それでも盾で防げる程度の代物でないことは理解している。
球状の盾は目くらましのためのデコイ《おとり》。
硝煙で視界が塞がっているうちに、
バルタの背後にまわり一撃をお見舞いした。
「どこが賢者だ。俺の元いた世界の武器なのだから、俺がその危険性を知らないはずが無いだろう、阿呆が」
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