第5話『ソピアの部屋の千年ぶりの大掃除』

 俺はいつもの王都地下下水道の掃除を終えソピアの部屋に来ていた。



「ただいまー。仕事が終わったから、帰ってきた。今日は昨日話していた白いワンピースを買ってきたよ。あと花束ももってきたよ」



「おかえりなのじゃー。今日もお仕事お疲れ様じゃったのじゃ!」



 俺は昨日買ってきた服をソピアにわたす。


 刺繍はいまいちだが、"バブル・ウオッシュ"でほぼ

 新品同様に綺麗な真っ白の服になっている。

 うむ、なかなかやるではないか、俺。


 ワンピースを着てもらいたい理由は、二つだ。


 一つは、ソピアにかわいい服を着てもらいたいから。

 もう一つは、全裸の女性を相手に堂々と話す勇気が俺にはないからだ。


 いや、まあぶっちゃけるとスライム状態のときから、

 ソピアに対して激しいエロスは感じていたの……のだが、

 なんというか自分の心のなかで一応の言い訳は出来ていたのだ。



 ケンタウルスは下半身丸出しだけどオーケーだし、

 リザードマンとか上着ないし半裸だよね?

 スライムで全裸って当然、むしろ服着るのは変なのでは?


 みたいな微妙な精神的な言い訳ができていたのだ。



 だが、さすがに人型のソピアを見ながらだと服を着てもらわないと、

 "考える人モード" の前かがみでも"ポケット○ンスター"を

 隠しきれないのであった。


 おお、ソピア、俺が渡した白いワンピースに袖を通し早速着ている。

 なんかドキドキするから後ろを向いちゃうんだぜ。


 一瞬チラッと覗いたのは事故なのでノーカウントでお願いします。



「ありがとうなのじゃ。このワンピース気に入ったぞ。この大きめなチューリップみたいな刺繍がかわいいのじゃな」



 白いワンピースを着ている笑顔の女の子。

 うむ……最高だ。 


 俺は、ソピアを見つめながら重要な事に気づいた。

 ……下着を買っていなかったのである。


 なんというか、今のソピアの着衣姿は、

 むしろ全裸よりエロい……。


 例えて言うならばアレだ。

 雨の日に全身びしょ濡れで彼氏の家に転がり込んだ女の子が、

 服を乾かしている間に裸の上からワイシャツを着るような。

 そんなエロさがある。


 つまり何かというと、白いワンピースの下から透けてみえる

 肌色がよりエロ良い……っという感じなのだ。



 煩悩退散 煩悩退散 ノーブラ 透け乳 (目のやり場に) 困った時は

 ドーマンセーマン ドーマンセーマン 鎮めてもらおう陰陽師。



 ……ふう。落ち着いた。つねに2000年代は俺を癒やしてくれる。

 なんだろうな2000年代の謎の実家のような安心感。

 サンキューゼロ年代。



「あー……。それと、下着と換えの服を買い忘れていてすまなかったな。今日にでも古着屋で買ってくる」



「そこまでしてもらって悪いのじゃ」



「いや、俺が好きでやっていることだからその点は気にしないで良いよ。俺の働いている仕事は結構報酬が多くもらえるからお金には余裕があるんだ」



 まあ、一応は嘘ではない。

 平均的なFランク冒険者よりも稼いでいるのは事実みたいだ。

 それに俺は無駄遣いしていなかったから貯金もまだある。



「そうだ。今日はちょっとこの部屋を掃除させてもらいたいのだけど良いかな?」



「もちろんなのじゃ。とても助かるのじゃ。何しろこの部屋は千年の間掃除されずに手つかずのまんまじゃったからのう。それに、お主の掃除魔法とやらに妾はとても興味があるのじゃ」



「俺の魔法があれば、この部屋をどこよりもピカピカで清潔で最高に住みやすい部屋にしてあげることができると思う。期待して待っていてくれ!」



 俺の魔法なら頑固な油汚れも一発である。



「それにしてもさすが千年の年季を感じさせるというか、随分と掃除のしがいのある部屋だな。まずはっと、バブル・ウオッシュ!」



 天井や壁や床がきめ細やかな泡で洗浄される。

 徹底的に泡のパワーで、千年の汚れを洗い流される。

 通販番組の汚れ取り並にとれてちょっと楽しい。



「うわあ。すごいのじゃぁ……。千年の間に、汚れていた壁や天井がまるで新築のように綺麗になったのじゃあ!」



「ふふふ……。まだまだ、バブル・ウオッシュで落とせないような奥深ぁくにこべり着いた汚れも見逃さずに取る魔法があるんだ」



「はよう妾に見せるのじゃ~!」



「いくぞ! ポリッシュ!」



 天井、壁、床をまるで研磨剤で磨くかのように汚れを落とす。壁に奥深くに根を生やしたカビの根も、残さず根絶やしにする。サイコーにスカッとするぜ。



「すごい……すごいのじゃ。まるで職人が磨き上げたかのように完璧に磨き上げられているのじゃ……!」



「しかも材質の強度を自動的に検知して研磨するから、研磨し過ぎて傷をつけるということもない。これが"ポリッシュ"だ」



「掃除魔法……恐るべしなのじゃ」



「それじゃあ、最後の仕上げだ。ワックス!」



 壁の表面にツヤ出しするための魔法のコーティング剤が塗布される。

 しかも環境にも人体にも無害である。

 変な科学的な臭いも残らない魔法のコーティング剤である。



「うわあ。ピカピカなのじゃぁ! 完璧に綺麗になったのだ」



「へへっ! 凄いでしょ。それじゃ仕上げにバキューム」



 ブラックホールみたいのが出現してゴミやほこりを吸い込む。

 恐ろしげな魔法では有るが、謎の暗黒空間に吸い込むのは

 ゴミだけなので、危険はない。

 

 生きているモンスターは吸えないが、

 モンスターの死骸であれば吸い込めるので便利だ。

 バキュームに吸われたゴミがどこに消えているのかは謎だ。

 だけど、魔法なんてほとんど謎だから気にしない事にしている。



「とどめに、セントレス!」



 仕事終わりに自分に使っている、無臭魔法。

 ファ○リーズの1000倍くらい(当社比)の効果がある。


 ソピアの部屋を完全な無臭空間に一変させる。



「このような素晴らしい魔法があるのじゃな。部屋が綺麗になると、気持ちも軽くなるのじゃぁ~」



「気に入ってもらえてなによりだ! 今後はこまめに掃除魔法で部屋を綺麗にするから楽しみにしていて欲しい!!」



「ソージは本当に頼りになるのじゃ」



「どういいたしまして!」



 あとは、いつものように交換日記の内容をお互い読みあった後に、

 その日記を読みながら、

 

 お互いに思ったことをあーでもないこーでもないと、

 特になにか結論のない雑談をするのであった。


 なお、一番盛り上がったのはボッタクリ服屋の話だった。

 ソピアも高すぎると怒ってくれた。

 そういうくだらない会話が俺にとってはとても楽しかった。


 そして、帰り際にはソピアにレベル・ドレインによって

 今日溜まった分の50レベルを吸収してもらった。

 

 なんというか……溜まったものを吸われる感覚というのは、

 表現が難しいのだが……妙に……ハマりそうな感覚がある。

 俺の中の新たな(性的)可能性が芽生えようとしているのかもしれない。


 それに、気のせいかもしれないが、ソピアは俺のレベルを

 吸収するごとに活力がみなぎっている感じがする。


 なんというか、もち肌感がアップしている感じがある。 

 たまにリラックスしているとスライム状になるのもかわいい。



「そんじゃ。そろっといってきますわ。明日はソピアのために何枚か下着と、着替え用のワンピースとかを買ってくるから楽しみに待っててね!」



「いってらっしゃいのじゃあ~! また明日も遊びにきて欲しいのじゃ」

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