第13話『俺と娘でダンジョン探索』
俺はソピアに地下水道で出会った子供たちの事と、
隠し扉の先に見つけた螺旋階段の話をしていた。
あぐらをかいている俺の膝の上には、
俺の娘が乗っかっていた。
銀色の髪を人差し指でくるくると絡めて遊んでいるようだ。
う~ん。かわいいなぁ。さすが、俺の娘だ。
「かくかくしかじか……ということがあったんだ」
「むう……。力になれずに申し訳ないのじゃが、妾はその地下へと続く螺旋階段については知らぬ。恐らく、妾がこの部屋に封印された後に造られた空間なのじゃな」
「なるほど、千年前には無かった空間という事か。興味深いな」
「そうじゃな。少なくとも妾の知る限りにおいては存在していなかったはずなのじゃ。もしかしたら、螺旋階段の先はダンジョンかもしれないのじゃな」
「それにしても王都の地下にダンジョン。何のために造られたんだろうねぇ」
「目的はまったく想像つかないのじゃ。ただ……」
「ソピアは何か思い当たることでもあるのか?」
「うむ。妾と関係がある場所であることは、間違いなさそうじゃの」
俺は服のポケットにしまっておいた邪神のタリスマンを取り出す。
隠し扉を開ける鍵となっていたものだ。
「そうだな。それは間違い無さそうだ。螺旋階段の扉の鍵もこの
「ふむ。ソージは興味しんしんのようじゃの」
「そうだな。やっぱりダンジョンとか聞くとちょっとワクワクするよな」
「ふふっ……やはりお主も男じゃのう。なら試しに潜ってみたらどうじゃ?」
「そうだな。清掃の仕事が終わったら潜ってみるか」
「うむ。お主の仕事はとても重要なのじゃ。ダンジョンも気になるとは思うのじゃが、まずは仕事を終えたあとに挑戦することをおすすめするのじゃ」
「ソピアの言う通りだな。まずはきちんと下水道の掃除をこなしていないと、昨日のように地下下水道に遊びに来た子供たちが被害にあうかもしれないからな」
「そうじゃの。お主のしている仕事は、王都の民の命を救うためにとても重要なことなのじゃ。誇りを持って仕事を続けて欲しいのじゃ」
「ありがとう。そういってもらえると働きがいがあるよ」
「そうじゃ。今日はもう仕事も終わっていることじゃ。娘と一緒にその螺旋階段の下の空間を確認に行ってみたらどうじゃ? 妾たちの娘は強いのじゃ」
「娘って……。産まれたばかりなのに、もう戦えるのか?」
俺のあぐらの上に座っている娘の銀色の髪をを撫でながら、
ソピアに質問を投げかける。
「単純な戦闘能力で言えばソージと同じくらいじゃと強いと思うのじゃ。少なくともお主の足を引っ張るようなことはなさそうなのじゃな」
娘の名前は、ハル。
いま俺のあぐらの上に座ってソピアと俺の会話を聞いている女の子だ。
ハルという名前は、俺とソピアの好きな季節からとった名前だ。
草木が芽吹く季節でもあり名前としても縁起が良さそうなのと、
かわいらしい語感だということで二人で決めた名前だ。
姿は一言で言うと8歳から10歳児程度の一般的な女児だ。
特徴的なのは腰までの長さがある銀色の長髪と、
ルビーのように赤色の瞳の色くらい。
あとは天真爛漫で好奇心旺盛な普通の子供といった感じだ。
眉毛の形は少し俺に似ている気もする。
俺の眉毛の形は結構整っているので遺伝してくれてよかった。
あとは、耳の形も俺に似ている気がする。
うむ。親馬鹿だな。
俺たちの娘であるハルは強い。
俺がソピアに每日100レベルずつ捧げていたのが主な原因のようだ。
ソピアの母体を通して相当な経験値をハルにも供給していたようだ。
いわゆる胎教というやつであろうか。
ソピアいわくハルは、基本的な魔法はもちろん、
戦闘のスキルも身に付けているらしい。
魔法の弓を作りだして魔法の矢を放つ事ができるらしい。
もしかしたらジャイアント・ローチくらいなら倒せるかもしれない。
「ぱぱ~! ハルと遊んでくれるなの?」
「ハル、遊びじゃないぞ~。外は危険だから気をつけなきゃいけないぞ~!」
「知っているなの。 外のことはママに教えてもらったなの!」
産まれてわずか0日で会話ができるのだから凄い。
難しい会話はまだできないが、簡単な意思疎通を行うのには何も不自由しない。
「ソピア、まだハルにダンジョンに挑戦するのは危険なのでは? そもそも、この子はこの部屋の外に出ることは可能なのか?」
「その子の強さは妾のお墨付きなのじゃ。それに、この封印された部屋から出られることも確認済みなのじゃ。何も問題ないのじゃな」
「とはいってもなぁ。うーん」
俺が見ている分には大丈夫だと思うけど、
心配ではあるよなぁ。
「妾が外に出られない分、お主にはハルに外の世界を見せてやって欲しいのじゃ」
「まあ。ソピアがそこまで言うなら。危なそうならすぐに引き返すからな」
◇ ◇ ◇
ソピアからの提案もあり、螺旋階段の下にある、
ダンジョンの1階層を娘と探索することになった。
「お~い、ハル。ここは足元が悪いから滑らせないように気をつけるんだよ」
「分かったなの~! 気をつけるなの」
「あの壁をカサカサと動いているジャイアント・ローチっていうモンスター。とっても危険なモンスターなんだ。パパが戦い方を見せてあげよう」
俺は清掃魔法のバブル・ウオッシュで、
ジャイアント・ローチを全身の油分を奪った上で窒息死させた。
「すごーい! パパ強いなの!」
「はは。このあたりのモンスターなら、苦戦せずに倒せるぞ。そういえば、ハルは魔法の弓矢が使えるってママから聞いたけど、試しにパパに見せてみなさい」
「うん、いーよ。えいっ!」
なにもない空間に ポンッ と弓と矢が出現。
マジカルでファンシーな弓矢だ。
日曜日の朝にお目にかかりそうな感じの可愛らしい弓矢である。
ふふふ……ハルもまだまだ子供だな。
やっぱり女の子はこういうのが好きなのだな。
そりゃそうだよな。まだ0歳だからな。
「しゅぅーとっ!」
ハルがマジカルな感じの弓の弦を弾くと、
光の矢がとんでもない速さで射出されていく。
放たれた光の矢が天井の巨大ムカデこと、
センチピートの体に突き刺さる。
その直後に内部で爆発、
ムカデの体をバラバラにして瞬殺した。
ぅゎょぅι゛ょっょぃ
ソピアの言っていた言葉は誇張では無さそうだ。
このままだと父親としての威厳が保てないのが辛いところだ。
「ハルちゃんよく出来ました~!」
俺は娘の頭を撫でる。
子供はできるだけ褒めて育てようと思っている。
娘は強い。道中にあらわれる地下下水道の主、
アルビノ・アリゲーターも弓矢で爆殺していた。
この子、俺よりも強くね?
そんなことを考えながら螺旋階段を二人で降りるのであった。
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