第20話『広い風呂!旨い手料理!もっふる!』
「それにしても広いのじゃな。ちょっとお化け屋敷っぽいのじゃ」
「ちょっとだけほこりっぽいなの」
「ははっ。確かにあちこち蜘蛛の巣だらけだし、ほこりっぽいな。娼館の女主人さんほとんどこの家に住んでいなかったっぽいね」
「うむ。人が暮らしていた気配が無いのじゃ」
「とはいってもこの広さはありがたい。ちゃちゃっと掃除しますか」
「まずは、サニテーション」
2階建ての屋内の隅から隅へ行き渡るイメージで魔法を解き放つ。
豪邸といってもダンジョンや王都地下と比べれば余裕のある広さだ。
「よし。これで、除菌は完了と。次は、バブル・ウオッシュ」
2階建ての部屋全体がキメの細かい泡に包まれ、
ソファーやテーブルタンスの中までくまなく清掃完了。
「うわぁ。凄いのじゃ、まるで新築もびっくりさんなのじゃぁ~!」
「さらにぃ! しつこい汚れや、深くに根を張ったカビに――スクラブ!」
鍋の焦げ付きから浴槽の天井や床に深く根を張った、
カビを根こそぎ剥ぎ取り死滅させる。
「カビの菌っていうのは、見た目が綺麗になっていても思いのほか深くに潜りこむものなんだ。そのカビの根っこを放置していると成長して、胞子を撒き出すんだ」
「ソージは強いだけじゃなくて、とっても賢いのじゃな。妾も昔は叡智の大賢者などともてはやされていたものじゃが、おぬしには勝てぬ」
「パパ、すごいなの~! 部屋が一瞬でキレイキレイなの~!」
カビの胞子をハルが吸い込んだら肺炎になったりして危ない。
菌やカビやウィルスは敵だ。徹底的に殲滅だー!
「随分と綺麗にはなったけど、ところどころ修繕が必要なところはありそうだね。報酬で徐々に家具を修繕したり、新しい物を買っていこう」
「少しずつ、妾たちの家になるみたいで楽しいのじゃ~」
「楽しいなの~」
「はは。そうだな。こんな素敵な家に住まわせてくれたあの女主人さんに感謝しなきゃだな」
「ありがたいことなのじゃ。それもこれも、妾の旦那さまが立派な男じゃからじゃの。妻としてもとっても誇り高いのじゃ」
「ママもパパと同じくらいえらいなのよぉ?」
「ハルちゃん、ありがとうなのじゃ。ハルちゃんもとってもいい子で偉いのじゃ」
いつもの家族同士のノロケだ。
どうしても評価が甘くなってしまうのはご愛嬌で許して欲しい。
「それじゃ、俺は風呂作ってくるぞ~! バブル・ウオッシュでも全身の汚れは取れるけど、お風呂に肩まで浸かると気持ちが良いからな」
「それじゃあ、妾は旦那さまとハルちゃんのために、美味しい料理を頑張って作るのじゃ~!」
「え~! ハルはなにをすればいいなの?」
「ハルちゃんは、パパとママの仕事が終わるまでこの家の中を探索するのじゃ~!」
「ハルわかったなの~!」
そんな感じで各自家のなかで別れて役割分担の作業を進める。
俺の役割は風呂づくりだ。
やっぱりお風呂に肩まで浸かるというのは気持ちいい。
体力が回復するとかそういうのとは違うかもしれないが、
なんというかお湯に浸かると癒やされるのだ。
「うーむ。さすがは豪邸だ。"クリエイト・ウオーター"と"ファイア"の術式が刻まれた蛇口まであるのか。それじゃ、ちょっとだけ魔力を注いで、と」
ちょっとだけ魔力を注ぐだけで起動する便利だ魔道具だ。
魔法が使えない人でも魔力を注ぐことくらいは誰にでもできる。
王都の富裕層の中には魔法を使えない人も多いそうだから、
こういう魔道具は一言で言うとお金持ちの人に好まれる道具だ。
「魔法の使える俺でも便利だもんな。こういう魔道具とかを作れる人って凄いな。どういう原理で動いているのか分からないけどまるで、前世の蛇口のようにお湯を簡単に出せるのはとっても便利だ」
しばらくお湯を眺めているとなみなみとお湯が注がれる。
前世の団地のお風呂の5倍くらい大きな風呂だ。
こりゃあ気持ちよさそうだな。
「おーい。ソピア、ハル、お風呂ができたぞー!」
「妾も料理もできたのじゃ~!」
「ハルもおうちの探索終わったなの~!」
みんな各々の仕事を無事に完遂したようでなによりだ。
「風呂と、ごはん、ハルはどっちが良い?」
「ハルはお風呂にザブーンって入りたいなの~!」
「妾もお湯に浸かりたいのじゃ~!」
「それじゃあ。みんなで、お風呂入るかぁ~!」
「「おー!!」」
更衣室も広い。3人で着替えても全く問題のない広さだ。
娘は0歳児とはいえ身体的には10歳児程度だ。
あんまり教育的によくないかもしれないので、
俺は腰の周りに長めのタオルを巻いて風呂に入った。
このあたりの距離感が分からないので、
ソピアと相談しつつハルとは接するようにしよう。
「ザブーンなの~!」
「妾もザブーンなのじゃ~!」
「そんじゃあ、パパもザブーンだ!」
「きゃきゃっ! パパがザブーンしたらお風呂に津波ができたなの~!」
「ハル、くらえっ!」
風呂のなかで水鉄砲を作りハルに向けてぶつける。
「パパ、それどうやったなの? おしえて~?」
「それはな、両手をこうやって重ねて、こんな感じで隙間を作って。こうだっ!」
水鉄砲をソピアに向けてぶつける。
「ソージよ~! 妾に銃を向けるとは万死に値するのじゃぁ! くらえ~!」
ソピアが反撃の水鉄砲が飛んでくる。
ハルはうまく水鉄砲を作ることができないようだ。
身体的には10歳といってもこういう所をみるとまだまだ子供だ。
「お~い! ソピア、スライムになってるぞ~! ははっ」
「ふふぅ~。妾……気持ち良すぎてお湯に溶けちゃいそうなのじゃぁ……」
「きゃはっ! ママ溶けてるなの~!」
「まったくもー。リラックスしすぎだぞー。長湯しても逆に疲れるから、今日はこの辺りにして、ソピアの作った手料理を食べにいくぞ~!」
バスタオルでハルの頭をゴシゴシと拭いた後に、
ソピアの頭もゴシゴシと拭く。
やっぱりお風呂は最高だ。
各自、部屋着に着替えて食卓へ向かう。
ちなみに、洗濯は俺の仕事だ。
バブル・ウオッシュとドライで、
一瞬で終わるので仕事と呼べないレベルではあるが……。
食卓に向かうと……
「えっ。何、凄い!? ソピア料理こんな美味かったの?」
90年代のラブコメアニメやラノベに無意識に影響を受けていたせいか、
最初の手料理は物体Xや黒炭が出てくると思ったがそんな事は全くなかった。
サラダ、肉料理、スープと完璧過ぎる料理の数々……。
何よりも凄いのはソピアは買い物上手で、王都の市場で買った、
安価な食材でこれだけ素晴らしい料理が作れることだ。
さすがは、叡智の大賢者である。
でも、見た目が素晴らしいだけで実は、砂糖と塩を間違ってたり……。
「うめぇ! いやこれほんと、すんげーうまいよ!! ソピア、超すごい!! これ、もう料理屋作れるレベルだよ? ハルも食べてみな」
塩と砂糖を間違えるとか見た目は立派でも味は残念とか、
そんなオチもなく凄く美味かった。最高や。
美味しい料理が食べれるというのは俺にとっては幸せなことだ。
「ママ! すごい! とっても美味しいなの~!」
食べざかりなのかパクパクと勢いよく食べている。
ドンドン食べて大きくなれよ~。
「凄いなぁ。ソピアの隠れた才能に驚かされたよ。こんな旨い料理を食べたのは初めてかもしれない。美人で、料理も旨くて最高だ」
「ソージも優しくてイケメンでナイスガイなのじゃぁ~!」
「ハルちゃんは~?」
「もちろん、ハルが今日の一番だよ」
「ハルちゃんはいつもいい子で偉いのじゃ」
最高に美味しいソピアの料理に舌鼓を打った後に、
ハルに本を読んで眠ったあとに、
俺とソピアは寝室に戻る。
「それじゃ……ハルもぐっすり寝たし、あれだな。あれをしよう」
ベッドも凄くでかい。ニ◯リとかでみたことがある、
クイーンサイズベッドとかと同じくらいの大きさのベッドだ。
「そっ……そうじゃの。新居のせいか、何故か少し照れるのじゃ。なんとなく、今日は恥ずかしい気分だから今日はソージも布団の中に一緒に入るのじゃ」
ソピアもやはり女の子だなぁと感じる瞬間であった。
「おお……今日はソピアはスライム気分なのか。うむ。いいね。やわらか、良い」
「そうなのじゃ。今日の妾は、スライムな気分なのじゃ~。リラックスなのじゃ~」
そのあとは夫婦で"もっふる"するのであった。
やはり新居だけあって燃え上がるものがあった。
今日の俺はキスの闘いではソピアに勝利した。
隠れて舌先の筋肉を鍛えていたのが功を奏した。
"もっふる"の最中にトイレ探しで寝ぼけて、
ハルが部屋に入ってくるトラブルもあったので、
ソピアと話して寝室部屋に鍵をつけようという話になった。
いずれにせよ布団のなかで"もっふる"をしたのは正解だった。
子供が見たらトラウマになる可能性があるから、危なかった。
俺たち家族の王都生活1日目は、最高の1日となるのであった。
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