第11話『新しい右腕で敵を倒してみよう』
俺はギルドに来ていた。
「ギルド嬢さん遅くなってすみません。今からでも依頼を受注できますか?」
「こんにちは。いつも朝一にいらっしゃるのに、今日は来ないので心配しましたよ」
「すみません。寝坊しちゃいました」
「寝坊ですか。それなら仕方ないですね。それより、右腕の厳重に巻かれた包帯はどうしたのですか? 重症に見えますがモンスターに噛まれたりしたのですか?」
「ああ……この包帯は、ファッションです」
まあ……本当の事は言えないよな。
中がスライムになっているとか本当のことを言ったら、
王都を追放されてもおかしくない。
「包帯ファッション……ですか。随分とエキセントリックなファッションですね」
「そうですか? 俺の村では流行っていたのですが。王都だと目立ちますかね」
村出身の設定を利用してすっとぼけてみる。
「正直、目立ちますね。暗黒騎士に憧れがちな成長期の男の子には受けるかもしれませんが、ソージさんの年齢的にはちょっと……正直、アレだと思います」
この受付嬢の言いたい事は分かる。更に女装疑惑の後だ。
また変なこじらせ方をしたと誤解しているのだろう。
うまく誤魔化すしかない。
「初心を忘れるなかれ。受付嬢さんはこの言葉を知っていますか?」
「はい?」
受付嬢さんの目付きが本格的に頭のおかしい人に対する視線になっている。
この人めちゃめちゃ顔に出やすいタイプの人だな。
「冒険者に憧れていたあの幼い頃の心を忘れたくない。その決意がこの包帯です」
「はあ……まあ……正直良くわかりませんが、良いのではないでしょうか。私はソージさんが仕事をキチンとこなしてくれればとやかく言うつもりはありません」
この世界でも子供達には暗黒騎士やアサシンが人気なのか。
俺にはその気持はよく分かるぞ。
小学生高学年までは親にジャスコに連れていってもらった時は、
銀色のプラスチックで出来たドクロや十字架の飾りが付いた、
謎のパーカーとかを選んでいた俺にはよく分かる。
もちろん色はブラックだ。
包帯とかドクロとか十字架とか闇とかワクワクするんだよな。
ジャスコにはなんでああいう感じの謎の服が売っていたのだろうか。
バイヤーの趣味なのか、それとも中二病的なファッションの
需要が密かにあるのか。俺の中の七不思議の一つだ。
そういえば、サービスエリアや道の駅なんかにもやたら
中二病的キーホルダーが売っているのは何故だろうか。
闇の軍勢が密かに暗躍して勢力を拡大しようとしていたのかもしれない。
っと、そんなことを考えている場合ではない。
まずは誤解を解かないと。
「受付嬢さんもギルドの人間として言いたい事はあると思います。ですが、俺は地下に潜っていて人の目にも触れないので見逃してください」
「ふぅ……。中高年の方のコスプレを取り締まる法律はないので……ソージさんが気にならないならお好きにしてください」
「助かります!」
「それでは、いつもどおり地下の清掃をお願いします。今日はもう時間も遅いので、報酬は明日朝いらっしゃった時にお渡しします。では、ご安全に」
「はい。それではいってきます」
◇ ◇ ◇
あのギルド嬢の中で俺の評価はどうなっているのだろう。
人の目を気にしてもしょうがないが、多少は気になる。
女装趣味のコスプレ清掃おじさんみたいな扱いなのだろうか。
確かに属性盛り過ぎでキツイものがあるかもしれない。
属性マシマシおじさんか。いつかは誤解を解きたいものだ。
そんなことより、だ。
早く娘に会いたい。さすがにもう起きていると思うのだ。
まだ寝顔だけしか見られてない。
娘を抱っこしたり頭を撫でてあげたい。
そもそも体は8歳くらいまで成長していたけど、
言葉とか喋れるのか、いろいろと気になる。
俺は娘の顔が見たいのじゃ~!!
俺はそんなことを考えながら右腕を刃物に変形させ、
アルビノ・アリゲーターの頭頂部にグサリと刃物を突き立てる。
即死である。
「新技 "エリミネーター・サウザンド" かなり使える。物理攻撃が弱点の敵なら一撃だ。切れ味が凄いのとリーチが長いから近接戦素人の俺でも使いやすい」
エリミネーター・サウザンドを何度か実験してみた。
どうやらリーチは無限ではないようだ。
体の一部を伸ばしているだけだから、そりゃそうか。
武器として扱えるのは俺のスライム化させた部分だけだ。
伸ばすといっても限界がある。
長距離攻撃をする時にはどうしても細くなってしまうのが弱点か。
剣形態の時のような太さは維持できない。
残念ながらゴム○ムのピストルのようにはいかない。
だが、中距離くらいなら余裕で戦える感じだ。
レイピアのような刺突攻撃で倒せる相手であれば、
急所を潰して瞬殺できる。これはなかなかに楽しい。
近接攻撃の形態はエリミネーター・サウザンド・
中距離攻撃形態はエリミネーター・サウザンド・
「くらえ! エリミネーター・サウザンド・
天井の巨大ムカデこと、キラー・センチピードの頭部を槍が串刺しにする。
巨大ムカデは天井から落ち、下水に流されて行った。
即死である。この新しい腕使える。
「槍として使う時は先端部分を硬化させるだけで良いのか。右腕全体を硬化させる剣モードの時より負担が少ない。ムチみたいにも使えるし、こりゃいいな」
ただ、あのダーティー・スライムとかには相性は悪そうだ。
今まで清掃魔法で瞬殺していたから気にしてなかったけど、
あいつには物理攻撃が一切効かないそうだ。
あいつはいつもどおりに清掃魔法で死滅させよう。
っと……噂をすれば影がさす。
10メートルほど先に無数の眼球を持つ、
ダーティー・スライムが待ち受けていた。
俺は左手の
「サニテーション」
粘液状の体が光に包まれて瞬殺である。
フハハハハハ……。
清掃魔法は最強だぜ!
雑菌やウィルスの集合体である
ダーティー・スライムなど、
俺にとっては恐れるに足らず!
……下水で溺れている子供が。
なんでこんなところに?
いやいやそんなことより、
早く助けないと。
俺は右腕をピッ○ロ大魔王のように伸ばし、
下水の中から子どもを救い出すのであった。
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